#10.哀れ
イライラが止まらねぇ。
どっかで信号が青に変わった。だが、俺たちと天使の話は続く。
「・・で。話がそれたか。まあ、いい。」
・・ゆっくりと天使がこちらに歩いてくる。
俺達の顔など見ずに、頭をボリボリ掻いて、下を見ながら。
「歴史干渉の罪は重いからな、とりあえず2人とも地獄行き。で、天使協会の会合が今日あるから早く行かないと・・」
「オレらはついで、か
「止めて、羽遊君。今は何も言わないで。下手に喋るのはそのまま死に繋がる。」
いきなり絵眠が、俺の言葉を遮った。
「でもこのままだと、2人とも地獄行きに・・」
「天使は最強・・どんなに頑張っても絶対勝てないの。絶対ね。
でも安心して、羽遊君。・・あなたは地獄へ行かせないから。」
絵眠が片目グロテスクな、でもそれ以外はノーマルにかわいい顔で、羽遊に微笑んだ。
あなたは地獄へ行かせないから。
じゃあ、絵眠は・・?絵眠は地獄に・・
「さあ、そこの天使!・・あなた、一つ間違えてるわ!」
「なんだと?」
「あたしが羽遊君に命令して、利婚炉に攻撃させたの。利婚炉を憎んでたのはあたし、自首させたのもあたし。だから・・」
「地獄に行くのはお前一人だけにしろ・・とでもいいたいのか?」
「その通りよ」
羽遊を差しおいて、絵眠と天使の話が始まる。
どうやら絵眠は、自分を犠牲にして羽遊を助けようとしているようだ。
そんなのやだ、に決まってる。
なのになんで――――
「悪いな。俺ら天使には人の心が透けて見えるし・・一部始終は天界から見させてもらってるんだ。」
「それでも・・それでも羽遊君は関係ない・・あたしが一人でやったの。」
「悪あがきはよせ。嘘吐いてると詐偽未遂で追加刑が・・」
「待てよ」
口を挟んだのは羽遊だった。
「分かんねぇ・・訳分かんねぇよ。いきなり現れて地獄だなんだ・・そんなの知らないんだからしょうがねぇだろ!!」
もう我慢ができなかった。
「羽遊君やめて!」
「へぇ・・おまえ舐めた口聞くじゃんか。閻魔に舌引っこ抜かれても知らねぇぞ?」
天使の挑発にも、乗るしかない勢い。
止められない怒りが羽遊の中で渦巻いていた。
「俺は・・絵眠のお陰でここまでこれたんだ。なのにいきなり現れたお前に、地獄に連れてかれたら・・えと・・迷惑なんだよ!」
ちょっと本心とはズレた気がした・・けど、羽遊にはそんなことはどーでもよかった。
目の前の天使が、気に入らない。
ただそれだけとは言えないような気がしたけど、それが大半で。
羽遊は沸いてきた感情を天使にぶつけた。
「哀れだな」
「哀れ……だと!?」
羽遊は疑問と怒りが入り混じった感じで天使に向かって叫んだ。
「ああ、哀れだ。……なんせ今のお前の言葉で」
その刹那 天使 は 視界か ら 消え
「俺のイライラが頂点を越えたからだ。」
次 天使 のすがたを 確認したときには すでに
「!?」
「絵」
天使 は 絵眠の う しろ に いて
「み」
「逝け」
天使は絵眠に なにかを放った
「ん!!」
放たれたそれは、白い光を伴いながら真っ直ぐ絵眠に飛んでいく。
羽遊の声で、絵眠が後ろをふりむく。
だが、間に合わない。
必死に払いのけようと、羽遊が絵眠に駆け寄る。
だが、間に合わない。
冒険小説の主人公ならともかく、
彼らはただの人間なのだから。
ゆえに、届かない。その可能性は0%。どんなに苦し紛れに叫んでも、どんなに相手を想う気持があっても、霊だろうとなんだろうと絶対には逆らえない。
絵眠に、光球が直撃した。
「……………きゃっ!!」
「だから哀れだといったのにな……もう、積みだ。植物人間。」
「なん………だと?」
「開け……送り羽」
そして……羽が生えた。
絵眠の背中から。
10話まで行った…読んでくれた人達に感謝です