魔女の217日目
今日はシュロシルvsトレース!
目が覚めると昨日と同じ部屋にいた。覚えている範囲内ではみんなと話した後飲んだくれてもうそのあとは覚えてない。けれど楽しかったことだけは鮮明に覚えていた。
「ほ~やっぱり酒には強いようだな。あれだけ飲んで寝たら治るって......普通じゃあり得んぞ」
私が起きたのを素早く感知して飛んできたのかというほどいいタイミングで部屋に来たものだ。
「昔からこんな感じなのさ。多分魔女の副作用でしょうけど、ほかの魔女もそうでしょ?」
「そうだね。基本的に魔女は酒に強いね。一人を除いて」
「あ~レイレアナさんかな?」
「最近魔女になったばかりでまだ箒に乗る段階だがな。それでも成長はしてきてる」
「お~努力してるんだ。さすがだね」
「さて、シュロシルも起きたことだし行こうとするか」
「どこに?」
「私からの誕生日プレゼントだよ」
そういえば言っていましたね。明日渡すだとか何とか。もう貰うものなんて何もないですよ。昨日ので結構なんですけど、何なんでしょうかね?
目隠しをされてそしてそのまま家のその外に出た。そこからは「しばらく歩くよ」とだけ言われた。それにしても奇妙だった。何が妙何かと言うと外だというのに他の人の声が一切ない。少し聞こえるとかそう言うレベルではなく本当に何も聞こえない。本当に誰もいない状況。言わばクオルの作った世界にいるような感じだった。
そして段々と歓声が沸き上がってきたのが分かった。無音だった何もなかった空気が急に大勢の人で掻き消されるような重圧感。どこにいるのかさっぱり見当がつかなかった。
「それじゃ目隠しを外していいよ。最初は驚くだろうけど、すぐ慣れるから」
トレースに言われたので目隠しを取った。するとそこは闘技場のど真ん中だった。周りには大勢の観客。多分フィン全体から来てるので無いかと思うほどの大人数。
「どうなってるの?」
「これが誕生日プレゼント。今から私と戦ってもらうよ」
「何あほなこと言ってるのさ」
「観客には私が勝つかシュロシルが勝つか賭けてもらってる。勝ったほうに2倍負けた方は1倍とまぁ遊び感覚でできるようになってる。因みに賭けていい金額は無限にした」
「私の意見はスルーなのね......てかそれって絶対に破綻しないやり方じゃん。大丈夫なの今後の事とか」
「まぁその辺は大丈夫だと思うよ。ティグリスが何とかしてくれるし」
「てか、これ私に入れる人いるの......絶対勝てないじゃん」
「そういうと思ったから破壊の魔女出していいよ。体力の保証はする。最悪の話『不老不死:死の白夜』だしても問題はない。この闘技場は終わった後今の状態になるようになってるから」
「......なるほどね」
「ルールは簡単。相手を殺すかギブアップと言わせるだけ。まぁ死の白夜なんて出されたら勝ち目無いけどね」
「わかった。面白そうだし乗った」
ここでやめたら私に賭けてくれた人に失礼だし昨日あれだけ祝ってもらったんだからそのお礼としてこの試合は勝たせて貰おう。
「トレース。勝たせてもらうよ」
「どうぞどうぞ。出来るならね。それじゃこのコインが床に落ちた瞬間スタートで」
「わかった」
トレースはコインを大きく上にあげた。そしてコインはゆっくりと落ちて行き、地面に反射した。
「まずは先手必勝。『 』」
「おっと、これは危ない破壊の魔女になるのね」
初手の『 』はやっぱり避けられるか。まぁ予想はしていたけど、一筋縄ではいかない相手だよね。
「さーて、やろうかトレース」
「あんたには負けないよ破壊の魔女」
次どちらから仕掛けるか。少しの間が開いた。ここからは慎重に行かないと死ぬ可能性も出てくるだからと言って攻撃しないわけではない。
「来ないならこっちから行くよ。『自然の導き』『世界の鼓動』」
「えー、それ知らない」
「そりゃそうでしょ。新作だよ」
自然の導きはあらゆる未来を見えるようになる。そして世界の鼓動は微かな音でも聞こえるようになる。小声で技を言われても大丈夫なように対策の上、不意打ちを防ぐ。初手はバフ。
「変化が無いってことは強化系なのかな。んじゃ、次はこっちから『震王』」
「絶対揺れるじゃんそれ!」
案の定地面は揺れ始めてバランスが取りにくくなった。この状態で迫られたら絶対に退く気がするな......
