4-1.遊び人と遊び人
ニンカ視点
チャットルーム グライド:ニンカ
グライド『新エリアどうする?』
グライド『覚醒武器強化素材でるっぽい』
ニンカ『ごめん今日はむり!』
グライド『あ?』
ニンカ『今サブキャラ育ててっから、サブの方で合流したいんでちと待って!』
グライド『ああそういう。育成手伝うか?』
ニンカ『匿名希望ちゃんといっしょにいくからいいー』
ニンカ『今一緒にサブキャラやってんのー!』
ニンカ『明日には二次職になって合流すっから待ってろよ!』
グライド『一日で二次職までwww』
グライド『お前はともかく助っ人さんついてこれんのか?』
ニンカ『なせばなる』
グライド『(なるかなぁ?』
グライド『そういやサブ何にしたんだ?』
ニンカ『お楽しみにってことで!』
ニンカ『ヒント:新職』
グライド『一択じゃねーかwww』
よしっと。
火曜日夕方。
メンテが明けて、街は賑に賑わっている。
特に職安は人がごった返し、職安のあるボートタウンだけ緊急にチャンネルが増設されているレベルだ。
相方に今日は合流できないチャットを送った。まあ多分ロイドさんとマップ埋めしといてくれるだろう。新マップは新マップで楽しみだ。
「おまたせー、こっちは準備OK」
「こちらも大丈夫です。えーと、パーティ、ぱーてぃしんせい……」
「ほい」
匿名希望ちゃんは本当にMMORPGをやっているんだろうか?
まったくパーティ申請とかに慣れていなくて、ちょっと笑ってしまう。
メッセージ着信音の消し方が分からず半日通知音をピコピコ鳴らしていたと聞いたときは爆笑した。
「ちなストーリーやりたいとかある?」
「メインで全部やってるので、特にはないです。あれ別にレベル上げても受注できますよね?」
「できるできる。どうせ2次職でスキルは振り直しだしそのへんも適当で、時給優先かな」
「りょです。低レベ狩り場分かります?」
「リーダーたちのサブキャラ手伝ってるからそれなりに分かる。いきまっしょい」
今のあたしはサブキャラレベル45、匿名希望ちゃんはレベル42。
職業は二人共一次職、「遊び人」だ。
さーやっていくぞ、待ってろ二次職。
まずは二周年記念パックの期間限定MPポーションを持ちます。
ちなみに匿名希望ちゃんは二周年記念パック自体をリーダーからプレゼントで贈られたらしい。10パックほど。
例のボス討伐動画の収益分配扱いだって。彼女未成年だから直接の金銭のやり取りが面倒で、彼女自身お金はいらないってことでそういう形に落ち着いたらしい。
しばらくアイテム購入画面を開きたくないと顔を青くして言っていた。もらえるもんはもらっときゃいいのにね。
さて、現在位置にマーカーをセット。
神出鬼没、歩いて移動、現在位置にマーカーをセット、神出鬼没、歩いて移動、現在位置にマーカーをセット、神出鬼没
合間合間にポーションを飲みまして。
はい、門につくまでに神出鬼没がLv3になりましたね。
歩きながらちょいちょい体が揺らめくので、はたから見るとちょっとびっくりしたり笑ってしまったりする光景だ。
「す、すみませんまだレベル2です……」
「おう、じゃあもうちょい移動しよか」
匿名希望ちゃんの神出鬼没がLv3になるのを待って、今度こそ移動だ。
精霊虫の森の奥までダッシュする。
徘徊ボスの周回ルート3箇所にワープマーカーをセット。
「ここの徘徊ボスとの戦闘経験は?」
「低レベの時に遭遇しちゃってけちょんけちょんにされて死に戻ったことを戦闘と呼ぶならあります」
ないのね。
「精霊蝶は徘徊型ボス、推奨レベルは120くらいだったかな?一応徘徊って言われてるんだけど、所定時間に特定の場所に来るから、大技を置いて倒すよ。
多分一撃じゃ落ちないから、ひと当てして神出鬼没で離脱。移動順序は1→2→3→1で」
話しながら寄ってきたイマーチャーキャタピィを滅多打ちにする。
二人共推奨のLv50にはちょっと足りていないが、この巨大イモムシに後れを取るような動きはしていない。
精霊虫の森は精霊蝶の巡回ルートに巨大イモムシが寄ってくる性質があり、適正レベル敵を倒しながらボス戦もできるという序盤の美味しい稼ぎ場だ。
っと、精霊蝶来ましたね。七色に輝くでっかい蝶々だ。
「はい、精霊蝶は強敵でしたね」
「神出鬼没ってたまにバグっぽいことできますよね…」
もともと搦手や罠技の多い遊び人にとって、所定場所まで来てくれる徘徊ボスとかただの経験値よね。
「遊び人だから許されてたみたいなところはあるよね。二次職出たし弱体化されるかも」
ま、そん時はそん時でしょう。ナーフされる前に使い倒しましょ。
精霊蝶を3匹ほど倒し、二周年パックのEXPブースターの効果も乗ってレベルは80になった。
精霊蝶だけ見るならもうちょい続けてもいいんだけど、イモムシからの経験値がゴミになったので時給が悪い。
「レベル80…次はサラマンダーあたりですか?」
「いや?次は岩食いの巨人の峡谷」
「適正レベル……適正レベルとは……」
巨人の峡谷、推奨レベル115のインスタントダンジョンだ。このくらいのレベルから他のプレイヤーも増え始めるので、フィールド狩りよりダンジョンのほうが結局速い。
「リリパットの店でちょいとアイテム買うよー」
さ、レベリング二回戦だ。
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※収益分配
サザンクロス正規メンバーは動画等の活動収入の分配についての契約を事前に結んでいますが、匿名希望ちゃんは未契約の状態でやっていました。
リーダーもロイドさんも、敵の攻撃技挙動を最後まで見れるように避けタンクがほしかっただけで、1章開始時はクリアできるとは思っていなかった(=ゲーム内の検証報酬として短剣や装備をあげていた)という感じです。
うっかりクリアしてしまい、動画が話題になってしまい、収益分配の必要が出たのですが、匿名希望ちゃんはそのあたりに疎くもらいすぎだと思っています。
※時給
この場合は時間あたりに稼げる経験値のこと