表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元異世界魔王の佐藤くん  作者: みそてんろ
1章 魔王降臨
3/5

2話 イジメと魔王 (2)

 それから、ありがたいことに鬼塚先輩から呼び出されることはなくなった。

 高校一年生だけに全財産を奪われたことだけは辛かったが、暴力的なことがなくてよかった。

 佐藤くんは結局基本一人で行動していた。

 やっぱり友達付き合いが苦手なのかな、今日は一緒に帰れないか聞いてみようかな。


「ねえ、佐藤くん。一緒に帰らない?」


 すると、佐藤くんは僕の目をじっと見つめてから一言僕に告げた。


「お前、一人怖いのか?」

「え…?」


 また、じっと僕を見つめてこう言った。


「金、奪え返しに行くか?」


 な、何を言ってるんだ?

 もしかしてあの現場を見ていたのか?

 周りには他の人もいると言うのにその件を躊躇なく言ってきたことに焦りを覚えた。


「もしかして見てたの?」

「たまたま」

「い、いいよ。それからは何もないし」

「そうか」


 佐藤くんはそう言うと、一人で鞄を持って立ち去ってしまった。どこか掴み所のない人だ。

 帰り道、別のクラスの力賀くんに遭遇した。

 何やら鬼塚先輩グループの先輩一人に絡まれているみたいだった。

 力賀くんは焦る顔一つ見せずに先輩と向き合っている。

 そしてその傍には。


「さ、佐藤くん!?」


 僕は思わず声を出してしまった。

 彼らも気付き僕の方に目を向けた。


「お前あの時の一年じゃねえか」

「あ、あの、その…」

「こいつらがこの前の金返せだとよ。お前の差し金か?今年の一年はなんでこう全員舐め腐ったんだ」

「ぼ、僕はそんな…別に」


 ああ、もう。これ以上その件には触れないでくれよ。

 先輩も苛立ちを隠せないでいた。


「今ここでぶちのめしてやってもいいけど、勝手なことしたら鬼塚に何か言われるからな。いいか、あの学校を締めてんのは三年の御堂先輩だ。二年の総括を頼まれてんのが鬼塚だ。お前らが舐めてると全員を敵に回すことになるぞ、覚えとけ!」


 言うだけ言って帰ってしまった。

 佐藤くんと力賀くんはボーッとしている。彼らに危機感というのはないのだろうか。

 そして、僕たちはそのまま流れで三人で帰っていた。

 突如思い詰めたように力賀くんは告げた。


「俺思ったんだけどよ、これから三人でゲーセン行かねえか?俺マルオカートめちゃ強いんだよ」


 何を言い出すかと思えば…。

 力賀くんの突拍子もない言動には毎度驚かされる。


「興味ない」


 佐藤くんも変わらない感じだ。

 やっぱりただ一人が好きなだけなのだろうか。


「んなこと言うなよ、俺めちゃ強いから」


 強引に引っ張る力賀くんに佐藤くんは嫌そうな顔を向けていた。


「さ、佐藤くんは乗り気じゃないみたいだよ?またみんなで来ようよ。どうしてそんなに行きたいんだい?」


 あまりにも止まらない力賀くんに僕は言った。

 力賀くんは裏表ない顔で言い返した。


「だって俺らもうダチじゃねえか。ダチが一緒に遊ぶのは当たり前なことだろ?」


 この人はまた。

 僕は彼の裏表ない真っ直ぐな言葉に助けられていた。

 これで二度目だった。

 しかし、佐藤くんはどうしても嫌がっていたため、僕たちはそのまま帰宅することになった。


 僕には友達が出来た。




 翌日、当然と言えば当然なのだろうが、僕は二年の不良グループに待ち伏せをされていた。鬼塚先輩がいないのが救いだ…と安堵していたら、そのまま校舎裏の陰に連れて来られてしまった。

 ここの校舎裏は職員室からほぼ対極にあるため、滅多なことで先生たちに見つかることはない。

 連れて行かれた先には、力賀くんと佐藤くんが既に先に連れて来られていた。

 言わんこっちゃない…。

 そこには鬼塚先輩の姿もあった。


「昨日突っかかってきた奴らはこれで全員か?」

「力賀に、この前の木下、そして昨日金を返せと力賀と言いに来た佐藤って奴だな。合ってる」


 鬼塚先輩には一切の笑みもなく、眉間にはシワというシワが寄せられていた。


「お前ら度が過ぎたな。俺と安田だけ残る。他は全員ホームルームに出席しろ。全員いないのは流石に先公共も探しに来るかもしれねえ」


 他の不良たちを返し、鬼塚先輩と昨日の安田先輩だけが残る形になった。

 佐藤くんはいかにも喧嘩できなさそうだし、力賀くんなら二対一で負けないって考えかな…。


「お前ら覚悟できてんな」


 鬼塚先輩は拳を鳴らしながらじわりじわりと力賀くんに近寄った。

 そして、物凄い勢いで拳を振り上げ、そのまま力賀くんの腹部へと殴り込んだ。


「ウッ」


 力賀くんは野太い声を出したお腹を抑えた。


「何すんだてめえ…」


 力賀くんも負けじと拳を振り上げた。

 これから激しい喧嘩が始まるのかと思われたその時だった。


「お、お前ら何してるんだ!!」


 駆けつけて来たのは身長が僕よりも小さい初めて見る男子生徒だった。


「学校で迷子になったかと思えば…イジメだったら許さないぞ!!」

「なんなんだこのチビは…!」


 鬼塚先輩の眉間には更にシワが増えていた。


「おい安田、お前はモヤシ共片付けろ。力賀は俺がぶちのめしてやる」


 安田先輩は「あいよ」と一つ返事をして新しく来た小さい彼に猛烈な腹パンをキメた。

 小さい彼は地面に膝から崩れ落ちてしまった。


「ちょ、だ、大丈夫!?」

「あ?人の心配してる場合かよ!!」

「うわ!!」


 小さい彼を殴り飛ばし、そのまま僕の方に駆け寄っていた安田先輩は僕の目前で腕を振り上げた。

 僕は思わず目を閉じてしまっていた。

 それから、何が起こったかは分からなかった。

佐藤真央サトウマオ

主人公。現15歳という設定。元異世界の魔王。

黒髪で身長168cm、体重59kgと普通。


木下通キノシタトオル

『イジメと魔王』での視点役。元イジメられっ子。

15歳。身長163cm、体重54kgと小柄。


力賀剛リキガツヨシ

ただのバカ。本物のバカ。ただし重要人物。

16歳。身長182cm、体重80kgと大柄。


鬼塚オニヅカ先輩

二年を統括している、不良グループの代表。

17歳。身長175cm、体重62kg。


安田ヤスダ先輩

不良グループの一人。二年生。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