そう思っているとトレースはナイフを持ってこちらに近づいてきていた。まぁそりゃそうだよね。
「さーて、剣技は得意じゃないんだけどな。『奇妙な剣』『複製』『浮遊』『落下』」
奇妙な剣が沢山トレースが向かってくる道中に設置された。私に近づけばすべて落ちてくるようになっている。これで近づいては来れないはず......まぁ来なかったら来なかったらで対策はあるんだけどね。
軌道をずらしてトレースの方に目掛けて飛ばす。勢いは弱めず殺しにかかる。
「へ~そんなことも出来たんだ。けどその量ちょっとやばくない?『王止』」
向かっていた剣が全て止まった。ピクリとも動かず空中で剣が動きを止めた。
「厄介な技使ってくるね。流石トレース」
「そういうシュロシルだって本気で殺しに来てるじゃん」
「だって勝利条件それじゃん」
「否定はしないけどね『睡王』」
「やば」
急な眠気に襲われた。ちょっとまずい。これで行動不能になるのが一番やばい。
「焦らなければ何事にも対応できる。そうやって闇の魔女に勝ったんだよ。『夢の支配者』」
「それで何ができるの?」
「簡単に言うと脳は寝てても体は動くし考えることができるって感じかな。一応脳はこれでも寝てるんだよ」
「なにそれ......人間?」
「魔女だよ。『白紙撤回』」
「あーそれ使われたか」
これで全てがもとに戻った。文字通りのすべてが戻ってしまった。まぁまだ始まったばかりだ。策はまだ残ってる。
「まだまだ行くよ『爆破』」
爆破の成功率は極めて低いが脅し程度にはなるだろう。そう思っていたが本当に爆発したのはトレースの目の前で本当に威嚇程度だった。
「接近戦で来ないの?結構接近戦好きなんだけどな。この春夏秋冬の掟。強いよ」
「名前からして強そうだからやめておくよ。剣使えないし魔法で対応する」
「そう。じゃあそろそろいいかな『束王』」
その瞬間動きが止まった。そしてトレースが異様な速さでこちらに近づいてくる。多分あちらもわかっているのだろう。束王を破れる技は一つだけ。そしてそれを束王を使った瞬間使ってくることを。
「いいよトレース。知っててもそうするしか術がない。そうやって前進するのは良いと思う。だからそれに応えるよ。『不老不死:死の白夜』」
トレースが首元ギリギリの所でトレースの持っていたナイフを取り真逆の方向へ投げた。そして勢いの余ったトレースを膝蹴りして思いっきり吹き飛ばす。
「はは。それが死の白夜。束王破るなら本当に勝てそうにないな......」
「面白いこと言うな。まだ出てきたばかりだぞ?俺を楽しませてくれよ」
「あんたが出てくることは予想内だから安心して少しは楽しませれるよ」
「どこまで持つかね『分裂:左腕』」
「は......?」
気付いた時には遅かった。トレースの左腕は綺麗に無くなっていた。いや、分裂していた。
「これで行動力は少しは減ったか?」
「ご生憎様。昔は左腕なんて無かったもんで、痛くも痒くもないよ」
「へ~。相当な修羅場乗り越えてきたみたいだな。でもダメだ『極悪の檻』」
私、いや死の白夜の魔法で一切トレースは身動きできない状態になった。トレースは驚いた表情をしていたが、どことなく冷静だった。
「私の束王よりも強いね」
「当たり前だろ。あんなちっぽけな技で止められると思うなよ」
「そうだよね。でも、そろそろ敗者の気持ちを味わえたからここからは本気で行くよ」
「初めからそうしてくれ」
「戯言は死んでから言ってね。さーてやりますか。『竜驤虎視』」
トレースはその場から死の白夜を睨んだ。それだけで死の白夜は動くことができなかった。いや、体が動こうとしかなかった。動いたほうがいいのに、一切体が動かなかった。
「どちらも動けない状態か。面白いな。この後はどうするんだよ!」
「私が動けないなんていつ言った?」
「んだと?」
トレースは極悪の檻なんて軽く無視して死の白夜の前まで行った。
「これが差ってやつだよ」
「は。おもしれえな。んじゃま。そろそろ終わりにしようか。この近さなら範囲内だろ『リスタート』」
「範囲内......?」
「ごめんねトレース。それで範囲内なんだわ『 』」
「このままで終わるわけないでしょ。『反王』」
その瞬間無に飲まれた。二人が無に飲まれてどちらも姿が見えた時には勝負が終わっていた。
「......同時に死んだ?」
「そうっぽいね」
結果は引き分けだった。長い長い戦いはこれで幕を閉じた。賭け金は引き分けの場合1.5倍になるらしく私も賭けておけば良かったと思ったり思わなかったり......
「おつかれシュロシルどうだった?」
「やっぱり戦闘は苦手だわ」
「それはあなたの感想できっと破壊の魔女や死の白夜の言葉じゃないでしょうね」
「だろうね。あの2人はどっちも戦闘好きだから仕方ないよ」
「間違いない。久しぶりに面白かったありがと」
「こちらこそありがと」
見ていただきありがとうございます!
なんと今日は4000字と奮発しました!作者の誕生日なので文字数も多めで一番やってみたいことをやりました!シュロシルとトレースどちらが強いのか。次やるときは引き分けなしの勝負がいいですね。
感想やアドバイスがありましたらコメントまで
高評価、ブックマークお願いします!
明日もお楽しみに!