4 召喚された理由
中央の玉座に40代後半の渋いおじ様が座り、その左右に玉座より少し小さな座に女の人と20才前後の男が座っている。女の人の横に僕達を案内して来た王女様ともう一人少女が立っている。その周りに簡易の鎧を着た騎士風の男達とローブを着た老人に数人の恰幅のよい男達。
「勇者達よ!よくぞ、我がインシュアランス王国の召喚に応じてくださった。ありがとう!私は国王レグレス=インシュアランス。そして無理矢理の召喚に謝罪させていただきたく」
そう言うと立ち上がり頭を下げてきた。周りにいた者達も頭を下げる。
ここは、インシュアランス王国の王城の謁見の間だ。そして、目の前にいるのは先程名乗っていたとうりこの国の王様で左右にいるのはお妃様に王子。そして王女様達、この王国の重鎮達というところだろう。
僕達は今朝、第二王女アリアーゼ=インシュアランスに案内されて国王の別邸から王城に来ているのだから。そして王城はまさに別世界だった。テレビの特集とかで見るような外国のお城そのもの。いやそれ以上だ!城内の天井には宝石がちりばめられた様なシャンデリアありません甲冑や絵画の掛かった廊下等、元の世界では見る機会なんて絶対ないだろうからな!圧巻だった!クラスメイトも同様らしい。口をあけてポカンとしているヤツまでいる。陽介だった。他数名(女子含む)。
そして、謁見の間へ案内されて冒頭へと。
「いいえ!頭を上げて下さい。とりあえず説明をお願いします!」
朝霧先生が国王に説明を求める。
国王の説明について要点をまとめると、異世界召喚物によくある魔王討伐ということだ。
この世界は、人間族を始め獣人やエルフといった亜人族と少数の魔族が暮らす南大陸と魔族が治める国がいくつかある北大陸の二つに分かれいる。
その北大陸の魔族の国の一つが突如他の魔族の国を侵略し一大魔族国家を作ってしまった。だが、北大陸だけでは物足らないらしく南大陸にも侵攻してきている。
北大陸から魔族の侵攻を受けているいくつかの国があるが、それらの国はかつて北大陸の国と貿易をしており親交がある国もあった。しかし魔族の侵攻によって貿易の拠点は占拠され、多くの人間族や亜人達が捕まり奴隷にされたり魔族に洗脳されその国を攻めているらしい。最悪なのは魔族に寝返る者がいるということだ。
その為、国に不安を感じる国民が他の国へと移り住む者が後を経たず結果、このインシュアランス王国を始め他の国でも難民が溢れて問題になっている。また、難民が盗賊になったりと治安面等の問題も起こっており魔族の侵攻と難民問題解決の為の会議が国々のトップで行われた。
その結果、南大陸の南端にあるインシュアランス王国で勇者召喚を行い、勇者達に訓練をして魔族との戦いに参戦してもらい、南大陸から魔族を追い出す。その後、北大陸に向かい連合軍と協力して魔王を討伐してもらうという内容だった。
話の内容を聞いて、なんとも身勝手な話だと思った。戦争で難民が問題になるのはテレビで知ってはいるがこの世界のことに異世界の人を巻き込んでほしくはない!
「すみません。まず先に元の世界に帰ることは出来るんですか?」
山口 卓巳が国王に質問している。目立つのが嫌いなのに珍しい光景だ。みんなの視線が国王に向けられる。
「いや申し訳ないが帰還の方法が記された古文書はすでに失われており、帰還の方法はわからん‼しかし1500年程前にも勇者召喚は行われたており使命を果たした勇者達は北大陸から帰還したと伝承にはある。もしかしたら北大陸には帰還についての古文書か文献が残っておるやもしれん‼」
クラスメイト達から落胆の表情がうかがえる。
今度は東絛が国王に質問をする。
「僕達は戦争なんてない世界から来ました。人を傷付けるのも、ましてや生き物を殺すなんてしたこともありません!戦う力のない僕達では役にたちません」
「そうだ!そうだ!」
数人の男子生徒が同意の声をあげるが、国王や周りの騎士達に睨まれて黙る。『情けない』と思いながら何の力も無い学生なのだから仕方ないとも思う。
ローブを着た老人が
「失礼ながら、陛下その質問には私めからお答えしてよろしいでしょうか?」国王の返事により、
「私は筆頭宮廷魔導士のローグ=グシアラスという者だ。それならば心配はいらん。召喚された勇者には特別な能力が備わっていると伝承されておる!」
「ちょっと待ってください? たとえ戦う力があったとしても私は生徒達を危険な目に遭わせることは出来ません‼」
朝霧先生が抗議の声を荒げる。それに対して東絛が、
「しかし先生!僕達には他に選択肢がありません!もし戦う力があるとしたら僕はこの世界の為に戦いたいと思います!
そして、それしか僕達が元の世界に戻れる方法が無いのなら⁉」
「しかし、・・・」先生が反論しようとすると
「そうだな!それしか方法がなさそうだ‼陽輝がやるなら一緒にやってやるぜ!!」
東絛 陽輝の幼なじみの安藤 大剛が同意を示し、クラスメイトの大半がやる気をしめしだした。こういった流れになると最早止められない!そしてこの瞬間クラスの指導権は無意識の内に朝霧先生から東絛に移ってしまったのかもしれない?
『おいおい‼たぶん分かって無いだろうな⁉これは小説やアニメじゃないから、実際に命の危険があることを!近い内にどうにかして義姉さん達を連れて抜けないといけないな!!』
「国王様。わかりました‼僕達に戦う能力が有るのならば戦いましょう。どうすれば能力があるか分かりますか?」
「うむ。ではステータスを見せて貰えるかの?《ステータスオープン》と唱えると周りに見えるようになるのじゃ!」
「わかりました!よし皆いくぞ!」