第1録「女神様チートが貰えるって本当ですか?」
『何故私が怒っているか分かりますか?』
羽衣を纏い少し頬を膨らませたその女性は正座している俺の周りをくるくると回りながらそう問いかけてくる。
「いえ……心当たりがないです。すいません…」
トラックに轢かれかけたり、花瓶が俺の頭めがけて落ちてきたり、通り魔に襲われたり、トラックに轢かれたり…もうただでさえ疲れているのに目が覚めたら謎の空間に放り出され 心当たりもないのにいきなり正座させられて… 心底疲れ果てた顔をしているとその女性が更に話しかけてくる。
『そうですかー 心当たりないんですか ふーん』
意味ありげな雰囲気を醸しながらクルクルクルクル俺の周りを回り続けている。
『あなたアプリをインストールして 始める 押しましたよね?』
「え、アプリ…?」
頭の隅から隅まで調べ直す……
「はい!いつの間にか入ってたアプリでそんな操作をやったと思います…」
あの日は色んなことがあったから忘れていたがまさかあのアプリ本物なのか…つまり今から俺は本当に異世界に!?
『えぇ、押しましたよね!自分の意思でアプリをインストールして……いつの間にか…?』
見る見るうちにその女性の顔が青ざめていく
「どうかしたんですか?あのアプリが本物なら今から異世界に転生ですよね!確かにまだ死ぬのは早かったかもしれないけど、チートもらって異世界無双!ですよね」
『え、えぇ…そうですね!貴方には私の加護を!女神ウラティスの加護を授けましょう!』
若干声が震えつつも少し呪文を唱え 手を大きく広げる
『では勇者仁志よ!貴殿に女神ウラティスの加護を授けん!』
そう女神が唱えると俺の周りを光の粒が覆っていく。
その光は俺の体に吸収され左手の甲に紋様が浮き出る。
紋様が形を変え、帯のような線が腕に纏わり付き、二重円に短剣が刺さった紋様に変化する
現実味のない体験に心を奪われ少し放心してしまう
憧れていたゲームや漫画の世界のような体験を目の当たりにし心が湧き踊る。ワクワクが抑えられない。
『その加護は言語統制、ステータスの管理などさまざまな恩恵をもたらします』
新しいおもちゃを買ってもらった子供のように煌びやかな目で紋様を見つめ腕を上下左右に振り回す。
「これで敵を一撃で倒せるような魔法やスキルが使えるんですね!」
『えっ、使えるわけないじゃないですか』
「えっ」
2人の間に沈黙が流れ、時が止まる。
気まずい雰囲気が満ち始め、女神は目を逸らす。
「あのぉ〜、もしかして女神の加護ってただの便利スキルであって敵を倒す力はない…なんてことないですよね」
女神はそっぽ向いたまま目を合わせようとしない。
冷や汗が女神の額をつたったいく。
「いやいやいや!チートもなしでどうやったらいいんですか!何か能力とか聖剣とか!下さいよ!」
『そんなのあったらとっくに与えてますよ!』
2人で言い争っていると何もない空間から1人の少女が歩いてくる。
その少女は不規則に動く尻尾を携え頭には猫ミミが生えている。
その少女はこちらに向かって一礼をする
『初めまして、仁志様 私は女神ウラティスの手伝い天使獣族のニャニャ子です。以後お見知り置きを』
『あ、ニャー子!良いところに来てくれました!この人が私に文句ばっかり言ってくるんですよ!助けてください』
そう言って女神は猫耳の少女に抱きつく。
『女神様…またですか…この前もそうやって転生予定の人に逃げられましたよね。そろそろ私も怒りますよ』
ニャニャ子は女神の頭を撫でながらこちらに目を向けてくる。
『仁志様、先ほどいつの間にかアプリが入っていたと聞こえましたが本当ですか?』
女神の身体がピクッと少し反応する。
「えっ…はい、記憶が正しければ入れた覚えはない…ですね」
『そうですか』
そう言うと抱きついている女神の頭を両手で鷲掴み、引き離す。
