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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
十六章 地震と落涙

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16-9.甘いデザート

「この楽しいが、リーダーさんの苦痛の上に成り立っているなら、やめたいんです」


 リーダーさんは難しい顔で、ゆっくりと飲み物を口にした。


「サザンクロスにマネジメントを依頼していて、そちらのお仕事が増えてしまっているのは申し訳ないという気持ちはありますが、そこについてはあまり気にしていません」

「そういう仕事だからね。こっちが良いって言って契約したんだから、そこを気にされても困る」

「はい。ありがたいと思っています。竪紙を使ってくださる方たちへの対応はすべてお任せしたいです。でも、それに横紙破りへの対応って入ってるんでしょうか」

「一般には、入ってる。というか横紙破りってつまりウチの会社の軽視だから、会社が対応するべき内容だよ」

「あんなに苦しそうなお顔をなさっていたのに?」


 リーダーさんがとても苦そうな顔で、またグラスに口をつける。


「……直後に、配信予定の取りやめまでしたのに」

「まあ、関係ないとは言わないけど」

「そんな面倒を、気持ちの負担を押し付ける気じゃなかったんです。契約のときとはもう前提が変わってしまって。なら、辞めるべきかなって」


 普通のマネジメントなら、多少件数が多くてもそういう契約だし、そのうち落ち着くと思えば任せられた。

 だけど今目の前の彼を苦しめているのは、会社を無視してくるという軽視への対応だ。会社を通さない人達はそもそも見つけること自体が面倒だし、どの程度どうやって注意するのかも神経を使うだろうし、それが知り合いであったなら、心理負担も重たいだろう。

 そんな苦慮を押し付けるつもりは、本当になかった。私が動画に出ないことで彼がその問題から開放されるなら、その方が良いのではないかと、真剣に思っている。




「――――すぅ……あ~~~~~~もうわかりました!俺の負けです!負けでいいです!」



「え?」

「あんね、」

「え、あ、はい」

「俺、君に動画に出てほしくなかったのよ」

「えっ……と……」


 やっぱり、ご迷惑だったんだろうか。


「俺が君の遊び場奪っちゃったから、守ってあげなきゃって思ってた」

「遊び場を奪われたなんて、思っていません」

「俺が、そう思ってたの。何なら今も思ってる。これは俺の認識の問題」

「えっと……はい」

「俺の後ろで、サザンクロスの影の中で、ただのびのび遊んでて欲しかった。そうすりゃ俺の罪悪感がなくなるから。あの日、楽園の農場で、俺は俺のために君をサザンクロスに誘ったの」

「……はい」

「そしたら断られるし。かと思えば大会で上位に食いついてきて。大会の表彰式なんて言い逃れの出来ない場所でサザンクロスに入れて下さいなんて言うし。もうそうなっちゃうとさ、動画に出すしか選択肢がないわけ」

