魔女の153日目
この感じをよく覚えている。暗闇の中で目の前に『手』がある状況。
またですか......周期的に早くないですか?つい最近来たばかりじゃないですか。
「もう起こしてくれない?」
以前『手』は喋ったが今回は何も言わない。ただあるだけの『手』に過ぎなかった。
正直起きようと思って起きれたら苦労しない。そしてはっきりとこの感覚がわかるようになってきた。慣れって怖いですね。
しばらく『手』を見ていると後ろからカンカンと足音が響く音が聞こえてきました。私が歩いた時は足音なんてしなかったのに。
その足音は徐々に近づいてきて、足、体、手、首......までが見えた。けれどそれ以降は見えなかった。
「これ、私の夢なんだけど。誰」
「あなたの夢でもあり、私達の夢でもあるんですよ」
何を言っているか全くわからなかった。最近の夢は何かとすごい。
「まぁいいや。あなたは話してくれるのね。それじゃここからの出方を教えて」
「そんなの簡単ですよ。あの『手』に触れればいいんです。そのために私は来たんです」
「......あなたは誰?」
この夢の全てを知っているかのように発言した。それに疑問を抱いた。
「それさえも『手』に触れればわかる事かと」
「あっそ、でもあの『手』触れないよ」
「ええ、触れませんよ」
「じゃあどうやって?」
「どうもこうも無いんですよ」
一体何が言いたいのか。私には理解できなかった。けれど理解できてしまった。出来ることなら理解したくなかった。
彼はこう言いたいのだ。どうやっても出れないと。
「いつになったら目が覚めるの?」
「質問だらけですね」
「だって、詳しそうじゃん」
「否定はしませんよ。確かにこの場所に何度か来てますし、あなた以上に来ていると思いますよ」
「それであって、出方は分かるけど、出たことが無いと」
「ご名答」
ここにきてしまったらすることは無いと言う事。そして自ら起きることも不可能。『手』を触る事さえ無理。
「あ、私はもう時間みたいです。またお会いできるのを楽しみにしております。それでは」
「え、ちょっとまって、時間って何!」
頑張って聞こうとしたが、消えるスピードが異常ですぐに消えてしまった。
時間とは何か。そんなものない。
それでも彼の言ったことは分かったかもしれない。
家のアラームの音が聞こえたような気がした。そして私は『手』に向かって言った。
「悪趣味だね」
そしてそれに反応したかのように答えた。
「それはお互い様だよ。××の魔女」
その言葉を聞く前に私はこの場所から消えていた。
見ていただきありがとうございます。
6月の作者のイベントが多すぎて本当に文字数が少なくなると思います。7月以降は何も無くなるのでしっかり書けると思いますよ。
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