無能国家アトル
眩しい光に眼を閉じて再び眼を開くと光景は一変した。
俺は立派な椅子に座っていた。
さらに地点は高く、視線を下げると数名の者達がこちらに羨望の眼差しを向けている。
「おぉ!成功だ!我らの願いは女神様に届いた!」
「待ち侘びた救済の新王!」
「時は来た!我らアトルが再び世界と戦える!」
とても喜んでいる様子、本当に追い詰められていた事が伝わって来る。
ここは1つ答えるか。
「うむ、ありがとう諸君!俺がこの国新たな王となる男だ!」
「「「おぉー!」」」
拍手と共に喜びが更に弾ける中、1人が俺に向かって質問を飛ばす。
「新王よ!貴方様の力はどの様な物なのでしょうか?」
「と言うと?」
「またまたとぼけて、知っていますよ〜?女神様より現れる使者は皆、特殊な能力をお持ちになって来られる。
ある者は英雄になる様な能力、ある者は未知の魔法を扱い、ある者は…」
「あ、そう言うの無いから。」
「え?」
「だから能力なんて貰って無い。」
「あ、あぁ〜成程!元から持ってるんですね!」
「いや、何も無いただの人間。魔法も変身も出来ないただの人。」
重い空気がこの場所を支配した。
当然だ。
期待して、縋るように俺を呼んだが肝心の能力が無いなんて絶望物。
しかしこの絶望はまだ生温い。
この程度ならまだ立ち直れる。
「まぁ、そう落ち込んでくれるな。
俺は『自分』と言う武器がある、この国の再建は必ず行う。
いや、この国を必ず1位の国家にしてみせる!」
しかし空気は変わらない。
全員が下を向き、脱力している。
小さい声でネガティブな言葉のみが吐き抜ける。
「無理だ」「召喚は失敗した」「この国は女神に見放された。」「もう滅びを待つのみか。」
「はぁ〜おい、お前らはなんだ?人間か?」
「そうですが…」
「なら前を見ろ、考えろ、突き進め、貴様らがそんなんだから国が落ちているんじゃないのか?」
「…お前に何が分かる。」
1人から聞こえたその声を俺は聞き逃さない。
「あぁ〜???聞こえないなー」
「っ!お前に我々の何が分かる!他国との戦い敗北し!スパイに情報を流され!滅びたくとも滅びれず、奴隷国家や無能国家などと揶揄され続けた日々!
もうこの国は終わってるんだよ!何も残って無いんだよ!」
「その程度かぁ!?あぁ!?」
泣きながら語る青年に俺は食い気味に語る。
ここだ。
この青年の言葉は秘めた国民の思いの一端、俺が示すのは確かなビジョン。
「良いかよく聞け!これからこの国は変わる、俺が変える!
我々の気持ちが分からないだぁ?だったら聞かせてみろ!
この国が辿ってきた屈辱の歴史を!
そして俺が考えてやる!この国が辿る最高の未来を!
滅びかけの国、俺も一度は死んだ命!
どうせだ!ド派手にかまそう!隣国に!世界に!女神に!
無能国家?上等だ!無能国家にただの人間、もう下がる事は無く上がるしかないだろぉ!」
「だがもうやれる事はやった、何も無いんだ本当に…」
「無いなら作るまでだ!いいから教えろ、国の全てを!」
無能国家とただの人間。
下克上が始まりを迎える。
しかし問題はあまりにも深刻であった。




