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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
三章 トップアサシンと人魚の足

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3-4.トップアサシンとソロアサシン

「はああああああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁ…………」



 職安のロビーの椅子に腰掛けて項垂れる。


 大斧?ハンマー?大剣?

 あああいつらね。武器の振り回しに「踏み込み」と「ふんばり」が必要なんだって。


 踏ん張りってなんです?


 いや意味は分かるんですけどね。

 あたしにとっての踏ん張りは、体が浮かないように腕で手すりとかを握りしめることを言うものでしてね?


 一番いい線いっていたファイター拳で、足技を練習し続けること2時間。

 あいも変わらずグルングルン回り続ける体に嫌気が差して、こうしてロビーで溶けている。

 今溶けながらモンクのスキルのコツ的なWikiページや解説動画を表示しているが、どこにも足がぐるぐる回ってしまうなんて話はなく。

 つまりあれだ。私特有の問題ということだ。クソったれ。



「「はあああぁぁぁぁ……」」


 あ、お向かいさんとため息揃っちゃったよ。

 まあ職安ここのロビー使ってる人なんて職業体験がうまくいかなかった人ばっかりだから、誰もがみんな似た調子なんだけどさ。


「あれ?」

「あ……ども」

匿名希望ちゃん(・・・・・・・)じゃん」

「その……ずっとその呼び方なんですかね?」

「だってあたしBANされたくないし」


 匿名希望ちゃん、あるいは助っ人アサシンちゃん。

 どうも例の一件で相当有名になってしまったようで、助っ人ラブコールがひっきりなし。

 ロイドさんが「とりあえず個人名が書かれた書き込みについては運営に削除要請を出したらどうだ?本人要請だったらだいたい消えるはずだが」

 と言うので、本当に全件(・・)の削除要請を出したらしい。

 それがまた一括申請ではなく、BBS内検索から一件一件通報したらしく、通報管理AIが「ほんっとうに嫌なんだな」という判断を下して警告を通り越して書き込みが一斉削除された。

 さらに通報理由として「ゲーム内でのつきまといや迷惑行為」も入力してしまい、これがまた一定数本当であったため、実際につきまといと判定できる範囲のことをしていたユーザーが数日間のアクセス禁止処分にあった。


 そして無事、彼女は匿名希望(名前を言っては)アサシン(いけないあの人)になった。


「まさか、一件目に概要だけ書けばあとはAIがいい感じに処理してくれる、なんて知らなかったんですよぅ」

「まー一般プレイヤーにとって通報アルゴリズムなんてそんなもんよね」


 そうなんです、ともごもごと小さくつぶやいて。


「あ、え、えっと、ニンj……カ、さんも、サブキャラですよね?」

「あー…………まあ、そう」


 こいつ今ニンジャって言おうとしたな?


「ニンカさんクリアサですもんね。サブはほかは何使ってるんですか?」

「使ってないんよ。採掘用に遊び人持ってるだけ」

「へっ!?あ、あー、必要なかったやつですかね?スコアランキング一位ですもんね」

「ん、まー、そうね」

「私もほとぼり冷めるまでサブキャラ育成でもって思ったんですけど、どうもうまくいかなくて」

「あんたのプレイヤースキルなら何でもできそうなもんだけど」

「それがですね……わたし、ジャンプブースト前提の回避しかしてこなかったので、通常回避も受けもできなくて……」


 ソロで回避主体行動を取っていたせいか、まず盾や武器ガードができずファイター・大武器系が全滅。

 そして魔法使いの移動速度の遅さに、攻撃モードカカシくん三体にボッコボコにされて死んできたところらしい。


「ソロなんでメイジ型だと二次職は賢者セージかなと思うんですけど、賢者ってたしか移動速度メイジより……」

「低いね。敏捷は二次職最低」

「ですよねぇ。素早さアップバフ積みまくればなんとかなりますかね……どうもうまくいく未来が見えなくて……」

「回避モンクでいいんじゃないの?」

「移動速度の関係で、接敵攻撃してると全く回避できなくて……」

「そりゃアサシンに比べたら大抵のジョブは遅いけどさ」

「ソロなので、他の人にタゲ取りもお願いできず……」

「適当に野良入れば?あんたならどこでも入れてもらえるでしょ」

「私に死ねと申しますか」


 そこまでかよ。


「あたしとはふつーに喋れてるじゃん」

「流石に多少慣れてきました。今晩辺り枕元で会話を思い出して悶絶する予定です」


 それは慣れてないのでは?


「え、えーと、で、ニンカさんはサブ何にする予定なんですか?」

「なーんも決まらん。なんもうまくいかん。死ぬしかない」

「え、えー?それこそモンクじゃダメなんです?」

「今2時間ほど文字通り格闘して撃沈してるところなんだよなぁ」



 眼の前の少女が頭にハテナを浮かべた顔をしている。


 この時のあたしは、ちょっと疲れていた。


 全職業を体験するのに1時間。そこからモンクの練習に2時間。

 3時間もうまくいかないことをやり続けて、疲れていたし、イライラしていた。


 眼の前の彼女はジャンプ、それもハイジャンプが得意で、移動が上手くて、敵の攻撃を避けるのが得意で。

 あたしは結局ジャンプもろくにできていなくて、移動も下手で、回避もできなくて。


 だから、


「あたしさ」


 だから、これを言ってしまったのは。


「足が動かないんだよ」


 ただの、八つ当たりだ。

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