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『自分』を武器にして  作者: 帰村 典
条約破棄編
8/9

見えない襲撃

カトラスの国王、レイヒンは暴君である。

弱きは切り捨て、強きを伸ばす。

そうしてカトラス王国は110位から100まで国家順位を跳ね上げて見せたのだ。


「俺様に楯突いた奴らは雑魚だけだ。

所詮は俺様に捻り潰されるだけの存在、下らんな。」

「ははっ、レイヒン様には敵いませんな。」

「当たり前の事を行っただけだ。

今この世界は異界から来たヤツらが牛耳ってる。

確かにアイツらの力は異次元だ 、それは俺が1番知ってる。」

「過去に何か?」

「気にするな、それより下っ端共はどうしてる?」

「順調に物は収めています。」

「ならこの調子で資源を集めさせろ。次に俺様が挑む国には異界の人間が居るからな、入念に準備せねばな。」

「はい、かしこまりました。」


レイヒンは過去に世界渡しで来た者に破れた過去がある。

それ以降世界渡しを恨み力に固執、やり方を選ばらなくなって行った。

国内の信用は落ち、結果的に暴君の座に君臨した。

しかしその王政に聞こえ始める崩壊の音。


「レ、レイヒン様ー!」

「なんだ騒がしい。」


立派な部屋の扉が品が無く開けられ、兵士は叫ぶ。


「和平条約を結んでいた国家からの資源供給が急遽停止!

さらには法律国家を経由して条約が違法であると主張してきました!」

「…は?」

「さらにさらに!国家順位最下位のアトルが資源を停止させた国家を纏めて連合を組んだとの事!」

「アトルだと!?それに連合だぁ〜?何かの間違いじゃないのか!」

「まだ正式な手続きは済んでいる訳ではないですが、諜報部が早急に報告せよとの事で…」

「裏を取らせろ!そして幹部達に伝達、緊急会議を行う!」


レイヒンの自信、そして快進撃を続ける国家に揺らぎが生じ始める。

報告から程なくして緊急会議が始まる。

レイヒンは幹部達から具体的な被害や前兆があったか等を聞き出す。

結論は簡単で報告の全てが事実であった。

これまで得ていた資源は止められ、相手は連合を組んでカトラス王国に対して条約解消を宣言した。

この宣言を法律国家は正式に承認し、関係は切れてしまった。

資源供給停止の前兆としてここ数日の資源減少が挙げられた。

元々減っていてはいたが急激に下がり最終的には無くなった。

これらを踏まえ、レイヒンは最近の出来事である事を思い出す。


「発端は…アトルの新国王就任か。」

「そうかと思われます…まさか最下位の国風情がこんな事をやらかすとは…」

「馬鹿野郎!普段から言ってるだろ、異変があれば小さくても報告しろと!」

「で、ですが相手は滅びかけの最下位ですよ?」

「そんなことは知っている!問題なのは国王だ!格上を傘下にして連合を作るなんて事が可能なのは異界から来た奴らだけだ!」

「ま、まさか…なら何故我々の国に直接攻めて来ないのですか?」

「俺様が聞きたい位だ!何を考えているんだ、アトルの王は!」


レイヒンは混乱していた。

かつて戦った相手や話に聞く異界の者たちはカトラス王国程度なら簡単に滅ぼす程の能力を持っていた。

戦闘に向かない能力ですら国家に与える影響は計り知れない。


「とりあえずアトルに行くぞ!

俺様に付いて来い!」


暴君が動き出す。

一方その頃、話題のアトルの国王である斥時はと言うと…


「いや〜この世界の酒は美味いな!」


混乱するカトラス王国にて、再び酒を飲んでいた。

前回と違う点があるとするならば誰も連れずに一人で訪れた事位だろう。

同じ食事場、同じメニュー、そして…


「なんだ兄ちゃん、まだ居たのか?」


同じ声を掛ける人。


「帰りましたよ?ただここの肉と酒が忘れられなくて、たま来ちゃいましたー!」

「ははっ!まじかよ!そんなに気に入ったか!」

「よろしければご一緒に?」

「あぁ、良いぜ!」


斥時の目的、それは国の話をした男への接触。

肉を食らい、酒を飲み、楽しい話で相手を浮かせて本題を切り出す。


「なぁ、アンタ…実は結構上の人間だろ?」

「なんだ?いきなり改まって。」

「俺の見立て通りなら軍団長か副団長だと思うんだけど…名前を聞かせてくれないか?」

「…」


斥時の中である違和感が残っていた。

今の国王はやり方に問題はあるが即位してからカトラス王国の順位は上がっている。

この世界において順位を上げることがどれだけの意味を持つかは不明だが争いが起こる時点で決して軽くない事だけは斥時にも理解出来た。

だがこの男はやり方や国に不満を漏らし、あまつさえ逃げる事を進めてきた。


「なぁ、話してくれないか?

この国で何があったのか。」

「…分かったよ。」


そこから語られたのはカトラス王国が辿った血に塗れた軌跡。

レイヒンの勝利の方程式は実に効率的だった。

自分達より下の国に戦争を仕掛けて理不尽な条約を結ばせる、ここまでは斥時も知っていた。

だがこれだけで順位を10位も上げるのは難しい。

そこで資源や戦力を他国にも作らせて奪い、そして格上に挑んで勝利を勝ち取る。

ダメ押しで挑む国の弱みや人質を取るなどして勝率を上げ、そして1年前に見事に格上の国を撃破して100位の地位を手に入れた。

一度上手くいった方法を再びするのは常套手段、レイヒンは再び準備をしている最中だと言う。


「でもそれって普通じゃないか?確かに外道ではあるけど、やってるのは国を掛けた戦いな訳だし。」

「分かってはいるんだ!でもな、順位が高いからって国自体が豊かな訳じゃないんだ!

分かるか?国交は出来ず、他国から来てくれる人は減り、戦いに勝っても何も満たされない日々が!

もううんざりだ…」


頭を抱えて泣き出す男に斥時は囁く。

それは甘く、悪魔の様な囁き。


「ならお前に相応しい戦場をやろう。」

「…何?」

「耳を貸せ。」


何かを吹き込む斥時。

男は話を聞くと目を見開き、ゆっくりと斥時を見てこう言った。



「兄ちゃん…アンタは何者だ?」

「勝利の女神さ。」

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