16-1.毒アサシンとプロプレイヤー
「コラボ、ですか?私に?」
「一応体裁としてはサザンクロス全体宛だけど、まぁ実質セリスとグライドの名指しかな。それに俺とロイドで4人」
「俺名指しするならニンカだろ」
「ほんとですよ」
「パーティミックス企画なんだ。縛りの内容的にもニンカは厳しいと思う」
「あー、うーん、そうか……」
グライドさんが微妙な顔で言う。
それにしたって、何で私なんだろう。
「私が出ても仕方ないと思うんですが……」
「行き過ぎた謙遜は嫌味だぞ」
「今セリスは画面にいるだけで美味しいからなぁ」
「美味しいんでしょうか……」
「1回コラボすると次が繋がりやすいしな」
あー、それは分かります。知らない人のチャンネルに出るのは怖いけれど、おるさんの所なら出れる。そういうことか。
「で、肝心の企画は?」
「結構面白そうだよ。これ」
「んー……あー、これは確かにちょっと楽しそうだな」
「EFOではあんまやってない企画だね」
「これ、グライドさんズルじゃないですか?」
「いやいつもの構成だとちょい厳しい……ってか俺が出来ることはリーダーも出来るだろ」
「グライド程は無理だよ。で、どうする?」
うーん、なるほど……。あーでもまぁ、これは確かに面白そう。リーダーさんも一緒なら、行ってもいいだろうか。
「出る」
「出ます」
「お会いできて光栄です、匿名希望アサシンさん!」
招待されたギルドルームは、色々と飾られているサザンクロスとは異なり、無機質な会社の会議室という雰囲気のある部屋だった。
これはサザンクロスが会議室まで飾り過ぎなのか、それともここが飾らなすぎなのか、どちらなんだろう。
「えっと、はじめまして、サザンクロスのセリスです。本日はよろしくお願いします」
「どーもどーも!トシアキです、トシって呼んでね!んでもって御三方はお久しぶり」
「どーも」
「お久しぶりですね」
「半年ぶりくらいすかね?よろしくです」
溌剌という言葉のよく似合う赤い髪のランサー、トシアキさん。
ヒョウを思わせる黄色と黒の猫人のレンジャー、マコトさん。
柔和な笑顔の緑の髪のモンク、フミヒコさん。
一番年が若いというオレンジ色の髪の奇術師、ジンさん。
トロイライトという、プロゲーミングチームのメンバーだそうだ。
「まあEFOは懸賞大会やってないから、メインゲームではないんですけどね!」
トシさんが言う。
「そうなんですね」
「ええ。ただプレイヤーの動きのキャッチがかなりいいのと、スキルやステータス構成を全く同じにできるので、訓練にいいんですよ!VRアクションやってるプロはみんなEFOアカウントは持ってると思いますよ」
「なるほど。異世界型だと同じスキルにはならないって聞きますものね」
「そうです。全く同じ構成のPvPで上位陣と新人で模擬戦、みたいなのは、現状ここが一番やりやすい。視聴者にもサブゲームとして遊んでる人が結構いるので、話題としてはいいですし、ウチも企画ではそこそこやってます」
なるほどなあ。
「縛りプレイ企画は初めてって聞いてるけど、大丈夫そう?」
「えっと、足を引っ張らないように頑張りたいです」
「まあセリスさんが足ひっぱったらそれはそれでおいしいから大丈夫!」
「……がんばります」
「ははは、力抜いて抜いて!それじゃ、さっそく冒頭の撮影から入らせてくださいね〜」
指定された場所に座り、カメラスタッフがなにか手振りをする。
「みなさんこんにちは!トシの企画室でーす!今日はEFOの企画!今回は人数がちょーっと多いからウチのメンバー紹介はスキップね!こいつらでーす!
はい、ということで本命のゲスト!エリシオンファンタジーオンラインギルドランキング1位!サザンクロスのメンバーです!」
「おはようございますカッコキョウベン、サザンクロスのギルドリーダー!ソードマンのリーダーです!」
「こんにちは、サブリーダー、ブラックマジシャンのロイドです」
「タンクのグライドです」
「アサシンのセリスです、よろしくお願いします」
「はい!PvPじゃないですよ!今回の企画はボスラッシュ!題して〜!
