魔女の303日目
「トリックオアトリート」
ん?今日はまだ30日......ハロウィンは明日ですよ?まさかオルウルが間違うなんて......そんなことありますかね?
「何言ってるのオルウル。ハロウィンは明日だよ」
「お前さんこそ、何寝ぼけてんだよ。はよ目覚ませ」
「え?」
その声は完全にミオルそのものだった。と言うか、ミオルの声だった。そこはどこかの一室で装飾はハロウィンを催していた。
「......何してるの」
「ん~?ちょっとハロウィンと言うイベントに参加してみたくなって、急遽作ったってわけ」
「......?それってもしかして、この空間だけの世界を造ったってこと?」
「まぁそういう事」
ミオルは思っていた以上に強者だった。世界を簡単に作る力。そんな異常なことができるのはミオルだけだろう。
「それで?祝うって何するの?」
「食事でもしながら少し雑談でもしようよ」
「オルウルが待ってるんだけど」
「夜には返すから安心して、流石に当日に返すほどこっちも悪役じゃない」
「どの口が言ってるのやら」
ミオルはテーブルの上に並べられたケーキやお菓子を食べながらゆったりとし始めた。夜に返してれるのならと言う事で、私も椅子に座ってケーキを貰った。
「どうだ?その後は」
「ん~?驚くほど普通の生活を送っているよ。終わった数日間は少し忙しかったけど、今は前と同じようにのんびり生活してる」
「......嬉しそうだな」
「何言ってるの。そりゃそうでしょ。そういう生活を望んでいたの。平和で、たまに誰かが家に来て、いつもより少し楽しい日を過ごし、そして帰っていくといつも通りの家になる。そんな極々当たり前の生活を私は望んでいた。それが今過ごしている日常だと思うと......嬉しくもなるでしょ」
一時はどうなることかと思った。寧ろそんな平和な生活に戻れる希望すら持たなかった。多分どこかで死ぬんだろうと、心のどこか奥底で思ってしまっていた。だから今、平和な生活を送れて嬉しいのは確かだった。
「じゃあ、私も一つ聞くけど、クオルは?」
「ん?今作ってるクルムの制作中だよ」
「新しい世界?」
「ああ、俺とクオルが造り上げる最後の世界。そして平和な世界だ」
「そんな世界ができるといいね」
「シュロシルが死んだらそこに連れて行ってやるよ」
「もう一回人生を過ごすのは嫌だけど、行ってみたいな」
ミオルが造り上げる最後の世界。それを見てみたい。今いる世界に不満を持っている訳じゃない。けれど、ここまで関わってきた友達の世界を見ないで終わるのだけはしたくない。そう思った。
「それじゃ、私もう帰るね」
気付けば長話をして、テーブルの上のお菓子は全て無くなっていた。中々話さない相手だと妙に会話が弾んでしまうのは悪い癖だが、後悔はしていない。
「流石に話しすぎたな。明日の朝に目が覚めるかもしれん」
「そう。まぁ私も話過ぎたのが悪いし、オルウルには私から説明しておくよ」
「悪いな」
「別に、今日は楽しかった。ありがと」
「おう、暇になったらいつでも来い」
「次会う時は新しい世界ができてから行くとするよ」
私が帰った後この一室の空間は消えてしまうのだろう。それが少し寂しく感じた。けれど、この世界が消え、二人が作っている世界を見たくも思えた。
そんな事を思いながら私は目を閉じた。
見ていただきありがとうございます!
今回はハロウィンの前日という事で、ミオルが誘った回でした。新しく作っている最後の世界クルム。作者も見てみたいです......
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