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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
十二章 トップレンジャーとストーリー

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12-1.トップレンジャーとストーリー

12章はねむねむ蝉視点!


「「わかんねえぇぇぇぇ…………」」


 2月9日、木曜日。午前11時。

 リーダーとオレの声が重なった。

 ギルドの会議室にはオレ、リーダー、ロイド。

 目の前には複数の仮想ウィンドウが立ち上がり、一つにはEFO公式ページ、一つにはEFO公式動画サイト、そして十数個のEFOプレイ動画、解説サイトを開いている。


 一昨日の火曜日、EFOのアップデートが入った。

 ストーリーと、ボスの追加。大会も終わったしそろそろだろうと思っていたので、やっときたな、くらいに思って詳細ページを開いた。

 ストーリーは予想通り雷鎚の神ボルナデラ関連だ。しかし新ボスは、いつもと様子が違った。


 ボス紹介動画は黒い影をまとったドラゴンのようなものが、咆哮をあげブレスを吐く数十秒の動画のみ。

 名前だけは公開されている。フィツィロだ。

 EFO内では初の、ドラゴンとなる。

 その出現条件は――――不明。

 最新ストーリー「降り注ぐ雷鎚の願い」をクリア後、

 フィツィロを打ち倒せ

 とだけ書かれたクエストが現れる。

 出現条件や場所の欄には「世界をくまなく探せ」と書かれていて、詳細は一切不明だ。


 とりあえず、それっぽい場所は何箇所か回った。

 霊峰と呼ばれる山、大小様々な神殿、祠、何かありそうだけど特に何もなかった朽ちた柱の山とかそういう場所たち。

 すべての場所にたくさんのプレイヤーがいて、まあ違うらしい、ということだけはよく分かった。


 今日明日を超えると土曜日になる。

 そこまでくれば、人数の多い社会人ギルドによるローラー作戦が動くだろう。

 頭でこのボスを探せるのは、今日と明日が最後だ。

 そう思って、腐らせていた有給を申請してきた。本腰を入れて探す。そう思っていたのに、話は完全に頓挫している。


「一旦、ストーリーを整理しよう。ボルナデラのストーリー後に開放されるクエストだから、無関係とは思えない」


 オレの倍近い数のウィンドウを表示していたロイドが言う。

 それは、たしかにそうだ。

 2年かけて広がったストーリーは少しごちゃっとし始めている。


「最初は、南端の平原の、石室で目を覚ます」

「名前以外何も覚えていない、ここがどこかも分からない。石室を出ると遠くに町が見える。とりあえずそこに行こう、みたいな」

「で、町の前でプチスライムに襲われてる人を助ける」

「あのNPC、誰だった?」

「俺ロンナータ」

「俺はハリスティアだった」

「オレはジョーンコール」


 ここで助けるNPC、プレイヤーごとに違うんだよね。100パターンくらい用意されていて、ランダムでどれかが当たる。

 数十回キャラクターを作り直して、数十回このチュートリアルをやっているけれど、全員ジョーンコールだった。キャラごとではなく、プレイヤーごとで固定らしい。

 二人だけ女NPCがいて、女NPCに当たったプレイヤーだけが集まったギルドがあったはずだ。


「プチスライムで戦闘チュートリアルやって、名前以外何も分からない、ここはどこだって聞いたら"僕もそうなんです"みたいなことを言われて冒険者協会に連れて行ってもらって」

「協会の犯罪経歴を調べるみたいな水晶に触れたら、水晶がめっちゃ光って、女の声で、えーと……」

「"どうか彼を■■■て、世界に安寧を"」

「それだ」

「よく覚えているな」

「伊達に20回チュートリアルやってないっすよ」

「ねむ蝉文字通り20回やってんの?」

「文字通りっすね」


 このチュートリアルはスキップできないから、本当に20回見てる。ぶっちゃけ見飽きた。


「で、最近記憶のない人が平原にたまに現れる、魔物も活性化しているしどうなってるのか、みたいな愚痴を職員さんから聞きつつ、生活のためにとりあえず冒険者登録することになる」


 最初の町は「冒険者協会発祥の地 ヘロズタウン」。冒険の基礎に必要なものがある程度揃っているチュートリアルタウンだ。


「お使いクエストが解禁されて、いくつかクエストを受けて、初期NPCと何か話すよね?」

「そっすね、3回かな、クエスト終わった段階で、女神様の祝福を受けないと強くなれないらしい、祝福を受けられる場所が隣町にある、みたいな話を聞く」

「彼なんか、強くなるの焦ってる感なかった?」

「あるよね。記憶ないって言ってたけど」

「プレイヤーの独白部分も、強くならないと、みたいなことを言っていたはずだな」


 言われてみればそうだな。記憶喪失組、なんか強くなることに執着があるんだろうか?

