二話、千早暴走!武頭痛!橋本絶好調!
横須賀港・日本海軍駐車場
「それで、俺のランエボでコスプレ歌唱大会に行くと…。」
「うん!」
「また秋葉原まで行けか…。」
どうやら、〝また〟秋葉原に行くようである。秋葉原といえば、オタク文化の聖地とも言える名所だ。秋葉原はこの物語でも変わらないようだ。
「お?お前達!何をやっているんだ?」
するとそこへ上官である橋本が駆け寄る。
「あ、砲雷長…」
「いや、プライベートは名前で言って欲しい。」
「分かりました。では、橋本さん、どうしましたか?私達は秋葉原に行くのですが。」
「奇遇だな?私もだ。」
「え?」
「え?」
二人は目をキョトンとさせて、橋本を見る。
「なんだ?意外か?」
「はい…。」
「はい…。」
「そうか…、まあいい。秋葉原まで頼む。」
「了解です。」
武はとりあえず了承して、橋本の荷物をトランクに入れる。
「ん?真田、今更だがS2000じゃなかったか?」
「前の上陸日で車検と整備に出しましたから、これは代車…みたいなような名状しがたいランエボです。」
「そうか。」
武の意味不明瞭な説明に、何故か納得してしまっている橋本が居た。
なんやかんやで、武と千早と橋本を乗せたランエボは、東名高速道路を使って秋葉原へ行く。
東名高速道路多摩川付近・ランエボ車内
「しかし、つくづく思いますよ。橋本さんはパブリックとプライベートじゃあギャップが激しいって。」
「あ、私も!初めてその現象を見た時、「あれ誰?」って言った!!」
「俺もだぜ?あの時の千早は、一瞬御馬鹿キャラが抜けていたからな。」
「うー。何よー。ブーブー!」
「そうか!そうか!アッハッハッハッハッ!!」
…意外にも和やかな雰囲気が漂っています。
「しかし、秋葉原に何の用なんですか?」
「そういう西園寺はどうなんだ?結構嬉しがっていたが。」
「今日は秋葉原でコスプレ歌唱大会があるのです!私はそこへ参加するのですよ~♪」
千早は相変わらず、腰をクネクネとしている。シートベルトのおかげで、あまり動けてないが…
「ほう、私もだ。」
「え?」
「…え?」
「ええええぇぇぇぇぇぇ!!」
「ええええぇぇぇぇぇぇ!!」
「そんなに意外か?」
驚愕する武と千早に、橋本は首を傾げた。
「だ、だめだ…今の俺では現実を直視出来ないかもしれない。」
「わ、私より強者が居た私より強者が居た私より強者が居た…。」
武と千早の処理能力を完全に凌駕した為か、意味不明な言動をした。尚、武はそれでいてしっかりと運転出来ている。
一時間ぐらいで秋葉原に到着して、有料駐車場にランエボを駐車する。
「さて、調整でもするか。」
武は自前の一眼レフカメラを取り出して、調整をし始めた。
「…今日は大丈夫だな。」
「機械式か?」
機械式の一眼レフカメラに興味を持った橋本。
「はい、爺さんから譲り受けたカメラです。昔のものなのに、デジカメと遜色無い位の写真に出来上がるんですよ。」
「ほう。余程性能が良くて精度の良いカメラだな。そうだ!私が歌うところとかを取ってくれ。」
「分かりました。今日は楽しくなければ…。」
三人は秋葉の更衣室へと向かう。尚、武は一旦別れて代理でコスプレ歌唱大会の手続きをするため、コスプレ歌唱大会運営テントへ足を運んだ。
コスプレ歌唱大会運営テント
「こんにちは。」
「こんにちは!今回もチハタンの歌と踊りが見れるかな?」
「見れると思いますよ?あと、この人も頼みます。」
武は橋本のエントリーシートを運営の人に渡す。
「!?」
「どうしましたか?」
「あんた…こ、この人に直接会ったのかい?」
「ええ、職場じゃあ毎日のように…。」
「毎日!?」
運営の人は武の肩を掴んで血相を変える。
「どうしたんですか…」
「チハタンと同等の有名人物と同じ職場に居るとは…妬ましい!!」
「やかましいわ。」
運営の人が勝手に武を妬んで、武はこれに呆れる。
その後、千早と橋本がコスプレをして来ていた。
「…あれ?ユニット組める?」
何とも対照的な衣装だった。千早は、セーラー服にメイドが使うフリフリ付きエプロンを着ている。対して、橋本は、下を着物に使いそうな生地を袴風にして上は軍服のような雰囲気のある羽織を着ていた。特に橋本のは動きやすいように工夫が凝らしてあった。
「ユニットか…中々良いかもな。」
「え?」
「あ、良いかも!!」
「え?」
まさかの武の呟きにより、二人はその気になり始めた。
「あれ?俺が原因?」
「みたいだね。私としては嬉しいのだがね!」
運営の人もノリノリだ。
「…ダメダコリャ」
コスプレ歌唱大会待合室
「それで、どの曲にするか?」
「三曲ぐらいは用意しましょう!」
「じゃあ…。」
千早と橋本はすっかり意気投合して選曲をしていた。
コスプレ歌唱大会会場撮影ゾーン
「…いつの間にか、顔馴染みになってしまった。」
武はカメラをぶら下げて千早と橋本の出番を待つ。
「…。」
他の歌唱者をただただ見ている。
「…ようやく来たか。」
武が片膝をついて、カメラを構えた。
「ここで番狂わせが来た!!即効でユニットを組んだこの二人だ!!」
MCがそう言って、登場口にライトが集まる。
「皆ー!お待たせー!今日は知っている人は知っている曲を歌うよー!」
千早がマイクを持って登場する。
「皆!今日はちょっとした試みだ!」
そして、橋本もマイクを持って登場する。
[ウオオオオオ!!]
ギャラリーが沸き立つ。
「凄いな…。」
今までにない盛り上がりに、武は呆れつつも笑っていた。
「じゃあ一曲目!」
「私に出来ることってなんなんだろう…。」
「そうだ!」
「「空を飛ぶことだ!」」
前置きのような言葉を言って、曲の音量が上がる。尚、曲は読者の想像に任せるが、担当の作者は某航空魔女の第一期OPとしている。
二人は熱唱して、ギャラリーを盛り上げさせる。その後、アンコールなどで計三曲を歌い上げて、部隊から降りた。
更衣室(女子)
「今日はお疲れ様でしたー!」
「こちらこそだな!」
すっかり意気投合しているようだ。千早の愚痴は何処へやら…
その後、合流した三人はランエボに乗り込んで横須賀へ帰ることになった。
東名高速道路・ランエボ車内
「今日はお疲れ様でした。良い写真が撮れたと思いますよ?」
「そうか。楽しみだな。」
「まあ、久し振りに羽目を外したのか、千早は後ろでぐっすりと寝てしまいましたが。」
尚、助手席は橋本が座っていた。
「何、ロリ娘系の千早があれだけ熱唱したんだ。眠たくなるさ。」
「アハハハハ…確かに。」
橋本の結論に、武は苦笑して同意した。
一時間後、横須賀港・日本海軍駐車場にランエボを戻す。
横須賀港・日本海軍駐車場
「今日は本当に楽しかったな。意外に、運転が上手いんだな?」
「ええ、まあ…。」
「じゃあ、今日はここまでだ。…千早はまだ寝ているな。可愛い奴め…。」
橋本は、武におんぶされている千早を見て困ったような微笑をする。