魔女の154日目
一度目を閉じてもう一度開くとそこは現実世界だと思っていた。
と言うか、夢とはそういう物だと思っていた。けれどそれは完全に私を裏切った。
目の前には『手』があるだけ。それは無意味である割には必要な物だと昨日知った。
「ねぇ。動かないでね」
私が『手』に触れようとすると、その動いた分だけ『手』も一歩下がる。
「......いい加減にしろよ」
少し腹が立った。目を閉じて開けたら夢が覚めるもの。夢だと分かった瞬間現実に戻れる物だと思った。けれどそうで無かったことに腹が立った。何よりも『手』に腹が立った。
『動きを止めよ。我が指示するまで動くな』
相手の動きを止める魔法。これで止まるとは思ってもいない。『手』に一歩近づくと一歩下がられた。一切魔法は効いていない。
「見つけた」
その声が聞こえた瞬間後ろから何かが飛んできた。多分刃物系だろう。私はそれを咄嗟に避けた。
「危ないんだけど」
「ん~?あ、居たの。ごめんね。俺その『手』狙いだから」
「この『手』について知ってるの?」
「あー?説明受けてねえのか」
「説明?」
「どうせ『手』を発見したところで触れねえし、教えてやるよ」
「それはどうも」
「この世界は夢の世界だ。そしてあの『手』に触れればこの夢から覚めることが出来る。それ以外にも覚める方法はある。外部からの大きな音。外部って言うのは寝ている自分な。要は現実世界だよ」
「他には?」
「もう無いよ。それ以外に起きることは不可能ってわけだ。1人暮らししている俺はあの『手』を触らない限り起きられない」
私が起きるとすれば、アラームの音以外に可能性が無い。もしかしたらアラームが聞こえた時にオルウルが止めた可能性がある。それで起きなかったのか。
「私はまだ起きる可能性がある。起きた時にあなたを起こしに行く」
「意味がねえよ。起きたらこの時の記憶は消える」
「大丈夫。私は覚えていたから」
「会話の内容もか?」
「......」
「まぁそうだよな。これも一応夢なんだ。無理はねえ」
「一応教えて」
「ラーリトルのシヴル(南)にある一軒家だ。もうこの世界に来てから1週間は経過してるだろう」
「それってさ......」
「ああ、現実の俺が死ねばこの世界からも消えるだろうな」
「あの『手』に触れないと......」
「それができりゃ苦労はしねえ」
辺りを見渡して他に起きる方法を探すが、辺り一面暗闇だ。今喋っている彼の顔すら見えていない状況だ。
「あ......」
「なんだ?」
「起きれるかもしれない」
「なんだ。良かったな」
「いいのか悪いのかわからないけどね。一応名前聞いてもいい?」
「どうせ忘れるよ」
「いいから」
「士郎、羽衣 士郎だ」
「わかった。次は現実で会おうね」
私は再び目を閉じる。私を呼んでる声がした。それは知らない声だったが、この夢から覚めるのには丁度いい大きさだった。
見ていただきありがとうございます。
ネタ切れじゃないです。ちょっとこの世界を楽しむのもありだと思ってきました......別な世界観面白くないですか?
感想やアドバイスがありましたらコメントまで
高評価、ブックマークお願いします!
明日もお楽しみに!