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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
十一章 トップファイターの呼び出し

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閑話 業後のプリンが美味い

 

 疲れ切ったぼんやりした頭で冷蔵庫を開ける。

 中身は一般的な表現をするならばほぼカラで、一定層が見たら「専用冷蔵庫ですか?」と聞かれること請け合いだ。

 冷気を発する庫内にはプリン、ゼリー、ジュース、チョコレートなどなど……甘味が並んでいる。より正確に言うならば、甘味しか並んでいない。


「終わった……」


 一番お気に入りの、とっておきのプリンを取り出す。今日はこれにしよう。


 一流メーカーのロゴのシールを剥がし、蓋を剥がし、可愛らしいカップからひとすくい。

 とろけるような上品な甘さが脳を灼いた。


「ああ~しみるぅ~」


 本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に大変だった。

 ここまで大変だったのはロイド加盟の瞬間風速以来かもしれない。

 AI判定の振り分けももちろん活用しているが、最終的には目視のチェックが欠かせない。上手く”すり抜ける”やつらがいるから。


「本当に、暇人ばっかりで平和なことで」


 嫌味がこぼれてしまうのはもうどうしようもない。

 サザンクロスの視聴者には女性が多い。セリスの正式加入でこうなること(・・・・・・)は、もちろん分かっていた。

 分かりやすく一発アウトなものは先にAI判定で弾けるので見なくて済むようになったので、一昔前のメール振り分け業務より心理的な負担は下がったとはいえ、やはりこの作業は好きにはなれない。


 セリスがフレンド外のメッセージは一切開いてすらいないと聞いて、安心した。

 すべて自分が受けるから開かなくていい、半端に返信するほうが困ると伝えたので、今後も開かないでくれることを祈るばかりだ。




「何もなかった事になった(・・・・・)、ね」


 先週、強めに問いただした自分に、リーダーはしばらく逡巡してから、そう言った。

 自分の真剣な問いに、答えられないのではなく、はぐらかされたのは初めてだった。

 ロイドは自分の口から答えていい内容ではないと言って、結局答えなかった。


 当人も距離感がおかしくなっていることは理解しているようだったから、近日中に解消するようには伝えた。

 今日の呼び出しで解決すればいいけれど。しなかったら流石にもう一度問いただそうと思っている。

 トップの空気は下に伝染る。良くも、悪くも。既にギルド全体に、なんとなくセリスを遠巻きにする空気がある。

 トラキチ派閥が毎日連れ出していたから、セリス自身はまだ気付いていないと信じたいところだ。



「最大のファインプレーがトラキチって、本当に笑えないからやめて欲しい……」


 空気の読み合いでトラキチが勝つってどういう状況だよ。いや彼は読まない(・・・・)だけで、読めない(・・・・)わけではないことはもちろん知っているけど、それにしたって勘弁してくれ。



 オタクの(がんぼう)が絶対に恋愛関係だと叫んでるんだけど、現実問題としてリーダーとセリスが付き合うことになったらまたこのゴミカスみたいな作業が降ってくると思うと、素直に応援もできねえ。


 それはそれとしてリーダーが恋愛であたふたする様子が見たいか見たくないかで言ったらめちゃめちゃ見たいしロイドと三角関係になってほしいかなってほしくないかで言ったら超なってほしいし拗れてぐちゃぐちゃになるところを特等席で眺めたいし最終的には何かしら大団円を迎えるその様子を部屋の観葉植物か何かに擬態して見ていたい。



 とろりととろけるプリンをまた一口食べる。

 疲れ切った頭に、極上の甘さが染み渡った。



※ドリアンは疲れています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 先日本作を知り読みはじめました たのしませてもらっています ドリアンさんわかります
[良い点] >最終的には何かしら大団円を迎えるその様子を部屋の観葉植物か何かに擬態して見ていたい 全ギルメンが擬態して潜んでいるにちがいない ワタシモ マゼロ!
[一言] ここ数話、読むたびにずーーーーーーーっと晴れ渡るような笑顔でにこにこにこにこ、おーーーほっほっほっ!と奇声をあげながら読んでおります。 着実に人間としての何かを失っているような、開いてはいけ…
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