1. 宣告
「癌ですね」
病名とかかった使い古されたリアクションが脳裏をよぎった。
そして、いくつかの疑問が浮かんだ。
「えっと、今日が初めての診察なんですけど、そんなことわかるもんなんですか?」
「分かりますね。癌ですね」
「口の中見て、胸と背中の音聴いて、目ん玉見て、それだけで癌なんですか?」
「癌ですね。末期です」
医者はカルテにミミズを描きながら、目も合わせずに質問に答えた。
状況が好転することを願って、もう少し粘ってみる。
「僕は、あとどのくらいの命なんですか?」
「余命は、10・・・」
10か月くらいだろうか。
「いや9・・・」
9か月?
なんだか中途半端だ。
「いや8・・・」
8か月?
どんどん短く見積もられている。
「7・・・」
ん?
「6・・・5・・・4・・・」
「え、ちょっとまって」
医者がカウントダウンを始めた。
まさか、秒単位で死が近づいているのか?
「3・・・2・・・」
「こ、心の準備が」
こんな大晦日みたいな死に方は嫌だった。
走馬燈すら走っていない。
「・・・一か月ですね」
「なんだ一か月か・・・一か月?」
早くない?
「あの、そんなに早く死ぬんですか?」
「一秒よりましでしょ」
もしかしたら馬鹿にされているのかもしれないと思った。
推敲が鬼のように足りない