22-1.ギルドオフ会準備中
リーダー視点
「――――はい。人数に変更はありません。ええ、はい。女性が2名、片方は事前に伝えています通り車椅子ですが、介助者が同席しますので店側からの人員は不要です。到着時にトイレまでの導線の説明だけお願いできますか。――――アルコールNGは女性2名と車椅子介助者、それから主催側の伊郷ロイの計4名になります。――――ええ、それで大丈夫です。ええ、はい。よろしくお願いします。では開始の2時間前から細かい準備をこちらも行います。はい、予定通りに行きますので。よろしくお願いします。では」
電話を切ってふうと息を吐く。
これでこっちの準備は完了っと。
そっちの連絡はさっきして、この連絡は週明け確認で、この書類は確認事項の返事待ちで、こっちは一旦ドリアンに回してて、ここの訂正はびっくり箱に渡したから……えーと、あとやってないことはないか?本当にないか?
Todoリストを上から順に眺めていく。本当にないな?本当の本当に急ぎの仕事はないな?
「終わったか?」
隣で待っていた親友が聞いた。
「多分……終わった、はず!」
「こちらの連絡も終わった」
「っしゃー、これで一段落~」
「部屋の方もなんとかなったな」
「それなー」
不動産屋から新しく紹介された部屋は、もうこれ以上の条件は望めないだろうという部屋だった。昨日申込書類を書いてきたので、来週くらいには連絡がくるはずだ。一切値切らなかったのでまあ通るだろう。
さんっざん一年以上探し回って、決まる時はさくっと決まるのが部屋探しなんだよな。
「本格的に月末に休みがいるな」
「そうな。正式な契約の次は事務所の方もだし、イベントの翌週か翌々週くらいに何日かまとめて休みたいね」
配信用に通常外のリフォームもいるし、実際に引っ越せるのは年明け……はまだ無理かな。3月くらいか。いやまあ、部屋探しが終わってればもうなんでもいいんだ。早くこの苦行から開放されたい。
住居関係が終わったら今度は事務所か……まあこっちは賃貸の予定だから多少妥協していいし、すぐ見つかるだろう。アタリもつけてあるし。……………………いややっぱしんどいしめんどいわ……部屋買ったり借りたりするのってなんでこんなめんどいんだろう……。
「例の企画をだそうか」
「そこも最後の一人が埋まんねえんだよなぁ」
いつもならねむ蝉に頼むところだけど、ちょうどニャオ姉が帰ってくる頃だから頼めない。今回は企画的におるは呼べない。ぽこぽこはEFOのソロ配信はしたがらないし、ぽんすけもソロでの配信は基本的にしていない。時間的にセリスも呼べないな……最後の一人が埋まればもうそれでいいんだけど……今日相談するか。無卿の予定も抑えなきゃだし。
少々現実逃避につぶやいたーを開くと、あっちこっちからEFOのスクショが流れてきた。
「復興祭、ね」
「残りの日程は純粋なお祭りだな」
「だーね」
EFOでは昨日から王国復興祭が行われている。
すっかりきれいになった街が全て花で飾られ、祭り限定のミニゲームなどがそこかしこで行われている。
王都アーレインの広場には新しく「復興の英雄像」が建てられた。――――表世界側の古都アーレインの広場にある英雄像が、劇画調からほとんどプレイヤーと同じ顔になったらしい。元々「古の勇者の石像」だったはずなんだけど、そこも「復興の英雄像」に変更になった。
これが「一度も過去世界に行ったことがないプレイヤー」には未だに元の勇者像に見えるらしく、細かいとこ凝ってんな、と思う。
観光期間ということでスクリーンショット投稿用の公式ハッシュタグは大変賑わっている。
ギルメン何人かの投稿も流れてきた。楽しそうね。その的当て俺もやりたい。
「さって。じゃあ色々と準備もあるし、そろそろ本当に会場に向かいますか」
「そうだな。行こう」
ホテルをチェックアウトして、車に乗り込んだ。
貸し切ったレストランに荷物をどかどかと搬入する。びっくり箱とドリアンも合流して、会場を設営していく。
受付テーブル、名札、ビンゴグッズ、景品はこっちに出しておいて、電源ここで確保して。あ、すみません車椅子通る時ってこれくらいスペースあればいいですか?あ、大丈夫。ああなるほどそっちからも出入りできる。ありがとうございます。
流石にもう6回目ともなると慣れたもんですよ。――――俺の忘れ物に、ロイが。
はい、すんませんDPケーブル忘れました。ありがとうございます。ほんっとうにありがとう。
持ち込んだプロジェクターで壁にでっかく画像を出していく。毎年恒例、1年分のスクショやショート動画のまとめスライドショーだ。
去年のギルオフが9月の終わりくらいだったから、今回は10月頭くらいから。
10月頭は、新ボスラフェルの追加時期だ。なので初っ端はラフェルに死にまくるところからスタートで、そこからセリスと一緒に攻略したスクショが流れる。
ラフェルからそろそろ一年かー。長かったような一瞬だったような。
一時間ちょっとかけて設営を終えて、場所をお店側の人に渡して今度は店舗側がビュッフェのセッティングをしていく。
ちょうどいろいろ終わる頃に、最初の二人、ぽんすけとENVYがやってきた。
※古の勇者の石像
12-1.トップレンジャーとストーリー(ep.134)
前話人物紹介の最後の方に二人ほど追記しています。




