6. 死後
ここから3人称視点になってます。
読んでる人いないと思いますが一応...
「おい、起きろ。眠くはない筈だぜ」
虹太は目を開けた。
診察室を出て薄暗い部屋のベッドに横になり、何かを注射されながら顔に白い布をかけられた。ついさっきのことだ。
走馬灯は元気よく走った。麗子との思い出ばかりが駆け巡った。さよなら、という麗子の電話越しの声が最後に聴こえると、何も見えず何も聞こえなくなった。
「お前、ずいぶんと乾いてるな。自殺でもしたか?」
「そういうコースを選びました」
男は片方の眉を上げ、虹太を観察するように見た。
「色々と変な奴だな。歓迎する」
「ここはどこですか?」
「あの世さ。生前をこの世とするとだが」
オカルトには無関心だったが、少々の感動があった。
周りを見渡すと奇妙な世界が広がっていた。
空は青黒く、地面は灰色と茶色が混ざったような色をしているが、どちらにも焦点をあわせることができず、虹太は何度も目を凝らした。
その顔を見て、男が鼻を鳴らした。
「死にたてのやつは、大体そんな顔をするよ。どこもかしこもぼやけてんだ。」
「もしかして地獄ですか?あまり雰囲気が良くないんですが」
「死にたてのやつの質問だな」
男はため息をついた。
「ここには天国も地獄もない。お前次第で、天国にも地獄にもなる。
知っての通り、お前は死んで魂だけになった。魂が肉体から離れると、みんなここに来る。
これでいいか?こっちにも聞きたいことがあるんだ」
死にたての何が悪い、と虹太は思った。