閑話 ホットミルクとチョコレート
深夜に帰宅し部屋に一人。
いつものようにコーヒーをいれようとして、なんとなく、コーヒーの香りでチョコレートの香りが分からなくなるのが惜しくて、一旦牛乳をマグカップに入れてレンジに突っ込んだ。
店売りの方は今日じゃなくてもいいだろうと俺用の冷蔵庫に入れて。
そんなわけで目の前の机には可愛いリボンのついたラッピングボックス、それからホットミルクが並んでいる。
リボンを取り外して、レースリボンのついたゴムバンドをくるくると弄ぶ。
こういう手作りのプレゼントは、そういえば初めて受け取った。専門学校時代に渡してくれた人はいたけれど、手作りは受け取っていないとすべて断っていた。
1年の時に既製品をくれた人には適当に外商さんに見繕ってもらったお返しを贈ったら、翌年からクラスの女子はほとんど全員なんかくれたんだよなぁ。あれはあれでちょっと大変だった。
ただまあ、お返し目当ての義理だと分かっているチョコレートは、気持ち的には楽だった。
そっと箱を開く。
九個きれいに並んだ生チョコを、入っていた宝石のようなピンで一つ取り出した。
「うま」
柔らかい食感の甘いチョコレートの奥に、コーヒーの様なほろ苦い味がする。
ゆっくり一つ食べてホットミルクを一口。
あ、なんかカフェオレっぽい風味になった。やっぱコーヒー入ってるんだな。
甘い物苦手って話はちょいちょい色んな場所でしているので、どこかで聞いてくれたのかもしれない。
俺のために作ってくれたのだろう。知らないくすぐったさが胸の内側に広がる。
もう一つチョコを口にする。
きしりとデスクチェアの背もたれに体をあずけて。
お返しは何がいいんだろう。
あげたいものはいくらでも思いつくけれど、現実的に贈れるものとなるとまた話が変わってくる。
「多少重くてもいいって、言質は取ったけども」
よく分かっていなさそうだった彼女を思い出して苦笑が漏れる。
物理的に持ち帰れるかを心配していて、そういう発想になるんだなとむしろ新鮮だった。
「準備時間がな……フルオーダー系は多分間に合わないか」
4月から大学生になるくらいの子がもらって喜ぶものというと、なんだろうか。
義兄に聞いてみようかとも思うけれど、姉は高価なものをもらい慣れていたのであまり役に立たないかもしれない。
そもそも贈るべきなのは普通の子が喜ぶものではなくて、彼女が喜ぶものなんだよな。
ふうと吐き出した息からチョコレートとコーヒーの香りがほのかにのぼる。
温かいミルクと、世界に一つの特別なチョコレートと、ぼんやりと雲に溶けていくような時間が、温かく過ぎていった。
なんで書き溜めすぐなくなってしまうん(書き溜めここまでです)




