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「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
廿五章 サザンクロスのいないサザンクロス

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25-10.ウィーククエスト

リーダー視点

 

「じゃあ準備できたら行くか」


 翌日。普段使わない装備を山程取り出してエンチャントを引き剥がし、装備し直す。

 ロイドに至ってはキャラ自体が珍しくセージだ。


「とりあえず何周か試してみてからだな」

「そうな。多分行ける気がするから行ってみよ」


 今回の目標は、腐食龍の前衛後衛ペアでのクリアだ。

 ゲーム的に今後侵食耐性は必須になるんだろうから、後衛入りクリア方法があると思うんだよな。

 まあまだ戦ったことすらないから、とりあえず何回か回って色々試してみよう。


 ぴろん♪


「あっ」

「どうした?」

「あ、あー……いや」


 いや、うん、確かにいるともいらないとも言わなかったから……いや、え、い、今かぁ……。


「……ちょっとメッセが来ただけ。なんでもないよ」


 いや、良くない。ここで抜けるのは良くない。久々にまともに遊べるんだから。


「――――ちょっと、ルームの方に装備を取りに行ってきてもいいか?」


 ロイドがふと言った。


「え!?あ、えっと、うん。時間かかる?」

「少しかかる。多分エンチャントしてあるので、剥がしたりするから…一時間くらいで再集合でもいいだろうか」

「わかった。じゃあ、一時間後で。あの、俺ちょっと談話室行くわ」

「そうか」


 ロイドはそう言って、あっさりパーティを解散した。

 何を取りに行くのかは知らないけど助かった!そそくさと談話室に入ると、団子になっている場所が見えた。

 逸る気持ちを抑えて、一回深呼吸。よし。


「おつかれ~」

「あ、リーダーおつー」

「リーダーさん…」

「ロイドと出かけたんじゃなかったん?」

「ロイドが装備の準備ができてないってんで一旦解散した。向こうの準備待ち~。……なんか久々だね」


 本当に、久しぶりだ。彼女は黄色の瞳を一瞬揺らして、それからいつものふわりとした笑顔を向けた。


「はい……おひさしぶりです」

「うん、ほんとに。今テスト期間だっけ?」

「はい。来週最終試験なので、勉強期間中です」

「テスト勉強か~。やった記憶ねー」

「そこはやれよ」

「テスト期間ってあれでしょ、いつもより授業が短いからいっぱいゲームできる期間のことでしょ」

「授業中にゲームできないからゲーム時間は減る期間だったなぁ」

「おい」


 けらけらと笑いが起きる。

 テスト勉強は、真面目にやっていた組とやってない組で真っ二つだな。


「実は私もテスト勉強するのは初めてです」

「え?」


 セリスの言葉に思わず声が出た。


「あれ、でも成績はいいんだよね?」

「授業内容がきちんと理解できているなら、直前にやることはないと思うんですが……模試と違って授業教材から全部出ますし」


 その言葉に複数人がつっぷした。


「コレが本物の天才……」

「セリスちゃん、正論は誰も救わないんだ……」

「俺なんて未だに高校の単位足りない夢見るのに……」

「それはトラウマすぎるだろ」

「あ、なんか、えっと、す、すみません」


 いやまあ、正論ではあるんだけどね。一般的に不可能なだけでね。


「セリスは今日はどうするの?」

「あ、えっと……ウィーククエストが終わってないので、終わらせてしまおうかと思いまして」

「なるほど、一緒に行ってもいい?俺も今週のやつまだ終わってないや」

「三〇分そこそこで切り上げますが、それでもよければ」

「全然いいよ。こっちもロイドの準備待ちだから多分そんくらいで切り上げるし」

「あ、じゃあ、是非」

「うん、みんなは?」


 そう言って周りを見れば、集まっていたギルメン達はそろって首を振った。


「さすがにもうウィーククエストは終わってるわ」

「いてらいてら」

「俺は今日は働かないと決めている」


 あ、あれ。

 みんなでワイワイ回るつもりで声をかけたのに、全員に行ってこいと手を振られてしまった。

 いや、えっと。これ偶然だよね?たまたまみんなウィーククエストみたいな細かいお使いに行く気がないだけだよね?流石にこのレベルで気を使われてるのはないよね?


