3-3.トップアサシンと職安
※時間軸現在に戻ります
「さて」
プレイヤー名:ニンカ、初期職レベル40。
初期職として置きっぱなしのサブキャラを取り出して、プレキャリ就職相談訓練所、通称職安にやってきた。
当時は皆が使えないジャンプブーストを一人だけ使っていることに罪悪感があった。
せめてジャンプブーストを素で使える職業になろうと思って、結果的にシーフに就職し、
ハイジャンプ状態でなければ使えないスキルの多いレンジャーを避けたため、二次職は消去法でアサシンになった。
自力のジャンプができるようになるまでは、ジャンプブーストを持っていない職業には就きたくない。
その思いは根強く、結局課金含めて5枠満タンまで所持しているサブキャラは、採掘用の遊び人を除いて全て初期職状態で置きっぱなしにしていた。
しかし、ここにきてクリティカル無効ボスが実装された。
最前線で戦うには、アサシンだけではもうだめだ。
事情を知っているリーダーやロイドさん、それに相方は別に気にしないと言ってくれた。
流石に開発もクリティカル無効ボスを何体も連続では実装しないよ、と。
行けないボス戦中は、普段通り素材集めや錬金作成で十分だ、と。
お前のバカ火力はどうせそのうちまた役に立つだろう、と。
嫌だ。
一人では多数の敵に囲まれて、システムアシストだけでは逃げられず。
野良で組んだパーティーではなぜ避けないのかと詰められ。
たまにやっているジャンプの練習ではうまく飛べず。
たまたま野良でペア組した相手が、当たり前みたいな顔で神様みたいなヘイト管理をしてくれて。プレイヤースキルによるバカ火力が出るのを純粋に褒めてくれて。タイミングが合うときはいつでも一緒に遊んでくれるようになって。サザンクロスに誘われた時もあたしと一緒なら入るって言ってくれて。
もう置いていかれるのは嫌だ。
もう誰も周りに来ない噴水広場で待っているのは嫌だ。
役に立たないと言われるのも、思われるのも、何よりも相方の役に立たない自分が嫌だ。
まだまだジャンプは全然だけれど。
今度は別の職についてみよう。
とりあえず職安で体験から。まずは、ファイターだ。
カカシくんの設定を「大型」「回転あり」「移動なし」「反撃なし」「クリティカル無効」に設定。
職業オタクNPCからのファイターのながいながーい説明をスキップ。
お試しスキルシリーズをセット。
剣を構え、カカシくんに斬りかかる。
いくつかセットしたファイター剣士の基本スキルを順に使っていき、間間で通常攻撃を挟む。
敵の回転に合わせて後ろをとるようにこちらも移動しながら後ろを斬りつけること1分。
「…………分間火力が、Wiki記載の半分……?」
いやそれは流石におかしい。慣れてないとはいえ、あたしの攻撃速度なら2割減くらいには収まるはずだ。
というか詳細ログのスキル火力が足りてない。なんかセット忘れてるスキルとかあるのか?
『すばらしい攻撃ですね!ソードマンを目指すのでしたら、ジャンプ攻撃を使ってみるといいかもしれません!』
プレキャリさんが拍手をしながらニコニコと教えてくれた。
なるほど、ジャンプ攻撃。ジャンプ攻撃ね。
はい次。ファイター槍。
「…………分間火力、1/3……」
まあうん、槍は最初からムリかなって思ってた。
槍はちょうどいい距離からスキルを出すと火力が上がる近中距離職だが、歩行補助システムでは完全にぴたりと思った場所で止まるのが少しむずかしい。
歩行補助システム頼りの移動では、槍は不可能と言っていいだろう。
完全に無意識で歩けるようになったら、記念に使ってみたい職業ではあるんだけどね。
ということで本命、ファイター拳。
拳は基本挙動がアサシンに近い。近距離でボコスカ殴るやつだ。
いいぞいいぞ。火力出てるよ!二次職のモンクは元ネタが僧侶兵のためか自己バフが優秀で火力が出るようになるらしいし、これは本格的に格闘家かな!
