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『自分』を武器にして  作者: 帰村 典
条約破棄編
6/9

初動と偵察

演説後、俺と大臣達はボロい城で会議を始めていた。


「まず確認だが、大臣は5人。

それぞれ経済、民間、軍事、外交、生産で間違いないな?」


全大臣が頷く。

大臣の顔と担当、そして名前を聞いた。

経済担当 モコ

民間担当 ルーン

軍事担当 ソダ

外交担当 ミヤ

生産担当 アダイ


最初、俺に向かってキレた青年大臣ら経済担当のモコって名前だった事には驚いた。

なんと言うか可愛らしい。


「さてさて、問題は山積みだから個別に潰して行こう。

民間大臣ルーンに聞く、この世界には共通する法律やルールは明確に決まっているか?

特に停戦や戦争関連で。」

「はい、決まっています。この世界において法を司るのは法律国家となっており、そこが定める物が採用されております。」

「法律国家、か。ちなみにそこの順位は?」

「現在3位です。」

「流石に高いな…相談は無理か。」

「ですね…」


「いいえ、可能ですよ。」


話に割り込んで来たのはつり目が特徴の女性、外交大臣のミヤだ。


「何?本当かそれは?」

「はい、皆さん法律国家そのものをあまりご存知で無いでしょうから説明致します。」


法律国家は唯一の中立国であり、この国家世界での取り決めを行っている場所でもある。

一切戦争はせず順位にも固執せず、まさに法律の番人だ。

和平や合併、国家間のやり取りには全て法律国家の法が共通で採用される。

そして最大の特徴は話ややり取りする相手に順位や強さを求めて来ないと言うことだ。


「なら民間大臣ルーン、外交大臣ミヤは会議終了後に法律国家とやり取りしてくれ。

条約の有効性とそれに伴う法律も詳しくだ。

後は宣戦布告についての取り決めと戦争中についてもだ!」

「「はい!」」


これで戦争への対策、そして条約への解釈を完全な物としよう。

次の課題だ。


「生産大臣のアダイ。」

「はい〜」


温厚そうな太り気味の男性が返事をする。


「各産業のここ数年の生産量の増減、そして品目のリストは作っているか?」

「は、はい。」

「そうか!ならそれの準備とここ数年で何か現場に変化はあったか生産者に聞き回ってくれ。」

「りょ、了解です〜」


よし!やはりこの国の民はやるべき事はやっている。

次は戦力の確認だな。


「軍事担当ソダ。お前には現在の軍の体制を詳細に纏めた資料提出と戦力の説明を求める!」

「はっ!」

「うむ、いい返事だ!」


最後に…


「おいモコ!」

「なんで僕だけ名前のみなんですか!」

「いいからいいから〜それよりお前には俺と共に付いて来てもらおうか〜?」

「ど、どこに…」

「勿論それは…敵の本丸だよ。」


山を超え、谷を超え、俺とモコは強大な敵の前へと来ていた。


「それにしても山越えはかなりキツイな。」

「当たり前でしょう!慣れているアトル国民でも徒歩でなんて来ません!」

「まぁまぁ、そうカッカするなよ。日没前には着けたんだしさ。」

「はぁ…なんで王がこんな適当なんだ…」


国家順位100位、カトラス王国。

人口は50万程度、兵士も2万人を超える大国で、アトルに比べれば全ての基準が高い。

弱みを上げるならば生産業が弱く、それを補う為にアトルを狙ったと思われる。

街並みは良くある中世ヨーロッパ風の作りでド〇クエの王が住む街を彷彿とさせる。


「アトルに比べれば栄えてるけど…なんかつまんねぇ街だな。」

「そうですか?僕は凄いと思いますが。」

「って事は順位高い国の文明はこれ止まりか?」

「いえ、順位が高い国はもっと広く栄えてると聞きます。詳しくは分かりませんが国によっては異界の文明や知識が使われていると噂で聞きました。」


異界の文明と知識か。

もしかしたら江戸風とか都会風とかあるのかな?

なんて事を考えながら街を歩く。

メインの通りを歩き終え王城の近くまで来た。

アトルの城を見た後だと流石に派手に見えるな。


「ディズ〇〇ランドの城に似てるな。」

「何処の国ですか、それ?」

「夢の国さ。」

「聞いた事無いですけど…」

「気にするな、独り言だ。」


街を歩き終える頃には既に夜、俺とモコはご飯を食べに近くの飲食店に入る。


「ここはカトラスの名物料理が食べれるらしいです。」

「名物って?」

「これです。」


出されたのは余りにもデカイ肉。

肉汁は溢れ、匂いは食欲を刺激する。

無我夢中でかぶり付き食べるのが流儀らしい。


「いい食いっぷりだな兄ちゃん、見ねぇ顔だが旅で来たのか?」


肉に夢中になっていると後ろから声をかけられる。

振り向くとそこには筋骨隆々の男が立っていた。


「あぁ、旅だ。この国には美味い肉があるって聞いてな。」

「そうかいそうかい!だがあんま長居しないほうが良いぜ?」

「ん?何故だ?」

「ほら、ウチの国ってかなりあくどいやり方で順位上げてるだろ?」

「そうなのか?単にあっちこっちに戦争仕掛けてるんじゃなくて?」

「知らんのか?ウチの国はな勝てそうな相手や格下相手にしか戦争を挑まずに、勝てそうな時に無理矢理理不尽な条約結ばせて飼い殺しにするんだよ。」


まぁ、知ってる話ではあるがなんでこの男は知ってるんだ?

それとも国民も当たり前に知ってるのか?


「その方法って上手くいってるのか?」

「あぁ、今やカトラスの被害にあった国は少なくとも5つはあると聞いてるぜ。」

「そうなのか。それがなんで長居しない方がいい事になるんだ?」

「ココ最近では観光客を捕まえて、敵国への脅しに使ってるらしいからな。

本当に現国王になってから数年、ロクな事をしないね。」


成程、少し見えてきたな。

アトルにしている理不尽な条約は他の国にもしている、そうする事で自分達の戦力消耗を抑えながら実質的な勝利を得る。

その為の足掛かりにスパイを送り込んだりして内部から崩していくのか。

それを国民はあまり良く思っていない訳だ。


「すまんな、情報をありがとうよ。」

「良いって事よ!これ以上この国の被害者を増やしたくないからな!」

「そうか、大変そうだな。話の礼だ、愚痴くらいは聞くぜ?」

「ははっ!言うね兄ちゃん!」


食事の場所では人の警戒心は薄まる。

それに国民から出る情報には国家の課題が浮き出る。

俺はなるべく相手を持ち上げて男からカトラス王国の話を聞き出した。

酒も入り、朝まで続いたが相手が寝た事で話は終わりを迎えた。


「おい起きろ、モコ。」

「んぇえ?」

「ったく、お前酒弱すぎだろ。」

「王が〜強すぎ〜なんです〜」

「はいはい、分かった分かった。さっさと帰るぞ。」


寝ているモコを起こしアトルに向かって俺達は帰る。

情報が手に入り、後は他大臣との会議で全貌が見える。

反撃の糸口が見え始めてきたぞ。

修正すまぬ

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