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パニック作品

御馳走


光が全く射し込まない真っ暗な闇の中で何かが動いた。






いる。


息を殺し獲物の足音に耳を澄ます。


獲物はあたしに気づいていない。


足音を忍ばせそっと近寄り飛びかかる。


頭と胴体を鷲掴みにしてその首筋に齧りつき肉を引き千切った。


引き千切った肉を咀嚼して飲み込む。


美味しいー久しぶりの御馳走。


流れ出る血を口で受け止めて飲み、肉を引き千切った傷口に口を当て血をチューと吸う。


それから胴体に歯を立て骨ごと肉を噛み千切り、バリバリと音を立てて肉と骨を咀嚼する。


以前はあたしが狩った獲物を取り上げようとする奴等がいたけど今はいない。


みんな死んであたしの腹の中に収まっている。


だから少しぐらい音を立てて食らっても横取りされる心配は無い。


胴体と頭の肉を骨ごと食い千切り咀嚼して飲み込む。


最後に残った尻尾をチュルンと啜り込んで手や指の血や油を舐めとりお食事タイムが終わる。


あ! また全部食べちゃった。


誰に教わったか忘れちゃったけど、獲物の肉をほんの少し残しておいて次の獲物を狩る餌にするようにって言われたんだっけ。


でも残さなくても次の獲物が近寄って来る音が聞こえて来た。


今食べた獲物の血の匂いに誘われて、不用意に近寄って来た奴に飛び掛かり頭と胴体を押さえつけ頭を力一杯捻る。


ゴキンって音がして獲物は静かになった。


今一匹食べたばかりだからこれは塒に持って帰って後で食べようっと。






核戦争が始まった時、偶々地下深くを走る地下鉄に乗っていたため難を逃れる事が出来た人たちの生き残りであり人類最後の1人でもある女は、ネズミの尻尾を口に咥え塒に向けて歩み去った。



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