いくつか目のスキルを発動した時。
ぐわっと足が上がり、回転で相手を蹴りつけ、
「ふぇっぶ!?」
ぐるんと回転してそのまま地面となかよしになった。
回転蹴り、というやつだ。うーん、火力は高い。上位敵にもいい感じに火力出そう。
二次職になると蹴り技は……増える。そうか。うん、そうだよね。
何回かやれば慣れるかと思ったけど慣性でぐるんぐるん回ってしまうことはどうにもならず、一旦保留。
次、魔法職。
基本ペアなのと、相方はタンクなので、目指すはブラックマジシャン、火力魔法使いだ。
ロイドさんと被ってしまうけど、彼は確かビショップと賢者も育てていたはずなので、あたしがブラマジやる時だけ移ってもらう感じになるだろうか。
うーん、後で要相談案件かな。とりあえずやってみるけど。
スキルをセットし直して、いざ。
「ファイヤーアロー!」
火の矢がカカシくんに飛んでいき、着弾。
着弾箇所を意識しないと逸れてしまうが、とりあえずはいい感じに飛んでくれそうだ。
純後衛なら回避動作は多少ゆっくりでも大丈夫かな…
さて、魔法職といえばこれ。
「ファイヤーバレット!」
4つの火の玉が浮かび、目の前を旋回する。
バレット技で出るこの球は、なにかに着弾するか一定時間経つまで、プレイヤーの思念操作で動かすことができる。
4つを時間差で敵に当てたり、十字砲火したりできる優れ技である。
とりあえずは一番良く使われる手法である、2つずつ時間差で当てるやつをやってみよう。
2発着弾!よし、次の2発も……2発も…………どこいった?
気がつけば視界の横で旋回していたはずの残り2つの火の玉が消えてなくなっている。
え、なぜ?なぜに?
『ファイヤーバレットを使う場合、旋回中の火の玉にも意識を向けないと、落下してなくなっちゃいますよ!気をつけて!』
ぱーどぅん?
まあうん、理由はわかった。今度はもう一度意識して、
「ウォーターバレット!」
おかしい。何回やっても3つまでしか操作できない。
いや、まあ、うん……もともとマルチタスクが苦手なのはそうなんだけど、ここまで可視化されるとヘコむ……。
ロイドさん、12個同時とか操作してたよね?おかしくない?なんかあたしの知らないコツとかあるのか?
えーと、ロイドさんの状態は……あ、いるね。
チャットルーム ロイド:ニンカ
ニンカ『ねえロイドさん』
ロイド『どうした?』
ニンカ『メイジのバレットが何回やっても半分落ちるんだけど、なんで?』
ロイド『あー』
ロイド『あー……』
ロイド『その、お前にブラマジは向いてないと思うぞ?』
ニンカ『とりあえず聞いたことに答えてもらってもいいすかね!?』
ロイド『玉が落ちるまでに少しだけ猶予時間があるから、猶予時間の間に使ってない玉を全部順番に意識に入れて少しずつ浮かせる感じにすると落ちない』
ニンカ『ほう』
ロイド『大体1秒くらいで全部意識すればいける。ただ、その間に当てる方の玉の操作もしないとだぞ』
ニンカ『つまりロイドさん、10個の玉を落とさないように毎秒高度維持しながら、2個の玉操作してんの?』
ロイド『あー……その、言いにくいんだが』
ニンカ『どうぞ』
ロイド『それプラス、次のスキルのチャージタイムを溜めてる』
ロイド『ブラマジの上位スキルは大体意識を向けないとチャージ扱いにならない』
ニンカ『化け物か?』
ロイド『プレイヤースキルで毎秒20発通常攻撃当ててる化け物が何か言っているな』
ニンカ『アベレージは15くらいだから』
ロイド『十分化け物なんだよなぁ』
ニンカ『うっせーばけもん』
…………よし、次は大斧試そ。




