24-3.非公式大会の隠しボス
「大会のボス役ですか?」
相談があるとロイドさんに言われて話を聞けば、今度開催するサザンクロスPvP大会で、通常はトーナメント優勝者とリーダーさんが戦闘をするのだけれど、どうも私と戦いたいという意見が一定数出ているらしい。
「縛り内容は公開している通り、アクセサリーを最低ひとつ過去世界産のものにすることだ。リーダーと僕は全アクセサリー過去世界産にするが、セリスは一つでいい」
「は、はあ……」
「数人だったら無視するところだったんだが……その、希望者が16人、2トーナメント分出てしまって。どうだろうか」
「ええと……いいんでしょうか、私で……」
え?参加者はサザンクロスのファンなんですよね?
「君のファンだから、セリスがいいのなら出てあげてほしい」
私のファン……。存在するんですね、本当に。
「は、はあ、まあ、構いません。私がするのは2戦だけですね?」
「セリスが直接戦うのは2戦だけだ。すまないが当日は半日解説席にもいてもらうことになる。よろしく頼む」
「承知しました」
来週の土曜日ですね、まあ、大丈夫です。
「君のファンと交流する機会は少ないからな。リーダーや僕に会う機会をふいにしてでも君に会いたいと願うプレイヤーを、近くで見てみるといい」
「…………えっと、あの」
「リーダーから話はいっているよな?」
「え、あ、はい、伺っています」
「僕も、君と一緒に遊べたら楽しいだろうと思っている」
「……お返事は、お待たせしてしまうかもしれません」
「構わない。別に一期生である必要もないと思っているしな。ただ、他の事務所がいい場合には、少し引き止めるかもしれない」
「……ふふ、所属するとしたらサザンクロスですよ」
今のまま無所属のお手伝いさんか、サザンクロスに正式に入るかの二択です。それ以外はありえません。
そう言って、お互いに笑った。
参加予定者のリストを見せてほしいとお願いすると、送られてきたリストにはとても見覚えのある名前が並んでいる。
ほとんど全員、マデランを送ってくださったプレイヤーだ。
参加申請のメッセージ欄には「トーナメント優勝したらリーダーじゃなくてセリスちゃんと戦いたいです!」とどの方も力強く書かれていて、少しくすぐったい。
期待を裏切らないように頑張らないと。とりあえず、装備の見直しからかな……。アクセサリー制限があるし、もともとリーダーさんとロイドさんは7つのアクセサリーを全て過去世界産にする予定のはずだから、私も可能ならそうしたほうがいいのだろうし。
うーん……MPアップは特化で作ってあって……この条件ならショートダッシュアクセのエンチャントは変えたいな。でも今のも使ってるし、変えるよりは新規に作ったほうがいいか。切り札としてはディフェンシオがあると便利ではあるけど、アサシンの時は使ったことがないんですよね。使えるのかな。アルトジャンプはジャンプブーストとクールタイムが共有なので使えなくて、あとはファストシュートは欲しい。防御系はまあいらないとして、そうするとあとは俊敏アップと攻撃アップ。もう一つ俊敏アップを重ねてもいいのだけど、ストックになにか面白い装備を仕込んでもいいなあ。何か面白いものあるだろうか。
命中上昇をエンチャントしないといけないから、まあ変えるならこれで……ってことはこれも取ってこないと。
イベントポイント足りる?調子に乗ってアバターも色々交換しちゃったんだけど……少し稼いだほうがいいかな……。
短期で稼ぐのに一番いいのは、村の防衛か。武器チェンジファイターで行ってボスのみの周回が時給がよさそうですかね。
「で、何周したの?」
「数えてないので分かりませんが、CPUファイター槍にはもう負ける気がしません」
錬金室で、ニンカさんが錬金の準備をしながら笑った。
まあもともと槍で入ったらこちらが武器を切り替えても敵は槍のままなので、拳装備に変えると負けようがないんですけどね。槍は懐に入られると本当にできることが少ないので。
――――ぽんすけさんやなななさんのような例外はもちろんいますけれど。
錬金倉庫の在庫を見比べてエンチャントや強化に必要な素材で足りなそうなものを探す。んー、ちょっと数が微妙なやつがありますね。取ってこないと。
「セリスがボス役やるんだね〜」
「え、ええ。はい」
「ちょっと意外。やりたがんないと思ってた」
「……自分がやれそうなのか、ちょっと見てみたくて」
「…………そっか」
多分、一期生の話はニンカさんのところにも行っているとは思うんですけども。ギルド内とはいえどこまでお話していいのか良くわからない。
「あたしは、やりたいなーって思ってんの」
「はい」
「セリスも一緒だったら楽しいなーって思ってる」
「はい」
…………。
…………ニンカさん、それとなくって言葉の意味わかるようになったんですね。




