魔女の362日目
二日酔いになったのはいつぶりだろうか。飲みすぎて全員が倒れていた部屋は酒臭さに覆われていた。目が覚めた私は寒いのを承知で窓を開けた。朝一の風は冷たく、冷えた体には結構つらかった。そしてそれは私だけではなかった。
「ん~......シュロシル?寒いんだけど」
「我慢してくれる?部屋の匂い尋常じゃないから......」
「いいから閉めて~」
トレースが寒さで目を覚まして私に気付いた。軽く毛布を羽織っているトレースは動かずに私にいろいろ言ってきた。まだ寝ぼけているのか、それとも酔っているのか。
「あ、シュロシル起きたんだ。おはよ~」
平気な顔で自分の部屋から起きてきただろうオルウルは昨日何事もなかったかのような感じでいつも通り起きてきた。昨日一緒になって飲んでましたよね?
「今日バイトって事気付いてたんだ。良かった。後片付けはしておくから朝食食べたら行っておいで」
「......バイト?」
「あれ?忘れてた?」
急いで日付を見るとコザルダー(金曜日)だった。今日が今年最後のバイトだと言うのにすっかり忘れていた。忘れていたと言うよりも色々ありすぎて思い出せなかったの方が正しいかもしれませんね。文句言わずに準備しましょうか。
二日酔いも一瞬で外の寒い風を直で浴びると一気に眠気なども吹き飛んだ。オルウルが持ってきてくれた朝食を食べてバイトに行く準備をした。その間オルウルは昨日の後片付けをしてくれていた。
「それじゃ、行ってくるね」
「はーい。頑張ってね」
まだ寒い外に出て箒を取りだしアンラウへ向かう。今日は気温が低く、箒で飛んでいる間は凍るように寒かった。
アンラウの門が見えてくると箒から降りて駆け足で門まで近寄った。地面が雪なので滑る心配もあったが、まずは温まりたかった。
「おはようございます」
「おはよユノライさん。ほれココアだよ」
門番さんは知っていたかの様に温かいココアを入れて待って居てくれた。私はそれを受け取りゆっくりと飲んだ。体の芯まで温まるような味だった。この寒さには丁度いい温かさだった。
「ありがとうございます。温まりました」
「いえいえ、今日は冷えるからね。ずっとここに居ても寒いよ~この時期は誰も来ないからね」
「そうですよね。年明け前にここを通る人は極稀ですよね」
「それじゃ、よろしくね」
「ええ、良いお年を」
門番さんとは次会うのは来年になる。もうバイトも無いので今年は会わないだろう。というより、明日からこの門は一時的な閉鎖をするので門が閉まった状態になるんですよね。地下鉄も封鎖されてどこからも入れない状態になるんですよ。
そして寒い中始まったバイトは誰も来ること無く終わりを迎えた。門が閉まる事は分かっている事なので門外に居る人はまず居ないんですよね。だからここを通る人も必然的に居ないんですよ。これはアンラウ。ラーメンだけでなく全部共通なんですよね。最後は全員が家にいると言う名目らしいです。
それじゃ、私も帰りましょうかね。
門を出るとゆっくりと左右の門が動き始めた。もう閉まる時間なんですね。私は門が閉まるまでその場で見ていました。雪を引きずりながらゆっくりと閉まる門は止まることなく、アンラウへの一本道を塞いでいった。そして両方の壁がしっかりと閉まった時。アンラウには入れなくなった。
閉じるまで見終わった後箒に乗り我が家を目指した。まだトレース達は居るんでしょうかね。今日には帰るはずですが、まぁメルクアースが居るのでいつでも帰れますけどね。
「ただいま~」
「お帰り~!晩御飯できてるよ~」
「トレース達は?」
「まだ居るよ。明日の朝帰るみたいだよ」
「そう」
帰ってきて一度自分の部屋に行き着替えてから居間に向かった。居間に入るとまだトレース達は健在で私の帰りを待っていてくれた。
「お~お疲れ、悪いな。バイトだとは知らずに飲ませてよ」
「いや、私も気付いて無かったし私の責任だよ」
「それじゃみんな揃ったし食べようか」
去年はこの時期一人で炬燵に入りゆっくりと晩御飯を食べていた。それが今となってはこの世界を造り上げたトレースとティグリス。そして家族になったオルウルが居る。私は少し、幸せに感じた。
見ていただきありがとうございます!
残り......2日......!
バイト最後の日ですが、バイト内容は特になかったですね。誰か来てもいいかな~って思ったんですが、このバイトは人が来ないで暇で有名なバイトと言うのを押し通したかったのでそのままにしました。
さてさて、明日はトレース達が帰って、本当に最後の日常です。どうぞお楽しみください。
感想やアドバイスがありましたらコメントまで
高評価、ブックマークお願いします!
明日もお楽しみに!