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10-6.紹介動画の打ち合わせ

 私と、リーダーさんとロイドさん、ニンカさんとグライドさん、それから知らない赤茶の髪の人。

 ギルドハウスに入ってすぐに通された、配信部屋という名前のついた、ソファが並ぶきれいな部屋に6人が座る。

 とにかく新人紹介動画が矢の催促らしく、ギルメンの紹介は後日にさせて欲しいとのことだった。


「配信スタッフやってます、ドリアンです。ギルドメンバーとしては特に作業やってないですが、それなりに話す機会もあると思いますので、どうぞよろしくお願いします」

「あ、ドリアンさん、って、動画の進行やってらっしゃる方ですよね?」

「ですです。声しか入ってないんで顔は出てないですけどね」

「ドリアンいつもカメラ役だからね」


 声は大変よく聞く方だった。


「悪い、ちょっと進行相談前に確認取らせてもらって良い?」

「ほう?どうしました?」


 リーダーさんが難しい顔をしてこちらを見る。

 その表情に心臓がぎゅっと痛みを訴える。


 フレンド:リーダー から パーティ申請 が届きました。

 パーティ申請を受理しました。パーティリーダーは リーダー です。

 ウィスパーモードが選択されました。


「最終確認。入っちゃうと、この状況だと抜けること自体が結構大変だから……今ならまだ取り返しが効く。本当にギルド入る?」

「それは、私は入らないほうが良いということですか?」

「いや……君があれから、嫌になっていないかと思って……。アルマジロ先生のですぺなとか、オルタナティブとか、そういうところに所属を願っても良い。その辺なら、うちに入るのと同じくらい周りも落ち着くと思う」

「あの件は、決着着いたんですよね?」

「ついた。間違いなく。ただ、それと君の気持ちは別の問題だから」


 ああ、彼は。本当は理人さんなんだ。

 ()()()()()()()()()()()()


 ――――笑え。


「私は、サザンクロスに入りたいです」

「……本当に?」


 ――――笑え。


「本当ですよ?ニンカさんから伝わってませんか?気持ちに区切りがついたら、入りたいって」

「それは、聞いた」


 ――――笑え。


「私、自信を持ってサザンクロスですって言えるようになりたかったんです。今なら言えます。私に、サザンクロスのメンバーを名乗らせてもらえませんか?」


 ――――笑え。


「――――わかった。ごめん、もう聞かない」

「はい。もう聞かないでくださいね」


 ――――次は、うまく笑えないかもしれないから。


 フレンド:リーダー がパーティを解散しました。


「ごめんごめん。OKっす」

「すみません、お待たせしました」

「…………大丈夫ですか?」

「ごめんこないだちょっと色々あって、その確認」

「もう終わったんですけど、リーダーさん結構気にしますね?」

「いや、うん、ごめん……」

「セリス、大丈夫?」

「え?大丈夫ですよ?変に蒸し返されてちょっとびっくりはしました」

「ほんとごめんて」

「話は終わりで良いのか?」

「いい。待たせてすまん」


 いつも通りの顔になった彼が言う。

 だから私も、なるべくいつも通りに言った。


「私動画撮影とかって全然わからないんですけど、打ち合わせって何をするんですか?」

「――――ええと、まずこれが予定進行表です」


 何か言いたげなドリアンさんが、言葉を飲み込んで進行表を出した。


「オープニング、一言自己紹介、プレイスタイルの説明……を、しないという説明?」

「オープニングの喋り出しは今回はかなり短くする。ニンカとグライドはリーダーと俺に続いて挨拶だけ入れてくれ」

「りょっす」

「了解」

「で、セリスは自己紹介どうぞ!で一言名乗ってもらって」

「何名乗れば良いんでしょう……?」

「匿名希望アサシンことセリスです、くらいでいい。細かいことは後から質問形式で話していくから」

「なる、ほど?」


 まあ、頭の名乗りなんてそんなものなんだろうか?