「えっと……ご迷惑おかけしました……?」

「ホントだよ!めっっっっっちゃめちゃ話題になっちゃって、コラボ依頼もものすごいし。俺のところに来る依頼より件数多いとか頭おかしいだろ」


 ああ、あれやっぱり多いんですね……。


「守ってあげたかったのに、なんで勝手に飛んでっちゃうわけ?」

「何でと聞かれましても……守ってもらうつもりじゃなかったから……ですかね?」

「今回なんて、なんで俺のこと守ろうとしてんの?こっちの立つ瀬がないんだけど?」

「そんなことを申されましても……」

「俺に守られんの嫌?」


 嬉しいですよ。嬉しいに決まっています。

 だけど、それでも。


「――――私は、リーダーさんのことを守りたいです」

「……」

「守られるのじゃなくて、隣に立ちたいです。私は――――タンクですから」

「……だからさ」

「はい」

「何でそんなに格好良いんだよ。ずるいだろ」

「そんな事ないと思いますけど」

「配信は、楽しいのね?」

「え?ああ、はい、楽しいです」

「じゃあやめなくて良い。横紙破ってくる馬鹿のために楽しいことを捨てるなんて、許さない」

「あの、でも」

「俺は、ゲームを楽しんでほしくて、配信をやってる。そのために多少苦しいのは飲むって決めてる」

「多少、なんですか?」

「うるせえなかっこくらい付けさせろよ」


 少し口調が荒っぽい。でも、きっと嘘はないんだろう。いや「多少」は嘘なんだろうけれど。


「ちょっと色々重なって疲れちゃったのは事実だけど、それを君が気にすることは何もない」

「気にはします」

「気にすんなっつの。九つも年下の女の子に心配されるほど脆くはねえよ」

「嫌です。心配はします。急に休んだら体を崩されたんじゃないかって思うし、それが自分のせいかもしれないと思ったら罪悪感くらい持ちます」

「大抵のことは親友と酒飲んでグダグダ愚痴ってりゃなんとかなんだから大丈夫だよ」

「……お酒の飲み過ぎも、心配してますよ」

「おるほどは飲んでねえよ、それはあいつに言ってやってくれ」

「わかりました、今度言います」


 一体何の話をしているのか。

 ふと冷静になってしまって、どうやらリーダーさんもそうだったらしく、二人で同時にふっと吹き出した。


「なんですか、もう」

「こっちのセリフなんだけど、何笑ってんの」


 最後に運ばれてきたデザートは、ずいぶんと甘くて美味しかった。






「ありがとうございました、送っていただいて」

「いいよ。駅で別れんのも微妙でしょ」

「そうですね。じゃあ、えっと、もうちょっとお休みでしょうか?ゆっくりされてくださいね」

「あーまあ、EFO自体は明日辺りから再開するわ。配信はもうちょい休むけど」

「無理しちゃだめですよ」

「してねーって。ゲームは趣味だから」

「なら、いいんですが」


 家のすぐ近くまで送ってもらって、車のドア越しに少しだけ話す。

 リーダーさんは張り詰めたような表情が無くなっていて、笑顔が見惚れるほど優しげだ。


「じゃあ、すぐそこだけど気をつけて帰ってね」

「はい、ありがとうございました。そちらもお気をつけて」

「うん。ああそうだ、言いそびれてたんだけど」

「?なんでしょう?」

「制服、似合ってる。可愛いね」



 彼は車の窓を閉めて、一瞬だけこちらに手を振ってから車を出した。



 □■□■□■□■□■□



 車を適当な場所に停める。

 さすがに朝も早かったしこのまま帰宅は無理だ。今日は適当なビジネスホテルにでも泊まろう。

 帰宅ルートを考えつつオンライン予約を取って、はあと息を吐いた。


「……だからさ」


 俺以外誰もいない車内に声が溢れる。


「勘違いされるから、そういう言い方はダメだって言ってんだろ」


 自分のプレイスキルどころか、顔面偏差値にすら無自覚らしい彼女はもはやどうすればいいのか。

 流石にそこのフォローは契約範囲外だと思うんだけど。


 ギルドは基本的には人柄重視で集めているから今のところ問題にはなっていないようだけど、あの調子で誰も彼もと話をしていたら痴情のもつれで内部分裂が起こりかねない。

 最後に言ってしまったのは、こちらの気も思い知れという気持ちが多分に入っている。いや実際制服はとんでもなく似合っていたけど。写真を撮って制服モデルですと言ったら大半の人が信じると思う。

 せめてその顔の良さくらいは自覚して欲しい、切実に。ゲームのアバターだって可愛いんだし。


 本当に何も問題になっていないのが、誰からも相談が来ないのが不思議なくらいで。



『リーダーさんにしか言わないので、大丈夫だとは思いますが…』



 何故かあの日の言葉が嫌に鮮明に頭に響いて、特に意味もなくハンドルに突っ伏した。


時系列的には次が16-10(掲載済み)になります

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― 新着の感想 ―
[一言] 制服かわいいね、じゃなくて 制服似合っててかわいいね、では? 末永く爆発して。
[一言] 見える、見えるぞ……! 家に帰ってベッドの上でジタバタする紬ちゃんが……! あとでっかいブーメランをリーダーにぶん投げたいです
[良い点] すんごい少年感!純粋な叫びいいわぁ [一言] 勘違いじゃないからさっさとくっついてどうぞ。というか制服褒めるくだり普通にそれこそ'勘違い'しかねないから他所でやらない方がいいぞこのすかぽん…
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