25-5.知らない装備
セリス視点
ぽんすけさんと、遅れてログインしてきたグライドさんはサポートメンバーに混じって机上値の計算に頭を抱え始めた。
お手伝いをしようかと思ったのだけど、皆さんのしている計算が分からないところが多すぎて、明らかに足手まといになるので諦めた。ステータスの計算方法については今度もうちょっと勉強しよう……。
代わりに、とぽんすけさんから渡されたのは大量の槍で。
『全部の耐久値削ってきて』
そんなこんなでアクセサリー作りチームからは戦力外となった私とドドンガさんで、腐食龍相手に死に戻りを繰り返しながら、武器の耐久値を削り続けている。
「これ装備してんのぞわぞわするぅ」
「わかります……」
残耐久値が100みたいな状態で装備を持っていることは基本的にないので、その状態で敵を殴ってさらに耐久を削ろうというのはかなりこう、くるものがある。うっかり大破させてしまわないか本当に心配だ。
あと腐食龍を何度も切っていて分かったのだけど、どうも残耐久値や武器種類などによって吸っている量にばらつきがあるらしい。
一応可能な範囲で記録を取っているんだけど、いまいち法則が見えてこないんですよね……。
お陰で残耐久を10付近まで削ることが難しいので、そろそろボスはやめて残数調整は雑魚敵で行った方がいいだろう。
「お、ですぺな」
「ああ、本当ですね」
他の腐食龍に挑むプレイヤーの中に、ですぺなるてぃの皆さんの姿が見えた。
「……前衛偏重編成?」
「まあ向こうも耐久削り中なんじゃない?」
「そう……ですね」
アルマジロ先生とブレイザー先輩が持ってる大剣、見たことないやつだな。なんの武器なんだろう?
いわゆる最前線と呼ばれる装備はそれなりに勉強しているのだけど、あの大剣の名前が分からない。
あんな装飾の少ない武器、あったっけ?
・・・
「お、セリスちゃん勉強中?」
ドドンガさんが時間ということでログアウトされて、そろそろアクセサリー方針が決まるから少し待機してほしいとのことでギルドで待機中。
さっきのブレイザー先輩やアルマジロ先生の持っていた武器を調べようと武器一覧を開いていたら、ボタニカさんが横から画面を覗き込んだ。
ちなみにボタニカさんはボスの風貌を見て絶対に行かないと宣言したので不参加だ。トラ小屋側がトラキチさん不在でメンバーが浮いているので、必要だったらハムさんが入ってくださることになっている。
「え、ああ、はい。勉強中といえば勉強中です」
「……ブレイダーの武器一覧?」
「はい……さっきアルマジロ先生とすれ違ったのですが、持っていた武器の種類が分からなくて。それで調べていました」
「先生の武器か、なるほどね」
「次の大会で当たるかもしれませんから、見た目で分からない武器があるのは駄目だなと思いまして」
「まっじめー、分かったの?」
真面目、というわけではないのですが、前回負けた相手ですので、それなりに考えないとは行けないんですよね。
「それが、分からなくて……武器って外見装備ないですよね?」
「アバターはないけど、染色はできるのがあるから、色は違うかも」
「あ、そっか……染色……」
かなり真剣に調べているのだけれど、これというものが見つからないと思っていたら、色が違うのはあり得るのか。普段武器染色をしないので失念していた。
ただ、色とかそういうレベルの話ではないんですよね。
「スクショとかある?」
「いえ、すみません本当にすれ違っただけなので撮ってなくて」
「いやまあ、無断で撮るのはあんまマナー良くないから、撮ってなくていいんだけどね。どんなだった?」
「まっすぐな、銀の直刃の大剣でした」
「柄は?」
「スタンダードな真っ直ぐなタイプで」
「鍔は?」
「これと言って特徴はなくて…黒っぽくは見えました」
「……尖ってたり、模様がついてたり」
「しなかったです」
「ギザギザしてたりは?」
「パッと見た感じでは特に……」
「刃に模様とか」
「なかったかと…」
「…………」
「………………」
「……え、そんな武器ある?」
「です、よねえ……」
あ、よかったこれ私が不勉強なわけではなくて、あちらが使っているのがマイナー装備なやつですね。
二人でブレイダーの武器一覧を眺めてあれでもないこれでもないと頭を捻る。
アルマジロ先生が最新ボスに対してわざわざ持ち出したマイナー装備だ。何か意味があると思って間違いない。だけど全く見つからない。
シリーズ制作ではなくパーツばらばらで作成した武器の場合でも、見た目で全く元の素材がわからなくなることは基本的にないと思っているんですけれど……。
「……あ」
「はい?」
ボタニカさんがふと画面をオープンにしてこちらに向けた。
「コレは?」
「――――あ、これです!………え?」
「え、マジ?」
「え、あ、あれ?えっと、確かに、これ、だったと……」
「セリスちゃんお待たせーまとまったよー……どうした?」
アクセサリー計算チームから開放されたらしいぽんすけさんが、こちらはこちらで大量の画面を並べている私達を見て首をかしげた。
「え、あ、お疲れ様です!」
「うん、どうした?」
「えっと……さっきアルマジロ先生とすれ違ったのですが」
「うん」
「その時持っていた武器が、コレで」
「…………さすがに見間違いじゃない?」
私とボタニカさんが指さした武器を見て、ぽんすけさんが首をかしげた。
「かなり、自分の記憶を疑っているところでは、あります」
「いや……でもコレを他と見間違えるのは一周回って難易度高くね?」
「それにしたってコレはないでしょ……。だってコレ」
「店売り装備じゃん」




