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「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
四章 ふたりの遊び人

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4-6.遊び人と逃走の追懐

「それ……で、どうなったんですか?」

「翌日募集広場の同じ場所で旗立ててたら、そこに()()()()()()()()()()()()グライドが……」

「えっ?」

「ロイヤルガードになるから、転職手伝えって」

「はっ?」

「なんだかんだでそれから、割と一緒にこう、組んでる」


 はああ〜〜〜〜グライドさん、ニンカさんと組むためだけ(・・)にロイヤルガードになったんですか!?男前過ぎませんか!?!?


「うっせえ」

「ホントのホントに何も言ってませんが!?」

「顔がうるせえ」

「それはどうしようもないです!?」

「うっさいもんはうっさいんだよ!」


 私よりも少しだけ背の低い彼女が、耳を真っ赤にしてうつむくのが大変に可愛らしい。


「え~~、じゃあその後はどうしたんですか?一緒にレベル上げ?今日みたいな感じですかね?」

「どーでもいいだろ!?ほら、レベル上がったから転職いくぞ!!」


 とうとう幻獣召喚(イリュージョン)のレベルがカンストしたらしいニンカさんが、すっと木から飛び降りる。


「えええ、ちょっと、待ってくださいって!」

「うっせえ。ほら転移するよ、ボートタウン!神出鬼没!」

「ううう、はーい。神出鬼没」



 □■□■□■□■□■□



 レベル上げ時、あたしもサブキャラの方で組むか、と提案された。

 レベル差が50以上あると、高い方のプレイヤーは入手経験値が強制的に1になるからだ。


「サブキャラ作ってないので、いいです。あの、昨日死にまくったので、なんていうか、お詫びに」

「え、それは流石に。確か高レベル側は経験値入んねーんだろ?」

「い、いいんです!誰かと遊ぶだけで楽しいですし!」

「んー、じゃあまあ、今度ニンカさんがレベル上げする時は手伝うってことで」

「……そうですね、それでいいです」


 まともにサブを育てる日なんて、来るだろうか。だけどそれは言わなかった。


「じゃあまあ、精霊虫のとこでいいか」

「えっと、私精霊蝶、ソロだと厳しくて…」

「今日はペアだし。精霊蝶ならアコでも行けるんで大丈夫っすよ」


 グライドさんは本当に、精霊蝶のヘイトを完全に管理しきって、全てをジャストガードしきった。

 あたしは後ろからクリティカル攻撃をズバズバ入れるだけの仕事で、流石にその状態で50レベルも下の敵に負けるようなことはない。


「すごい」

「ほんっとすげーなあんたの火力」

「これだけタゲ取ってもらってスカしたらそいつはアタッカーじゃないです」

「いやそれにしても超速いじゃん。アサシンにしても火力すげーけど、何かブースターとか使ってんの?」


 割とよく聞かれるセリフだ。

 大抵の場合は()()()()()()()()()()と言われる。


「スキルとスキルの間で通常攻撃するじゃないですか」

「おう」

「毎秒15発も入れれば、中規模スキル2回分くらいの火力になります。特にブースターとかは使ってないです」

「ちょっと何言ってんのかわかんねー」


 グライドさんはゲラゲラ楽しそうに笑っていた。


 当時はまだレベリング効率箇所が安定していなくて、何箇所か場所ややり方を変えて3時間ほどペア狩りをした。

 低レベル狩りだから一戦一戦は事故るほど時間が長くなく、グライドさんのヘイト管理も完璧で、びっくりするくらい楽しかった。


 確か、グライドさんが120レベルくらいになって、転職までもうちょっとだ、くらいのあたりだったと思う。

 次の狩り場はどうするか、という相談をしていた時で。


「なあ」

「はい!」

「ニンカさんて、歩行補助使ってるよな?」


 頭の上から氷水をかけられた気分だった。

 正直なところ、彼がなんと言っていたのかも、自分がなんと返したのかも、良く覚えていない。

 ただ気がついたらEFOからはじき出されていた。バイタルのエラー通知に驚いた母が部屋に飛び込んできて、あたしは多分ボロボロと泣いていた。


 ――ゲームなんだから、嫌なことがあったらやめてしまえばいいのよ。


 母は特に事情は聞かず、しばらくして落ち着いたあたしにそう言った。

 最近EFOをするたびに落ち込んでいたことなど、とっくにバレていたようだ。


 二日ほどログインできず、でも結局やらなかったらやらなかったでソワソワしてしまい、三日目にログインした。


 さすがに野良募集はできなかった。

 以前から作ろうかと思っていた採掘用遊び人を作ろうと思い立ち、サブに切り替えて職安に行ったときだった。


「ニンカさん!」


 聞きたかった、聞きたくなかった、逃げたかった、すがりたかった声が後ろから聞こえて。


「っ…………!」


 全力で逃げ出した。



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