店売り品のエリシオンファンタジーオンライン!トッププレイヤーは通常販売装備でボスを倒すことができるのか、企画〜!」
「「「「いええええい!!」」」」
「はい!ご声援ありがとう!今回はトロイライトの中でEFOやり込んでるメンバーと、EFOトップの面々を呼び出しましてですね!NPCショップの常設で購入できるアイテムだけでボスを倒せるのか!?という企画でございます!倒すボスは今画面に出ている通りです〜。いわゆる中級と上級を3体ずつピックしました!一応超上級もやれたらやってみよう、上級倒せたら」
「ネタバレ:超上級は無理」
「まだやってないのにそういう事言わないの!装備品は武器から防具からアクセサリーから全てNPCショップで購入できるもののみ。エンチャントも、店売り品で賄えるものだけで取り揃えました!消費アイテムも同様です~!」
「久々にハイHPポーション買ったわ……」
「エリクサーは錬金アイテムだからな」
「エンチャントも上級攻撃アップとかはつかないっすね。店売り品だと大体中級エンチャントまで」
「そうなんだよね~。ああリストに初級ボスが入ってない理由なんですが、えーとVTRどうぞ!――――――はい、ご覧いただきました通り、一番固いオオバサミさんが特化ブレイダー4人構成でワンパンです。話になりませんでした。飛ばします」
「中級ボスも、リスト見た感じ中級の中では上位のやつだね」
「中級下位はオオバサミ先生よりやわらかいんで……」
「それはそう」
「さて、まあ皆さんお気付きの通り、今ここに8人いまして!EFOはパーティ6人までなんですよね」
「二人帰る?」
「帰んないでwwwwチームを2つに分けようと思います〜。トロイライトVSサザンクロスでもいいんだけど、せっかくだしパーティ混成したいと思います!組分けくんカモン!
はーいこちら組分けくんですね、EFOのこの辺のネーミングはどうなんですかね!AチームとBチーム、せっかくなのでトロイライトとサザンクロスで2:2になるようにしましょう。まずはトロイライトから引くよー」
「はい、組分け完了しました!」
Aチーム:
トシアキ(トロイライト・ランサー)
ジン(トロイライト・奇術師)
リーダー(サザンクロス・ソードマン)
セリス(サザンクロス・アサシン)
Bチーム:
マコト(トロイライト・レンジャー)
フミヒコ(トロイライト・モンク)
ロイド(サザンクロス・ブラックマジシャン)
グライド(サザンクロス・パラディン)
「うーん、頭二人もってかれちった」
「この企画でグライドズルでは?ジャスガはただの技術じゃん」
「いやージャスガカット率は店売りオンリーだと85%までしか上がんないんすよね、結構きついっす。そういう意味では足でも稼げるリーダーのがずるいかもしれないっすね」
「俺はタンクじゃねえ」
「「「「「えっ」」」」」
「ちょっとまてセリスにその反応されんのは心外なんだけど!?お前うちのタンクだろ!?」
「準決勝第1試合の動画とか、流しますか?」
「いきなり切り札を持ってくるなwwwww」
「はいはいそのへんで〜!上級の中には特定属性が全然入らない敵もいるので、キャラ入れ替えは可とします〜!じゃあ早速!やっていきましょう!」
「よろしくおねがいしまーす!」
「はい、どーもどーも!カメラ切ったよ〜!じゃあ分かれて作戦会議、適宜ボス行くよー。マコト、Bチームの撮影指揮まかせた」
「りょっす」
「中級→上級の順番で倒してくれれば、ボス順序は問わず。上級全撃破、それか完全に詰んだら連絡くれ」
トシアキさんがテキパキと指示を出している横で、ジンさんがこちらにやってきた。
「セリスちゃんだよね!大会動画見たよ!ジンですよろよろ〜」
「ジンさんよろしくお願いします。あの、縛りプレイってしたことがないので、やらかすと思いますがよろしくお願いします」
「やらかす前提なのウケるwってか敬語いらんよ。17歳ならタメっしょ」
「すみません、口調はこれが素でして……えっと、17歳なんですか?プロチームでそれは大分お若いのでは…」
「若い方〜。入ったばっかなんでぼくの露出増やすのにトシさんが結構気使ってくれててさ。まあEFOめっちゃやり込んでんのはほんとだけど」
「すごいですねえ」
「プロとか興味ある?」
「えーと、すみません、興味以前に全く存じ上げなくて……」
何をしているのかすら知らないので、答える以前の問題だ。
いや知っていてもゲームのプロになるかと聞かれたら多分ならないですけども。
「よかったらこれを機に知ってほしいな!興味あるならうちの育成チームならぼくが推薦するからさ!」
「あはは…私には荷が重たいですが、お気持ちはありがとうございます」
ニコニコと人懐っこい笑顔の方だ。
明るいオレンジの髪色と相まって、とても空気が明るい。
ほっと息を吐く。良かった、楽しい企画になりそうだ。




