4. 電話
医者に背を向け、携帯電話を取り出した。
僕の携帯は彼女から与えられたもので、電話帳には彼女の連絡先しか入っていなかった。
しばらくして呼び出し中のベルの音が途切れ、通話中という表示に切り替わった。
「あ、もしもしぃ~レイコちゃ~ん?僕ですぅ~、、、はぁいもしもしのチュー」
彼女はこんな話し方を喜んだ。
「元気ぃ~?よかったぁ、元気なレイコちゃんが好きぃ~。僕ぅ?僕は病気ぃ~、今病院から電話、、、ん?病気な僕も好き?ありがと~、、、あ、それがね?癌なんだってぇ、なんかぁあと一か月で死んじゃうらしいの、、、え、嫌?分かるぅ~僕も嫌~死にたくな~い」
医者の冷ややかな視線を背中に感じる。
「それでね?死に方が選べるらしくてぇ~、、、死んでほしくない?分かるぅ~でも僕マッキらしいの、ほらマッキだと死ぬじゃん?、、、うわぁ~そんなこと言われたら死ねないよぉ~でもさぁ、、、うわぁグッと来た、どんだけ愛しいのレイコちゃん、、、うん、分かったぁ、じゃあ死ななぁ~い、、、うん、イケると思うわ~お医者さんにき~てみる~、、、うん、じゃね~愛してるよ~、、、はぁい失礼しますのチュー」
電話を切って、医者の方を向きなおした。
「何とかなりませんか?」
「なりませんね」
視線より冷ややかな返答だった。