#13.宣言
生き返るために。
「天使会合してる内に、女の方は逝ったみたいだな。最後にいい話は出来たか?」
「………ああ」
「そうか…で、まぁ俺はここに来た訳だが…お前はどうする?
背を向いて逃げるか?それとも無駄死に覚悟で戦うか…?」
このとき、
天使はこの質問を、あえてした。
人の心を読める天使は、すでに質問の答えは知っていたが………
本人の口から言わせるのも面白いと思ったのだ。
「さあ……答えろ」
「俺……俺は……生きる」
へぇ…どうやら変わったようだな。
天使会合に行く前は「倒してやる」だったが……今は。
「お前を倒して……生き延びてやる!!」
「そうか」
―――覚悟の目をしてやがる。
「じゃあ…いいんだな」
「…もちろんだ!」
羽遊には勝算がなかった。
ただ、もう天使から逃げることは出来ない。それは明白だ。
俺が絵眠を引き留めずに逃げていたら、
果たしてこいつから逃げられただろうか?
それはない。こいつは空から全てを見ているのだから。
最初から…こいつとは戦う運命。
そうだ、ほんのちょっと前まではこの展開を望んでた。
俺はなんとしてでも、天使を倒さなければいけないと。
こいつさえいなくなるのなら、現実に戻る必要もないと。
ただあいつが。“ゆっくり”を壊したあいつが憎かった。
でも、今は――――誓っている。
元の世界に帰ると。
絵眠の分まで現実を楽しむと、
誓っている。
「殺り合いはめんどいんだがな…ここはお前の意思を尊重してやるよ。」
絶対勝つ。
勝つしか、道はない。
そうしなければ俺は、絵眠に会わせる顔がない。
「来な。天使と人間の、覆りようのない 差……その心に刻んでやる。」
「言われなくてもそのつもりだ!」
地面を蹴って、羽遊が駆け出す。
走る。地面には目もくれず、一目散に天使の元へ。
彼はもう、転ばない。
1人の人間が――天使に牙を剥いた。