魔女の340日目
昨日夢の世界に行けるようになった。あれは比喩ではなく、実際に来てしまっていた。周りにはレンガ造りの建物やしっかりと整備された歩道。歩道の上を人が歩き、車が通っていた。私の後ろには噴水があり、私はベンチに座っていた。
一見噴水だけで見ればアンラウそのものだった。けれど甘くは無かった。街並み自体違う。まず家の造り、そして一本道。私が見えている道以外、行ける道は無かった。要は一方通行だった。私はベンチから立ち上がり、夢であることを確認するために頬を抓った。
痛い。夢にはあるはずのない痛みだった。痛みがあるという事は夢ではない。そう思った方がいいだろう。でもこの場所は全く分からなかった。
仕方なく私は一本道を真っ直ぐ歩いた。ただただ歩いた。周囲の人は私に目もくれなかった。というか、私の存在自体が無いのか私を見ている人は一人もいなかった。そして歩いていて気付いた。建物にはドアが無かった。車も同様だった。
「やぁ」
横で木箱に座っている女の人から声をかけられた。年齢は20後半ぐらいで髪は長く綺麗な黒髪。そして一度見たら忘れないであろう緑の目。
「どちら様でしょうか?」
「さぁね。どちら様でしょう」
「ここはあなたの世界?」
「どうなんだろうね。私の世界なのか。それとも、あなたの世界なのか」
女の人は木箱から降りて私が進んでいた方向に歩き始めた。私もそれに付いて行くように後を追った。
「この先に何があるか知ってるの?」
「さぁね。もしかしたら行き止まりかもしれない。一度振り返ったら噴水があって、全く進んでないかもしれない、目に見えてるものだけが本当とは限らない」
私はゆっくりと後ろを振り返った。すると噴水の位置が変わっていなかった。歩いた距離的にはもう噴水が見えなくなっても良いぐらい歩いたはずだった。
「やっぱり、あなたが原因じゃない」
「何の事?」
「この世界はあなたの物。それでいいんでしょ」
「もう、それでいいんじゃない?あなたがそう思うのなら。私はその考えに否定はしないよ」
どうもしっかりと答えてくれない女性に対して少しずつイライラし始めた。けれど、そんなに短期じゃないので私はゆっくりと話しかけた。
「ここから出る方法を知らない?」
「寧ろ、ここから出れるのなら、出たいよ」
「え?あなたの世界でしょ?ならなんとかできるんじゃ......」
「だから言ったでしょ。私の世界かもしれないし、あなたの世界かもしれない」
女性の言っている事は嘘のようには聞こえなかった。本当に自分の世界ではない。けれどこの世界に居る。そして戻る方法を知らなかった。それは結構重大ですよ。私も戻れないのでね。
「ねぇ」
「どうしたの?」
女性は急に私の耳元まで顔を持っていき囁いた。
「あなたにもし、世界を変えるだけの、力があるのなら......」
「あるのなら?」
女性が口を開き、次の言葉を言おうとした時に私は一瞬意識を失いかけた。これは戻る予兆なのかもしれない。女性は続きの言葉を言ったのかもしれないが、私はその一瞬で聞こえなかった。
そして目の前が徐々に見えなくなっていった。
「最後に一つだけ......名前は......?」
「ミュ............」
私はその後の言葉を聞くこと無く、意識を失ってしまった。
見ていただきありがとうございます!
残り24日!
残り24日というのに本編から少し離脱していく、それが私です。この回の本当の意味を知るのは、いつになるのやら......
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