#3.絵眠
曲がり角じゃないけどぶつかった。
さて、これからどうする?
羽遊は家の前まで来ていた。人気がない。やはり、病院にいるのだろうか。
この状況下で羽遊は、この結論に至った。
『これってテレビとかでやってる、幽体離脱ってやつでは?』
そこで羽遊の本体・・・体をさがそうと、家まで来たわけだが。
当然、体は病院に運ばれている。
「どこの病院だろうな・・。」
検討がつくはずもない。とりあえず羽遊は、近くにある蟹山医院(潰れかけ)に行くことにした。
「死んでたまるかよ・・。」
羽遊は一人、夜の町を走るのだった。・・・・・ドカッ!!
「痛っ・・・。・・・えっ?」
人にぶつかった。
羽遊はおどろきまくった。
いや、幽霊だから普通すり抜けるじゃん?それがぶつかったって事は・・・!
「あんたも・・死んだのか?」
羽遊が聞くと、
「ええ。あなたのように・・・体と心が離れたわけじゃないけどね。私、蟹山絵眠。あなたは?」
「転落畤羽遊・・・・。」
羽遊はじっくり見てわかってしまった。彼女、絵眠は9年前の女子中学生連続殺人事件の被害者だ、という事を。
だって絵眠さんの顔・・・
片目がグロテスクなんだもん!!
9年前この辺の住宅地で、15才の女子中学生が死体で発見される、という事が連続でおこった。
死体は皆、利腕の方の目を潰されているという、謎の殺し方がこの町に恐怖をよんでいた。
そういえば、蟹山医院の娘さんだかも殺されたって・・・!
「羽遊君、ホラ。私には足がないでしょ?もう体が死んでしまうと、足が消えてしまうの。」
そんな蟹山絵眠さんは、蟹山医院付近の地縛霊だという。
いや、目、怖すぎだから!他はノーマルにかわいいのにお化け屋敷なみだから!
「なんかいった?」
しかも地獄耳かい!
「いや、別に何も・・・。」
「あ、そう。でも話が出来る人と会えるなんて5年ぶりかなぁ・・・。やっぱり楽しいな、こういうの。」いままでよほど寂しかったのだろう、絵眠の話は止まらず、朝になってしまった。
羽遊の精神は限界へ達した。
「あ、オレ・・・そろそろ体探しに行かないと・・・。」
「待って。」
なんとか立ち去ろうとした羽遊を、絵眠はやみくもに引き留めると
「私も連れていって。」
とか言い出した。
「な・・なんで?」
「私昨日、私を殺したやつを見たの。だから復讐したくなって。」
「え・・、まだ犯人捕まってなかったんだ・・。」
っていうか何故昨日の時点で行かない?・・・と突っ込むのは止めにしといた。
蟹山絵眠が仲間になった!
(RPG風に言うと)
「じゃ、じゃあさっさと俺の体探しに・・・。」
私の復讐は?」
「え?」
「あなたが生き返っちゃったら、私が1人になるじゃない。分かってんの?」絵眠が片目グロテスクな顔でこちらを見つめてくる。
密かな凄みに、羽遊は断る事が出来なかった。
3話の字数が足りなかったので4話目と一緒に出すしかなくなった。むしろこれくらいの長さの方がいいのだろうか。