表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
八章 サブリーダーの太陽

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/369

8-3.?????

【――――本当に?】


 黒い霧のようなものが、人の形を取る。


【びじねすはね、パートナーかも。】


 そうだ、俺はそうあろうとしてきたし、そうあってきた。


【じゃああれは?】


 黒い霧が指差す先、大きな鳥が溢れんばかりの羽を広げて突撃してくる。

 彼は遠く、味方の防御魔法も一瞬間に合わない。

 鳥はそのまま俺の体を貫き、視線が倒れた。

 暗くなる視界の隅で彼が何かを言い、そして画面がタウンに戻る。

 ただ手だけが映る。

 一瞬にも永遠にも思える停止の直後、彼は笑顔で戻ってきた。

『おまたせー!バッチリ倒せたぜ!』

 彼の周囲には猫の獣人の女性と、弓を携えた痩躯の男、それから巨大なハンマーを背負った大男がいる。皆一様に笑顔でこちらに手を振った。


 ――――あれはもう倒した。


【そう?じゃあ、あれは?】


 見渡す限りの魚の大群がうねり動き、大波となってあたりを蹂躙する。

 防護魔法の効果時間がジリジリと削れていく。

 チャージしていたスキルが貯まる。打つなら、こうするしかない。

 使ったスキルで彼は助かった。自分は波に飲まれてタウンに戻った。

 数刻の後、彼はいい笑顔で戻ってきた。


 ――――あれはあれが最適解だった。二人で死ぬわけにはいかなかった。


【へえ、じゃああれは?】


【ほら、あのときも】


【ああ、あれもだね】


 どの映像も自分は死に…………パーティは生還している。

 仕方のないものも多い。その後雪辱戦を果たしたものもいる。


【ふうん?じゃああれは?】


 黒い霧の指差す先、巨大なメイスを持った甲冑の巨人が見える。

 動き回っているのかぐるりと廻る視界の先で、巨人がその大きなメイスを振り回し、直撃した。

 彼が何かを言い、だけどその声を聞く前にタウンに飛ばされた。

 タウンでは先に落ちた猫の獣人が土下座もかくやの様相で待ち構えていて、弓の男はそんな彼女の頭を撫でている。

 外部ブラウザを呼び出して開いた配信では、彼とあいつが完璧な共闘を見せ、巨大な敵を撃破していた。


 ――――ギミックボスだ。初見クリアは難しかった。


【でもぉ、あいつとは二人でクリアできてるんでしょぉ?】


 場面が変わる。

 ギルドハウスで、彼が深く深く頭を下げた。

『これは俺のわがままだ。だけど、決定事項でもある。納得できない人はギルドを抜けてくれ。必要であればですぺなさんか、オルタナティブ、セブンスさんあたりなら転属について俺から願う。希望者は内々でいいから教えてほしい』


【なあんにも、聞いてなかったよねぇ】


『リーダー、もう一度だけ、確認させてくれ。本気なんだな?』

『本気だ。俺は俺のために、()()()()()()()()()()()


【ギルドの運営的にも、動画の投稿としてもとおんでもなく大きな決定を、教えてもらえなかったんだぁ?】


 ――――彼が、決めたことだ。


【なんでだろおね?やっぱり】


 ――――言うな。



【やっぱり、()が弱いからかなぁ?】



 黒い霧がくっきりと(ロイド)の姿になってこちらに向き合う。

 それはニタリと嫌な笑みを浮かべて。


【視聴者的にも、一番人気はあいつなんでしょう?】


 ――――言うな。



【ギルド員、結局だあれも抜けなかったねえ】


 ――――言うな。



【みんな、最強のアタッカーを招くの、納得したんだねえ】


 ――――言うな。



【だって、彼の隣の()は、いつも死んでるもんねえ】


 ――――言うな。



【弱虫の()。彼がかあいそう】




「うるさい黙れ!」



 ベッドから跳ね起きる。嫌な汗がじっとりと背中を濡らしていた。

 耳元でバクバクと心臓が鳴る。

 胸をかきむしるようにシャツを握りつぶして、浅い呼吸を繰り返す。


 枕元の時計は午前4時。起きるにはずいぶん早い時間に目を覚ましてしまった。

 ここ数日夢見が悪く、いつも半端な時間に目を覚ましてしまう。



 スマホの画面を開くと、つけっぱなしだったメーラーが映り込む。



『第4回公式PvP大会 シード枠についてのお知らせ』



 ――――本当に勝ちたいのなら。


「彼の、パートナーは」


 呼吸の仕方が分からない。せり上がる吐き気をなんとか飲み下してベッドのシーツをかきむしる。



 夜明け前の薄暗い空は雲に覆われて、星すら見ることができなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