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化物のすすめ(好きになるあなたへ)  作者: リュウノスケ
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第1話 出会い

夢を見ていた。

月の明かりがほのかに差し込み、しんと静まり返った板の間に、格子戸の影が真っ直ぐに伸びている。

僕は、右手に日本刀、左手に鏡のようなものを持ち、煙のような何かと対峙していた。

何故かはわからないが、誰かを助けるために、戦おうとしているようだった。

刀をそれに向かっておもいっきり振り下ろしたところで、目が覚めた。



僕は高2の秋、この町に移り住むことになった。

彼女との出会いは、それからひと月たったとても寒い朝のランニング、いつものコースの近所の小高い山の、公園の中にある神社の赤い鳥居のそばだった。


竹ぼうきを持ってたたずむ君は、赤と白でとてもきれいでとても...


この時、何故だかわからないが、僕の目からひとすじの涙がこぼれた。

東の空が少しずつ明るくなり始める頃、朝靄あさもやの少しかかった神社の境内、赤と白の巫女姿の白い君は、そこにひっそりと佇んでいた。


遠くに見える君は、朝靄と一緒に消えてしまいそうで...

まるで、冷たい真っ白の世界に、赤く小さく灯る燈籠とうろうのロウソクの光のように、はかない存在に思えた。

なぜだろう? 悲しいと感じたわけではなく、どこか懐かしい感じがしていた。


ほんの僅かな出来事だったので、額ににじむ汗と一緒に顔を拭ってランニングを続けた。


僕は、この時から君のことを好きになったのかもしれない。



「いってきます」

朝ごはんを手早く口の中に放り込んで、制服に着替えをすませ、履きかけの靴のまま玄関を開け、いつもの朝が始まる。


「かなた、お弁当」

おふくろが、玄関に向かってパタパタと台所から弁当箱を持ってきた。

「ありがとう」

弁当を受け取り、バックに押し込み、自転車のかごに乗せ、少し急いで通学路をこぎだす。


中学から始めた部活を転校先でも続けることにして、朝練の準備のために少し早く家を出ていた。


朝一の体育館は、空気が透明でボールをつく音がとても耳に心地よい。


トーン トーン トーン パシッ


いつものおまじない。三回ボールを弾ませてゴールに向かって放物線を描く。


カシュッ


ボールが、リングをくぐりネットをゆらす。


「よしっ」


今日はいい日だと、小さくガッツポーズをして自主練を始めた。

こんな感じで、いつもの日課をこなしながら一日が、過ぎてゆく。


「おはよう」


いつもの3人が、そろって体育館に顔を出すのはだいたいこの時間だ。

チームメイトの同級生は、僕を入れて6人いた。

中学からはじめて高校でもとりあえず続けているといった感じのゆるい感じのメンバーだった。

最初に入ってきたのは、隣町のA中学出身の天才肌のゴッケンこと、後藤。

続いて、秀才タイプのスエッチョこと、末田。

二人は、理系の特別クラスだ。

気の良い連中で、転校してきた僕とすぐに打ち解け、朝練に付き合ってくれていた。

もう一人は、クラスメイトのケンタこと、上見。

同じ中学出身ということで、家も近いらしくいつも一緒に登校してくる。


転校した学校は、進学校で部活より学業優先って感じの普通科高校だ。

部顧問の先生は、数学教師で学生時代の部活はラグビーをやっていたらしく、教師になって5年目の少し熱い感じの先生だった。


「転校してきました。 岸 かなた です。 よろしくお願いします」

「おうっ。よろしくな! 顧問の中島だ」


部活の入部届を職員室にもっていった時の先生の印象は、ホントに初心者といった感じで、うまくやっていけるか少し心配になった。


新人戦を来月に控えて、2年生中心のチームとして最初の公式戦という時期に、僕はこのチームと出会った。


ここからは、少し僕の話をしよう。


僕の父は、大の巨人ファンで、その日の機嫌は巨人の戦績に左右される人だった。

野球は素人のくせに、いつもプロ野球を見ているため、野球にはかなり詳しい。

その影響もあり、小学生のころは、地元のソフトボールチームに入って、プロ野球選手になることを夢見て頑張っていた。

体がとても小さく、体育の授業ではいつも先頭で、腰に手を当てて前に倣う人がいない位置をキープしている状態で、少しづつ大きくなった。

中学に上がる時点の身長は、130センチに満たないチビッ子だった。

何の因果か身長が物を言うこのスポーツを始めることとなったのは、大した理由ではなかった。

野球部を見学したところ、とても入れるようなまともな部活ではなく、荒れた感じの先輩たちにドン引きし、入部をあきらめた。

他に入りたい部活があったわけでもなく、なんとなく見学を続けていたところ、近所の知り合いのお兄ちゃんからバスケ部に入らないかと声を掛けられたのが、入部のきっかけだ。

なんとなく部活を始めたのは、ぼう漫画の影響で主人公が小さいながらも必殺シュートを編み出し活躍するというギャグ漫画を見ていたからというのは、人に言えないかなり軽い動機だった。


中学時代は、そこそこの強豪校でかなり鍛えられ、小さくてもそれなりにプレー出来るように育ててもらった。

チームの指令塔として、ゲームの組み立てかたを学び、このスポーツの醍醐味を教わりながら、一生懸命向き合って過ごした3年間だったと記憶している。


そんな僕が彼女の名前を知ることになるのは、しばらくしてからのことだった。

彼女の名前は、「小日向 かすみ」クラスメイトだったが、いつもクラスで空席となっている机の持ち主だった。

体が弱いらしく、学校にあまり来ていない状態で、なんとか進級できているみたいと、クラスメイトのケンタから聞いていた。


僕の家の近所の神社の娘のようで、体調の良い日は登校しているようだが、僕が転校してからしばらくの間は、一度も顔を合わることは無かった。


そんなある日、彼女が登校して来たのは、3時間目の国語の授業中のことだった。

とても驚いたことに、彼女の髪は、すきとおるような真っ白のストレートヘヤで、腰あたりまで伸ばしていた。

肌の色もおなじく白く、その白さは日本人の肌の色ではなく、本当にすきとおるような白さで一度見たら、決して忘れられない衝撃的な印象だった。

彼女は、色素欠乏症アルビノという病気らしく、生まれつき体の色素遺伝子に異常をきたしているとのことだった。

瞳の色は、薄い赤色で目が合った時に、思わずそらしてしまった。

決して興味本位で見ていてわけではない。

彼女だ。ランニングで、見かけた巫女姿と制服姿が異なることで、同一人物であることに気づくまでに時間が必要だった。

僕が瞳をそらしたことに、後悔していたことを彼女は知らない。

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