 言ってしまった手前やめようとも言えず、いやまあやめる気もないので押し出されるままクエストに繰り出した。


「流石に週末だと、みなさんもうクエストは終わっちゃってましたね」

「あー、まあそうね。いつもなら時間ある時に先にやっちゃうし。俺も週末までクエスト残ってんのは久々」


 キャンディプーカという森の妖精のようなモブを倒しながら話す。キャンディプーカは物理防御が低いタイプの敵なので、見つけて撫で斬りにするだけだ。今週はあまりむずかしい敵じゃなくてよかった。

 こうしてなんでもない普通のゲームをするのも、なんだか随分久々だ。


「年末、ありがとうね。予定とかなかった?」

「え?あ、ああ、全然ないです。クリスマスに友達と遊ぶの初めてなので、なんかこう、実はすごく楽しみで」

「そりゃよかった。年末イベントは振り返り配信なしで終わったらギルドで集まるから、わちゃわちゃしててそっちも楽しいよ」

「ふふ、楽しみです」


 セリスはそう言ってふわりと笑う。友達、友達か。いやうん、楽しみにしてもらえてて良かった。あの日程は、迷惑になってないことがとりあえずいちばん大切だ。


「侵食耐性の検証の件、かなり頑張ってくれたって聞いた。ありがとう」

「え?……ああ、全然です。グライドさんが完璧に守ってくれている裏でやっていただけですから」

「武器ごとの細かい仕様確認は武器チェンジできると圧倒的に楽だよ。他のメンバーだったらかなり大変だったと思う。正直すっごい助かる」


 セリスは「なら良かったです」と言って、伺うようにちらちらとこちらを見た。


「えっと…どうかした?」

「あ、は、はい!あ、あの……」


<フレンド:セリス が ウィスパーモード を選択しました>


「あの……試験期間が終わったら、EFO外でお時間いただくことは可能でしょうか。VRワークスペースとかで……」

「もちろん、試験いつまで?」

「29日の水曜日までです」

「水曜当日の夜は空いてる?」

「空いてます。最終日は午前中だけなので、午後でしたらいつでも」

「了解、予定確認してまたゲストキー出すよ。後でメール確認しておいて」

「分かりました」


 EFO外で連絡取りたいってことは、あの件だな。


「ロイドもいたほうがいいかな?」

「え?……あ、は、はい、多分……」

「ん、分かった」


 大会予選の前後は意図的に仕事を抜いたので、大丈夫のはずだ。一応ロイドの予定を確認しておこう。


 ――――返事が、もらえる。


 わざわざEFO外を指定して話したいということは、ある程度込み入った話がしたいということだと思う。

 断られるという方向ではない……と信じたい。



 彼女はこの話はゲーム内ではしないと決めているようだ。

 すぐにウィスパーが解除されて、そのあとは普通に近況の話をしながら、気づけばウィーククエストは完了していた。

25章ここまで、閑話はさんで26章になります。

これを予約投稿している時点で26章が完成していません、応援してください。


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― 新着の感想 ―
え、待って、ロイドの気遣いに、気づいてない? 一斉に気遣われてようやく……?
ついこの間始めから読み直したときにニンカとクライドをくっつけたシーンではナイスアシストだったのに、何故自分のことになるとすかぽんたんになるのだろう。 そろそろすかぽんたんを卒業しても良いんですよ。 …
フレー、フレー 今、イチオシの作品です。 応援ならいくらでもしますので、執筆頑張ってください。 フレー、フレー\(๑╹◡╹๑)ノ♬
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