魔女の280日目
アラームで目を覚ますなんていつぶりだろうか。今回の戦争が始まる前だから相当だろう。もう動けるかと思い手を動かしてみるが、全く動く気配はしなかった。
「起きた?」
「うん。でも、今日も動けないっぽい......」
「やっぱりか~」
「やっぱりってことは、分かってた?」
「うん。今アルエファが来ててね。色々話してたの」
アルエファが来ていたのか。昨日はティグリスと言い、明日は誰が来るんでしょうかね。
「呼ぶ?」
「うん。お願いしていい?」
「分かった。ちょっと待っててね」
オルウルは急ぎ足で階段を駆け下りてアルエファを呼びに行った。
「あらあら、今回の主人公が無様だね」
「何も言い返せないのが悲しいな......」
実際この様は結構辛いものがある。本当なら今すぐにでも動いてアンラウに行きたい。そして全員が無事なのか確かめに行きたい。
「まぁ、辛いのはシュロシルだけじゃないから......安心して」
「......ごめん」
自分の事に集中し過ぎて忘れていたが、エルエネは死んだ。これは確かな記憶だった。私がミオルの世界を消して、エルエネを消してしまった。消すというより、見殺しにしたと言う方が正しいのだろう。
「私がこんなこと聞くのもあれだけど、もう一度、呼べないの......?」
「本当に、過去の魔女にそっくりだね......」
「え?」
アルエファが動けない私の体の上に乗ってきた。そしてナイフを取りだし、思いっきり振りかぶった。
「ちょっと待ってよ!」
「......冗談だよ。本当にすると思った?」
その目は冗談じゃなかった。きっと途中まで本気だったのだろう。アルエファはナイフをしまった。
「大丈夫。親しい人が亡くなるのは良くある話だからさ。なんなら、1人の犠牲で全てが終わったと思えば......」
「違う!エルエネを犠牲にする意味なんてなかったんだよ。ちゃんと全員助けれた。でも、時間がなかった......」
「もういいの。それが人生だからさ」
「......ごめん。本当にごめん」
『ごめん』以外の言葉が頭に浮かばなかった。私が殺して、私が生きてる。そんな状況を創り出した。私が悪い。
「本当の事を言うよ。シュロシル」
アルエファは落ち着き、椅子に座り、足を組んで語り掛けた。
「私はね。このオルニアの世界で最初に生まれた魔女。生命の魔女。その名から、自分の生命の時間さえも動かせるようになった。それで、今まで生きてきた。出会いも、別れも、全てを経験してきてる。誰よりも......その時間はトレースとティグリスと同じとも言われているほど。これが真実だよ」
アルエファは私の目を見てしっかりと話した。その言葉に嘘一つ無いだろう。そう思えるほど、真剣に話してくれた。
「あなた達の喧嘩は最初から見てたの。でも、今回の様な事になるなんて、想像もしてなかったし、そうなったら止めるように言われてたからね。だから、今回の件は私もかなり悪いの。だから自分だけを責めないでね。なんだったら、私を責めてもいいよ。こうなったのは全部知ってて放置した私の責任だから......」
「責めないよ。すべてがアルエファのせいだとしても、私は責めない。どれだけアルエファを責めても、今回の件は消えないし、実際に起きたこと、そして終わった事なんだから、振り返らなくていいよ」
「本当に、誰かさんに似て優しいんだね『魔力補給』。これで明日には動けると思うよ」
アルエファが使った魔法は治癒時間を短くする魔法だった。本当に親切な魔女だ。こんな魔女を責めたら罰が当たるだろう。
「それじゃ、私は2、3日ここに住まわせてもらうよ」
「どうぞごゆっくり、開いてる部屋あるから適当に使って」
「ありがと、それじゃ、お休み」
「私は寝る前提なのね。お休み」
「眠りの魔女は寝てなんぼでしょ」
見ていただきありがとうございます!
また台風が接近してきましたね。皆さん本当に気を付けてくださいね!今年は本当に台風が多くて困りますね......
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