『女神様?どう言うことですか?まさかとは思いますが人違いなんてことないですよね』
プルプルと女神の身体が震え始める。
冷や汗を額から流しながら喋りはじめる。
『あのですね、途中からなんかおかしいなーって思ってたんだけどね、もうやっちゃったし流れで押し通せるかなーみたいな! テヘッ!』
心底呆れた顔でニャニャ子は女神を睨みつける。
『仁志様、確認したいことがございます。仁志様の死亡原因は覚えていらっしゃいますか?』
「死亡原因って言われても…トラックがぶつかった後は声が聞こえて…気付いたらここにいたって感じです」
ニャニャ子は口に手を当て少し考えはじめる。
『恐らく、うちのアホ女神が間違えて仁志様をこちらに呼んでしまったと思われます。その日は何か変わった事はなかったですか?』
「変わった事…トラックに轢かれたりいきなり花瓶が落ちてきたり、通り魔に襲われたり…あの1日全て変わってました」
前日の事と死んだ日の全てをニャニャ子に話す。
その間女神はずっとプルプル震えながらニャニャ子に頭を鷲掴みなされていて可哀想だなーと心の本当隅の隅で少しだけ思っていた。
『女神様!これだけ死亡ルートを回避してるのになんで強制的にこっちに呼んだんですか!明らかにおかしいですよね!』
『だ、だって〜』
ほろほろと涙をこぼしながら言い訳しをしはじめる。
どれもこれも取ってつけたような言い訳ばかりで、傍から見ていればまるで子供のようだった。
『言い訳はそれだけですか女神様、もう今回のことで殆愛想がつきました。少しお暇を頂きます』
『見捨てないで!見捨てないで!ニャー子がいなかったら私何にも出来ないよ〜!』
ピーピー泣きながらニャニャ子に縋り付いている。
振り解かれると今度は足に抱きつく。それさえ振り解かれた、最終的には土下座していた。
『女神様!神様ともあろうものが従者に対して土下座なんてするもんじゃありません!今まで私は甘やかしすぎてました!これからは当分一人で頑張って下さい。』
言葉にならない嗚咽を吐き続ける。
ここまで来ると流石に可哀想に思えてくる。
『仁志様、申し訳ございません。こちらの手違いで死亡処理をしてしまいました。一度処理してしまうと、伝えづらいのですが、現世に戻る事は出来なくなります』
所々、言葉をつまらせながら真剣な眼差しでこちらを見て話し続ける。
『ですので、このまま転生させていただきます。しかし、それではあまりにこちらの不手際が目立ちますので、特例として、何か仁志様の望むものを差し上げます。』
これが俗に言う、転生チートというやつか…などと心の中で思いつつ、何を望むか考える。
『聖剣でも、強力なスキルや魔法、はたまたお金まで何でも大丈夫です。ただ…』
ニャニャ子はそう言いかけながら言葉の途中で少し俯きながらこちらの表情を伺うように続きを言う。
『何もなしに加護を授けるわけにはいかないのです…神前協定というもので何か強力な加護を与えるにはそれ相応のデメリットが付与されます』
「デメリット…例えばどのようなのがあるんですか?」
当然最初は強力な魔法やスキルを望んだが、デメリットの大きさによっては…つまりは費用対効果の良いものを望むべきだということか…
『強いものですと、自身の全てを犠牲にして発動する消滅魔法、一度手にすると死ぬまで暴れ続ける魔剣、様々です。これらは最早人の領域から外れていますのであまりお勧めはしません』
これからの異世界での生活を考えるならば、弱くてもいいから便利なスキル、応用が効くスキルや魔法を覚えるべきだ。今言われた2つは話にさえならない
「一つ聞きたいんですけど、例えば小さい望みならデメリットはないんですか?」
『はい、その通りです。例えに例えで返すならば魔法の光源やスキル治癒はデメリットなしで加護として付与することが出来ます。』
「なるそど、分かりました。貰える加護は一つだけですか?」
