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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
三十章 二度目のバレンタイン

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閑話 服を買いに

セリス視点

 

「こちらが新作のブラウスでして」

「お嬢様ですとこちらのお色味も」

「あら素敵」

「最近の流行なんですがこういった形がシルエットが綺麗に出て」

「こちらのカーディガンですと着回しが」

「紬にはこっちの色のほうが似合うかしら」

「どちらもお似合いになりますから、迷ってしまいますね」

「お色違い、サイズがあるか見てまいりますね」


 ――――足が疲れてきたな。


 完全に他人事のように聞き流してしまう。

 いかんせん右と左のブラウスの違いが私には全くわからないのだけど、母と店員さんはそれはそれは楽しそうに選んでいて口を挟めそうにない。


 おかしい、どうしてこうなったんだろう。



 私はただ「大会にどんな服で行ったらいいと思う?」って聞いただけだったのに……。



 今までちゃんとした場はすべて制服でよかったので、私服はいわゆる部屋着と、ジーンズかモノトーンのパンツに、やはりモノトーンのシャツやタートルネックにカーディガンしか持っていない。これで大抵の場所は無難に切り抜けられるし、実際そのように生きてきた。


 大会にもそういう格好で行く気でいたし、どんな服というのは単に天気や寒さについて聞きたかっただけなのに、何故かきらきらの瞳のママに連れられて気付いたらデパートの婦人服売り場に居た。


 すでに結構な数の紙袋が詰まれていて、そもそもこれをどうやって持って帰るつもりなのかも分からないけれど、ママはまだまだ買うつもりらしい。どうして。


「…………ママ」

「うん、これも似合うと思うのよ」

「それは着ない」

「なんで!?」

「それは、着ないから、戻して」


 その膝の見えるスカートは戻して。


「ぜええええったい似合うから!試着だけでもしてみましょ!」

「してみない」


 着ないったら着ないったら着ない。そもそも私は私服でスカート持ってない。


「んー、分かった、つまりスカートじゃなければいいのね?」

「そんな話はしてない」

「キュロットならいい?ほらこれとか、シルエットは近いけどキュロットなのよ」

「戻して」

「絶対似合うから!ぜええええったい似合うから!」

「も ど し て」



 一悶着……二悶着…………八悶着ほどして、ようやく服の買い物は終わった。

 まあ……うん、大学に入ったら私服だから、必要といえば必要だったので丁度よかったんだけども。それにしたってミニスカートはないでしょ……。



「さーて、最後にもう一箇所行くわよ」


 大量の服をどうやって持って帰るつもりなのかと思っていたら、最後のお店でそのまま配送を手配して家に送ってもらっていた。こういうことできるんだ、知らなかった。


 そんなこんなでデパートは出たのだけれど、最後にと連れてこられたのは大量のスーツが吊るされた店だった。


「大学の入学式にも使うし、直しも考えるとそろそろ買わなきゃだったからね」

「そういえばそうだった、ありがと」

「いえいえ、今度これとは別にブラックフォーマルも必要かしらねぇ」

「そういうのいる?」

「いざというときはね、いつか必ず来るから。今まではそういうところも全部制服で良かったけど、これからは礼服がいるのよ?」

「……そっかぁ」


 ブラックフォーマルもかぁ……。


「とりあえず今日はスーツね。これは必要な日が決まってるし、最悪中を黒シャツにすれば大学卒業くらいまでは許されるから」

「へー」

「けど、紬はもう少し早めにちゃんとしたのがいるかもしれないわねぇ」

「そうかな?」


 そんな話をしつつジャケットに、パンツやスカートに、パンプスにと、これまたフィッティングに1時間くらいかかって、全て終わる頃にはヘトヘトに疲れ切って、帰りに乗ったタクシーの中で急速に眠たくなって寝入ってしまった。



 あたたかな手が優しく頭に触れて、少しだけ意識が浮上する。



「――――もう少しだけ、ママのかわいい紬でいてね」



 小さな声が聞こえたような気がしたのだけれど、意味は捉えられないまま、また泥のようなまどろみに意識が吸い込まれていった。

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― 新着の感想 ―
ラフな職場とはいえ対外的な場ではそれなりの服装で行かないといけないから、服装に気をつかえる身内がいないと辛いことになるよね それはそうとして、伸び代がある素材が目の前にあって好きにできるならはっちゃ…
どうやって持って帰るのか、てっきり荷物持ち(パパ)を召喚するのかなと思ってた。
一番の理解者がのっりのりでワロタ スカポンタンは全力で押し込みに来るのにどれだけ耐えられるのか_(:3 」∠)_w
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