 ゲームだしあんまり気にしてなかったけど。


「で、隣町に行きたいって言ったら、魔物の活性化がすごくて、ひよっこだけで行けるわけない。せめて平原のヌシを倒せるくらいになれ、みたいなことを言われる」

「ボスチュートリアルだね。大うさぎみたいなの倒す」


 しっぽが蛇になったうさぎ型のボス、ソマニ。うさぎ本体は逃げるのに、蛇の尻尾がべちべちと尻から攻撃してくるというちょっと面倒なボスだ。ボスが引き撃ちすんな。


 ソマニ自体は討伐後水になって溶けて、黄色く光るソマニの欠片という討伐証明アイテムだけが手に入る。ボスを倒したことでようやく認めてもらえて、冒険者ランクのアップと通行証を発行してもらえる。


「ボートタウンで就職についての説明を受けて、プレキャリっていう科学者が職業体験をできる機械を開発したから行ってみると良いって言われて体験して、就職して」

「女神様の力で、力の特化をさせてもらえる、っていう設定だったか?」

「そうそう。汎用的な力が、方向性を持って特化する、だったはず」

「就職する時もなんか言われるよね。えーと……」

「"器を育てて、来たるべき日のために"」

「それだ」

「二次転職のときは言われないよね?」

「そうだね、二次のときは言われなかった気がする?」


 えーと、就職して――――暴走した魔獣を抑えて、魔獣の暴走の原因を探るための特別依頼を受けて山奥に入って、同じ理由で調査に来ていたお姫様を助けて、王都までひっぱられて王城で事情聴取を受けて王城文官と懇意になって、古い文献のいくつかを見せてもらって、ヘロズタウン周辺の伝承があまり残ってないって話をして、文献を調べるならボートタウン図書館に行くと良いってことで図書館の特別利用許可をもらって。


「見かけた文献にあったところを片っ端から調べに行って、実際いろいろトラブルが起きてて」

「クリティカルストーリーっぽいのは、エルフ?」

「だね。"お主はそうなったのじゃな"って言われる」

「覚えていないなら思い出さぬほうが良いだろう、じゃねえんだよな。言えよ耄碌じじい……」

「あとは古都アーレインだな。"古の勇者の石像"が、プレイヤーにそっくりだ」

「あれシステム認識よくできてるよなぁ。プレイヤーごとに見えてる映像違うんでしょ?」

「そうそう、自分のキャラクターを劇画調にしたような石像に見えるの、ちょっと面白いよね」

「今主流の考察はコールドスリープと黄泉がえりだっけ?」


 明らかに1000年生きてるエルフのじっ様が知ってる様子だし、古くからある石像がプレイヤーにそっくりなので、まあ過去から何らかの方法でタイムスリップだろう。時間跳躍事故で記憶がないんじゃないか、というのが主流の考察だ。

 目覚めたのが石室だから、純SF的な時間跳躍ではなく、魔術的なコールドスリープか、死んで生き返ったかのどっちかだろうと言われている。


「中盤はお使い系であんまクリティカルなのはなさそうかな……で、神様関係のストーリーで、過去の映像っぽいものを見る」



「過浄の女神アクア」が山の水源を有害なほど澄んだ水にしてしまっていた。

 アクアを倒すと過去の映像が流れ、そっくりな女性が山の水に足を浸けながらこちらに微笑む。

『水はきれいならいいというものではないのですよ。水の中には目に見えない小さな生き物がいて、それを大きな魚が食べます。きれいにしすぎると魚が棲めないのです。――ちょっと、聞いていますか?目を逸らさない。まったく、あなたという人は』



「あれ、ちょっと衝撃だったよね」

「すっごい優しい笑顔で、あの人倒したのかっていう罪悪感やばかった」

「あの女性が、何がどうなって魚が棲めないほどきれいな水にしてしまったのかは、今考察サイトを見ているが、やはり分かっていないな」



「船乗りたちの荒神」は、目を覚ませば海を大荒れにする神様だった。

 終わった後に見た過去は……どんな荒波も乗りこなす、船長だった。周囲を笑顔の船員に囲まれ、まあ晴れている日が一番いいけどな!と豪快に笑っていた。


「無慈悲な慈母神の寵愛」は、森を狂わせとにかく植物を育てまくってしまう女神だった。

 終わった後に見た過去は、森を慈しみ、しかしきちんと森の恵を利用する、優しくもたくましい母のような人だった。


 そして最新ストーリー「降り注ぐ雷鎚の願い」、田園に雷を落としまくる荒神を倒した後のストーリーは……


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