#2.街路樹
「息子は・・・?息子は大丈夫なんですか?先生!!」
干火樽病院5F、ある病室の前。羽遊の両親が、医者に問い正している。下校中だった羽遊は、7トントラックに跳ね飛ばされそのままここまで運ばれたのだ。
「息子は、羽遊はどうなったんですか!!」
「・・・・・・。」
「先生!」
しかし医者は一向に話さない。
「いい加減にして下さい先生。もう覚悟はできてるんです。早く・・・早く教えてください!・」
その言葉に、遂に医者は口を開いた。
「転落畤羽遊君は・・・、生きていますが死んでしまいました。」
「は・・・?」
羽遊の父は言葉の意味が分からず立ちつくしている。
「羽遊君の心臓は今、ポンプで無理矢理動かしています。人間として生活は出来ません。つまり・・・、彼は植物人間となりました。意識がもどるまで、ここで生きてもらう事になります・・・。」
羽遊の両親は、頭の中が真っ白になった。
「アレ・・?オレトラックに牽かれて・・。死んだ・・。のか?」羽遊は跳ねられた時の格好・・・夏用の制服にサブバックのままで横断歩道に立っていた。
もう深夜だからか、車は来そうに無い。が、一応なんとなく、避難はしておく。
そこで羽遊は、自分に足がある事を発見した。
なんだ、あんじゃん足。じゃ、少なくとも幽霊じゃないなオレは。
「うん、そうだ。ゴーストになるなんて60年は早い・・・」
スルッ。と音はしないが、街路樹を腕がすりぬけた。
「え・・・。」
ま、まさかな・・。よ、よし、ちょいとやってみよう。もう一度街路樹に手をあててみれば分かるはずさ、アレは幻覚だって・・・。
「く・・、はああ!!」
羽遊の手は見事に木を通過した。
「イ・・イリュージョン・・・。なんちて・・・。」
人生って不平等だぜとか言ってたからか、人生が終わってしまった。・・・羽遊は絶望した。