少し答え辛そうな顔をしながらニャニャ子は考え込む。
『いえ…先ほどのような小さなものですと3個ほどなら』
3個…多いか少ないかは分からないが貰えるものは貰っといて損はないはずだ、ここで無理に強大な魔法を得たところで使い所に困るだけだ。それなら細々としたものでも手数を多くすればそれだけ便利になる。
「分かりました、覚えられる物ものやもらえる物を教えてもらってもいいですか?」
『はい、かしこまりました。少々お待ち下さい』
そう言って泣きじゃくる女神を尻目にニャニャ子は色々と説明をしてくれた。
1時間が経ち、新たな魔法とスキルを1つずつ、そして特殊アイテムを一つもらい、話が纏まる。
『仁志様、新しい世界でのご活躍を期待しています』
転生の準備は整った。ワクワク感、不安感など様々な感情が入り混じり心の中はカオスだがそれでもなお、前を向く。
『女神様、それではお願いします。』
『うん、分かった…』
先程まで泣いていた女神は少し気を取り直したようだが、まだ目尻はほんのりと赤みを帯びている。
『勇者仁志よ!女神ウラティスの名において魔王討伐の名を与えん!さすらば汝、我らの神敵を討ち滅ぼし、世に平和を与えん事を!』
「女神様の名、魔王討伐しかと承りました。しかと名を心に刻み必ずや魔王を打ち倒して参ります。」
そう言い終わると真下に二重円の魔法陣が現れ光が体を覆っていくき、浮遊感を覚える。
『やった!ニャー子!私噛まずに言えたよ!』
小さくピョンピョンと跳ねながらニャニャ子に対して褒めてもらおうトアピールしている。
………もうこの女神に対して期待するのはやめておこう。最後はカッコ良かったんだけどなぁ そう思いながら光の導きに身体を預ける。
意識が遠のいていく中で下から声が聞こえる。
『仁志様!従者を一人お付けいたします!何かありましたらその者を頼って下さい!それではお気をつけて!』
ニャニャ子が手を振りながら見送る。
それにつられるように女神もまた手を振る。
少し暖かい気持ちになれた気がする。
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目が覚めると俺はベッドに横たわっていた、一人用の部屋のようで部屋自体は広くなく、ベッドも1つだけ、ベッドの横のテーブルには小さな皮袋があった。
ここから俺の冒険は始まる。
心を躍らせながら皮袋を手にし部屋を出る。
階段を降りカウンターに向かい店主らしき人に話しかける。
「店主さんありがとう、よく眠れたよ、それじゃ」
爽やかに挨拶をしカウンターをはなれようとしたら
『そりゃよかった、ところでお客さん、代金忘れてるよ』
え、お金……?
慌てて皮袋の中を見るが中には黒い少し尖った石と
名刺ほどの大きさのカードが1枚入っているだけだった。
「え、えっとお金ね、お金…お金ねぇ」
やばいやばいやばいお金なんて持ってねえよ!
あのクソポンコツ女神がぁぁぁぁぁぁ
俺の心はあの女神に対する憎悪感で一杯になっていた___
最近、料理にハマっています。
今まではコンビニ弁当やカップラーメンで過ごしてたんですけど、お金かかるなぁって思って自炊を始めました。
これが中々面白いです。
鳥もも肉なんて焼いて胡椒かけるだけで美味しすぎて涙が出ます。
いつしかいろんな料理が作れたらなぁ〜と思いつつも今作れる料理を1週間のローテーション組んで回してます。
いつか金額を気にせず100g78円の鳥もも肉じゃなくて300g700円の牛肉のステーキが食べたいなぁって思いつつ鳥もも肉買ってます。
一人暮らしなので鳥さんのお世話になりっぱなしです。
冗談で友達によゐこみたいに鳥を家で飼おうかなって送ったら、貴方が飼っても卵産む前に捌いて食べんでしょって言われました!酷いと思いませんか?
そんな作者の生活事情が知れるあと書きでした。
いつか牛肉が食べたいなぁ〜