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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
三章 トップアサシンと人魚の足

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3-5.トップアサシンとかんちがい

「足が、動かない?」



 目の前の彼女が、メインキャラとは異なる明るい緑の髪を揺らして首を傾げる。

 言ってしまったという緊張と、何ガキみたいな八つ当たりしてんだという羞恥に顔が上げられない。

 心臓の音が耳元でバクバクと鳴っていて、視界の隅に心拍数急上昇を示すアラートが表示された。


「………………それはもしかして、リアルで?」

「そ。」


 聡い人は大変だなと思いながら、ぐったり溶けた姿勢を変えずになるべく素っ気なく返した。


「あ、じゃあ歩行補助使ってるんですか」

「そーよ。」

「あれ、でもニンカさん、アサシン普通にできてます、よね……?」

「あんた、サザンクロスチャンネルのあたしの動画見たことある?」

「えっっっと、はい、一応」

「コメ欄は見てる?」

「……見てます」


 あたしの出ている動画のコメント欄には、ものすごい量のヘイトコメントがつく。

 AI判定で過度のアンチコメントは削除されるのだけど、表示で「コメントが削除されました」は残り続ける。それにAI判定は即時ではないので、半日くらいは見れるのだ。


「回避無能のクソザコナメクジ、くらいは見たことあるかな?」

「……」


 沈黙は肯定ですよ、匿名希望ちゃん。


「咄嗟に歩けない、んですね」

「そ。パターン化されてれば何とか、って感じ?」

「それは、ニンカさんのせいでは……」

「リアルでの歩行困難者でもさー」


 EFOはこの歩行補助システムのせいで、リアルの歩行ハンデを負ったプレイヤーが多い。

 一時期はニュースにもなり、そういう(・・・・)コミュニティも賑わっている。

 私はその手のには一つも所属していないけれど。


「いるじゃん、健常者もかくやのプレイをする人がさ」

「ああ、えっと、EFOニュースでたまに出てくるような人たちですよね」


「おさんぽ同好会」のギルマスや、「スタッカート」のブラックマジシャンなんかは、本人も公開している車椅子ユーザーで、上位ランカーだ。

 あたしと違って特に悪い噂も聞かず、これと言って不得手なプレイもない。というか多分、あの二人はもう歩行補助を使っていない。


「元々マルチタスクとか、切り替え?みたいの苦手でさ。初日スタートでそろそろ二年もやってるのに、未だに歩行補助全開でさ」


 歩行補助は取れないし、ジャンプもできないし、歩く止まるの判定もなんとなく車椅子に引きずられていて安定しない。

 相方がいなきゃなんもできないから、


「相方の役に立つようなアタッカーでいたいんだけど」

「相方さんというと、サザンクロスメイン盾の、えーと」

「グライド」

「それだ、グライドさん」


 匿名希望ちゃんあれだな、相手のこと役職で覚えてて名前覚えるの苦手なタイプか。


 相方は本当にすごい人だ。

 野良であっちこっち潜って、誰とでも仲良くなれて、いつも余裕があって、色々なトップギルドから声もかかって、

 なんであたしなんかとずっと組んでいてくれるのか全然分かんないけど、あたしは「グライドの相方」としてふさわしいアタッカーでいたいし、いなきゃいけない。


「相方さんかー、いいですねそういうの」

「固定は良いよ。色々込み入った相談もできるし、頼りになるし」


 少し年上で、頼りがいがあって、いつも心地の良い気遣いをしてくれて、


「いつぐらいから組んでるんですか?」

「あー、1周年のちょい後くらいだから、そろそろ1年か。そんくらい」


 リアルの連絡先も交換したけれど、結局まだ会えていない。結構近くに住んでいるっぽいんだけど、あたしの体の問題もあって、"ちょっと会おう"は敷居が高いのだ。


「グライドさんってアタッカーはやってないんでしたっけ?」

「やってないね。なんか性に合わないんだって」


 あたしを(・・・・)頼りにしてくれる(・・・・・・・・)、かけがえのない、



「結婚とかしてるんですか?」

「ケコ!?!?」

「?」

「い、いやその、ケッコンとか、あたしまだ未成年だし!?」

「え?年齢制限ありましたっけ?」

「あるでしょ!?」

「え、え?あのシステム(・・・・・・)そういうのあるんです??」

「…………ぇ」

「……………………ぁ」




 □■□■□■□■□■□


 ウェディングシステム。

 ゲーム内で特定の二人がシステム的にカップルになる、いわゆる結婚システムだ。

 パートナーの位置にワープする機能のついた指輪がもらえるんだったかな?あとマイホームが買える?合ってたかな……開放されたときにさらっと説明読んだだけだからうろ覚えだ。

 特に戦闘に有利な効果がもらえるわけでもない割に準備が結構大変なので、上位陣になるほどやっていないとどこかで読んだ覚えがある。


 それはそれとして。


「いやちがくてこれはそういうことじゃなくてちょっとかんちがいしたっていうかだからちがくてそうじゃなくてあのぜんぜんかんけいなくてそういうんじゃないっていうかだからあの」


 ニンカさんがバグってしまわれた。

 いや、うん、なんていうか。さすがにいかな対人スキルのレベルが低かろうとも、これは気づく。


「ぁ~」

「うっせぇ!」

「まだあーしか言ってないです!?」

「顔がうっせえ!」

「シンプルにディスられた!?」


 気付いたからと言って正しい反応ができるわけではないんだけども。

 あと顔がうるさいのは、微妙に自覚はしている。ちょっとこういう耐性が低いので勝手に口角が上がってしまう。


「え、リアル知り合いとかだったりするんです?」

「ちげーけど!そう言うんじゃないから!」

「うんうん、そういうんじゃないんですよね。で、どこが好きなんです?」


 これが恋バナ!一度やってみたかったやつ!


「ちげっちがっ、ちがうっていうか、その…」


 グライドさんグライドさん、EFOWikiの、有名人欄の、えーとか、き、く、


「へー、大学生」

「ヒョッ」


 あまり包み隠さない感じの人らしく、誕生日や年齢などプライベートな項目が充実している。

 盾持ち系の動画はあまり見てこなかったので知らなかったが、サザンクロスの解説動画の一部では普通に顔出しもしているらしい。


「ほう、結構かっこいい」

「いやっおまっなんっ……!!!」

「いやグライドさんのこと何も知らないなと思って、今ユーザーWiki見てるんですけど、顔出ししてる動画もあるんですね」

「あっあるけどっ」


 ほー、へー、はー。

 ”所属ギルドはサザンクロスだが、ギルドに所属してからも野良や他ギルドなど様々なパーティに助っ人として参加している。”

 へー知らなかった。人気者なんだなぁ。



 などと読み進める私の目の前で、耳まで真っ赤にしたニンカさんが突っ伏したまま動かなくなっていた。

(作品管理のため、サブタイトルに番号を振りました)

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