「で、プレイスタイルなんだけどさ、これ今更説明するぅ?って話で……」

「いやいらんでしょ、セリスの説明なんて今更」

「一応、解説動画への誘導の話はする。その辺は俺とリーダー主体でいくから、グライドとニンカは入れそうなら適当に入ってくれ」

「はーい」

「で、次がセリスに10の質問。これ質問リストね」

「えーと……アバターはあんまり持ってないので好きも嫌いもないんですよね……」

「あー、それはそう言ってくれていいよ」

「分かりました」

「で、それ終わったら雑談系質問に入るんだけど、これが出す予定の質問集」

「コレ以外にも俺達の方から聞きたいことがあれば出るかもしれないが、基本的にはここから来る。NG質問があったら今のうちに教えてくれ」


 いやリストが100個近いんですけど!?


「え、コレ全部ですか……?」

「あ、流石に全部じゃないよ?話の流れで聞きやすそうなのをその場でピックする感じ!」

「いつも雑談長いからな、20もいかないんじゃねーか?」

「最大がびっくり箱のときの30だったと思う。どうでもいい話の割合のほうが多いな」

「ああよかった、びっくりしました。えーと……すみません、この誕生日、NGでお願いします」

「OK、消しとく」

「ちなみに、あたしは誕生日聞いてもいい?」

「え、あ、はい、8月13日です」

「それは答えるのかw」

「友達と話す分にはいいんですけど、動画で全然知らない人に知られるのは、なんかちょっと……」

「あーまーちょっと分かる」

「他にはあるか?」

「んー……大丈夫だと思います」


 それからしばらく私を抜いた4人が慣れた雰囲気で話す順番を相談する。

 一通り話し終わって、ドリアンさんがカメラ位置に立った。


「じゃあこの後喋りだしの雰囲気だけ、リハやっていきます。最初の挨拶までですね」


 椅子の向きや幅を調整して実際に座る。

 私を中心に、右手にリーダーさんとロイドさん、左手にニンカさんとグライドさんが並ぶ。

 動画で見聞きするのと全く同じ喋りがすぐ右隣から聞こえて来て、なんだかソワソワする。


 挨拶は初回練習で3回噛んだ。

 二回目の練習で2回噛んだ。

 ニンカさんが左隣で爆笑していて、それでようやく少し緊張が取れて、三回目はちゃんと言えた。


 会話に慣れようということで、本番配置のまま少し雑談をする。自然とラフェルの話や大会の話が続いて、リーダーさんが決勝で会えなくて残念だったと笑った。

 いやアルマジロ先生に勝つのは無理ですよ。私達が戦うのは、リーダーさんがトラキチさんに負けた時だけですって。

 お互いに喋りながらでも、視線はすこしこっちに。喋りが少し早いから、ちょっとだけゆっくりに、と言われて。

 いや難しいな、喋るだけなのに……。


 20分ほどのリハ雑談を終えて、一旦解散することになった。


 質問集をもう一度見たいとお願いしたら、メッセージで送られてきた。

 質問をざっと見て頭の中に解答を組んでいく。


 その中の一つの質問に目が止まって、ああ、なるほど、と思う。


 この質問は多分読まれる。何個か見たメンバー紹介動画で必ず質問されていた。

 リーダーさんやロイドさんはすごく嫌がるだろうけれど、ニンカさんなら多分乗ってくれる。


 自分をそこ(・・)から外す一番手っ取り早い方法を発見して。






 胸がまた、じくりと痛んだ。








この直後が9-27/9-28の動画回になります。

https://ncode.syosetu.com/n6734gj/107

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― 新着の感想 ―
[一言] セリスちゃん…(´;ω;`) 116話でもソワソワしたのですが、今回読んで心が痛くなりました。 ニンカちゃんが柔らかく笑うようになってほっこりしていた矢先に、セリスちゃんがあああ…と情緒揺さ…
[一言] 恋愛に悩む女の子って最高やな…! 次の更新も楽しみにしてます!
[一言] どんな感情で動画回で喋ってたのセリス嬢…先が気になる〜!
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