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白い部屋での再開

 白い空間のなかで龍牙は意識を覚醒させる。

 目の前には、白いドレスを着て金の髪の女性がいる。

 龍牙はその女性に見覚えがある。いや、見覚えがあるレベルではない。良く知っている女性だ。忘れるはずがない女性ひとだから。なぜなら!!

「まさか·········母さん!?なのか?」


「久しぶりね!龍牙‼」

 優しい声。懐かしい声。龍牙は涙を流していた。本人は気が付いていないが。

「どうして?死んだんじゃなかったのか⁉」


「龍牙、時間がないから手短に話すわね」

「時間がない?」

「ここは次元の狭間よ。あなた達は異世界に所謂いわゆる“剣と魔法のファンタジー世界”に勇者召喚されようとしているの。こういった機会でもないとあなたとお話出来ないから、女神様にお願いしたの‼」

「勇者召喚?女神様?」

「そう女神様にね!」ブイサインをする母さん。

「まず、分かっていると思うけど私はすでに死んでいるわ!ここにいる私は魂だけの存在なの。私が死んだ後のあなたのことが心配だから守護霊となって見守っていたの」再びVサイン。

「だから、あなたのHな本の隠し場所やパソコンの中の見られたくないフォルダのパスワードとか中学時代の黒歴史も知っているわよ‼うふふ‼」

「うっわ~·········」(そういえば母さん、こんな性格だった~)僕の絶叫が響きわたる。しばらく叫んだ後、なんとか立ち直った僕を母さんは、微笑みながら

「さて、話を戻すわね。本来ならあなた達は、この空間をただ通過するだけで女神様から祝福ギフトを授かり召喚先に転移するのだけれど、その召喚先があなたにとって問題なのよ」

「僕にとって問題?」

「そうなの、召喚先は私の故郷ふるさとなの‼つまり私は異世界からお父さんの世界に転移してきたの!」

本気マジですか?」

本気マジです!あなたには二つの世界の血が流れているの!そして勇者召喚を指示したのは、私を転移させたお父様の弟である叔父様なのです。しかも今は国の王に収まってるようなのです。お父様の子は私だけだったので、私が行方不明になり後継者がいなくなったことで意気消沈しやまいになったお父様から王位を簒奪さんだつしたらしいのです?!」

「ちょっとタイム。母さん、王女様だったの?いつ記憶が戻ってたの?どうして叔父様が母さんを転移させたとか、王様してるって知っているの?」

 話の内容が内容だけに僕は、プチパニックになり母さんに質問をした。

「そうよ!王女様だったのよ(ブイ)。記憶はあなたが3つ位の時に思い出したわ。まあ、その時はお父さんとあなたがいたから。こっちの世界での生活の方が長ったし。それに帰る方法もなかったのよね‼スキルは何故か言語理解しか使えなかったみたいなねよ。後は死んだ後に女神様に聞いたから!それであなたの守護霊にして欲しいとお願いしたの」

「なんで守護霊なんだよ?」

「龍牙の成長を見守りたかったから!それに面白そうだから!」

「ちょっと待って!なに、面白そうって」

 僕が突っ込もうとすると、スルーされて

「その話はおいといて!こちらとあちらの世界では時間の流れが違う様なの?私が転移してからまだあちらの世界では数年しか経っていないらしいのよ?つまり私にあなたのような子供がいるとは考えられないけど、私の子供だとばれたらあなたの命に関わるのことなの。それともうひとつ、龍牙が持っている形見のペンダントは誰にも見せたらダメよ!あれは私のお母様の形見なのです!見るものが見れば私の物だとわかるでしょうから。王家の紋章も入っているしね(ウインクする母さん)。ばれたら出所を追求されて、大変な事になると思います!だから用心をして出来れば早めに国を出て欲しいのよ」

「母さん、異世界召喚キャンセルに出来ないかな?」

「良くわからないけど、世界のシステムらしいので女神様でも無理だということらしいわ。だから頑張りなさい」

「ふぅ‼解ったよ!注意するよ」


 返事をする間に僕の体が透けるように薄くなっていく。

「そろそろ時間のようね。最後に私が持っていたスキルをあなたにゆずるわ。あなたの能力ちからになるはずよ。そして結ちゃん、樹理ちゃんやあなたの大切な人を守りなさい」

「あぁ、わかった。守ってみせるよ。約束するよ!」

 僕は涙を流しながら返事すると母さんは、

「最後に。あなたのパソコンに入っている料理のレシピや見てはイケナイ動画、他諸々(もろもろ)スマホに移して置いたから!それとこれから行く世界は一夫多妻制だから。母さん、孫は多い方がいいな~」


 母さんの最後の言葉に何か言おうとするが、笑顔で手を振る姿になにも言えなくなり、意識は再び薄れて行った。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 どこらかともなく現れた銀の髪を持つ美しい女性は、

「行きましたか?」

「はい、ありがとうございました。女神様」

 次元の狭間にいる神の一神ひとりで龍牙の母を守護霊にした女神であった。

「ところであなたは行かないのですか?守護霊なのですからいっても構わないのですよ」

 女神の言葉に驚いて

「えっ!?行ってもいいんですか?」

「ええ!ただし今までと同じで見守る存在ですが!」

 龍牙の母の質問に女神は答える。

「かまいません。龍牙の側にいられるなら。ありがとうございます。女神様」

「先程も言いましたが、見守るだけです。あなたは分かっているとは思いますが龍牙が向かう世界は今までの世界と違い命が軽く危険が多い世界です。もし龍牙に命の危機が訪れても見守ることしか出来ません。つらい想いをするかも知れません。覚悟はして下さい!」

 女神の真摯しんしな忠告に、

「わかりました。ありがとうございます!」

女神に頭を下げながらそう返事をして、龍牙の母は息子の後を追って行った。


龍牙が母が守護霊として付いてきたのを知るのは、まだ少し先の話である。

誤字等教えて下さい!

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