#11.送る羽
今時の天使が携帯持ってて何が悪い。
「ポン!」
とかいう効果音じゃなかった。
…むしろ音もなく、ただ花が開花するように。
絵眠の背中から羽が生えていった。
「送り羽はその名の通り、生えた者を天国に送る羽だ…当たったら最後、外れることはないし、外すことも出来ねぇ。この女は天国に送った後、相応の処置を経て地獄に送る。さて…次はお前」
『あなたぬためぬ〜生きぬ〜♪』
そのときいきなり、どこかから歌が聞こえてきた。
サニーズの
「あぬぁたのためぬ」だ。
どうやら、携帯の着信音らしい。ひとしきり鳴り終わった後、その音は止まった。
音の出所は天使。
「なんだよ、せっかくもうちょっとで終わりだってのに…」
何やら嫌そうな顔をしながら、携帯を取り出して開く。
そして、絶句した。
「マジかよ!もうこんな時間!?天使会合始まってるじゃねぇか!」
電話ではなく、メールだったようだ。それを見て天使は、急にそわそわし始める。
「駄目だ…もうこいつに送り羽をつけてる時間はねぇ…畜生…あと少しってとこなのによ」
そうつぶやくと、急に向き直って羽遊に叫んだ。
「けっ…運がよかったなてめぇ。俺は今から少し用事だ…お前を天国に送るのは後回しにしてやるよ。」
「ま、せいぜい最後の別れでも楽しむんだな。……んじゃあな、植物人間!」
―――――天使は消えていった。
後には、絵眠と羽優だけが残った。
絵眠の背中に生えた翼は、
天使のそれと同じで白い羽。
罪人を天国に送る、羽。
短い話です。いや、俺の話の区切り方が下手なだけだ。