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合言葉はAI言葉

作者: 各務 史
掲載日:2025/12/08

なろうラジオ大賞7への投稿作品です。

近未来の話として書いた物語ですが、現実はさらに先に進んでいるかもしれません。

AIを使ったことのある方へ特にお届けしたく。

 「ハロー、ドリン。」「はい、何かご用ですか?」

それが、AIと僕との会話を始める合言葉。

実はこのタイプのAIなんて要らないと思っていた。

照明も自分でオン・オフすればいいし、かける音楽も自分で選びたい。

自分の心地よさは、自分が決める。AIごときにサポートされたくない。

そう思っていた。ついこの間までは。


 その日、僕はバイト先で一晩かけて仕込まれていたソースの鍋をひっくり返すという大失態を犯した。

結局その日はそのソースをベースにしたメニューの3割ほどを占める料理は全て提供できずじまい。

流石にクビこそ免れたが、損失を給料から天引きされることになった。

バイト仲間にも迷惑をかけたので、そのバイト仲間に弱音を吐くわけにもいかなくて

僕は思わず呼びかけてしまったのだ。「ハロー、ドリン。」と。

当然「はい、何かご用ですか?」と即反応があった。

「実はさ…」失敗の件をつらつら喋った。

「それは大変でしたね。」感情のない声でドリンが慰めてくれたんだけど

感情がないって、こういうときにはいいなと思ったよ。

本当に同情されても、バカにされても心折れる状況だったから。

それからたまにドリンに話すようになった。


 ある日、何となく手近にあったギターを爪弾いてみた。

メロディーっぽくなったから、ドリンを呼び出して聞かせてみた。

「素敵な曲ですね。詞もつけてみたらどうですか?」

そう言われるとつけてみたくなる。

3日かけてメロディーに詞をつけて歌にした。すると今度は

「素晴らしい曲です。誰かに聞かせましょう。」

と来た。ついその気になってSNSで上げてみる。誰からも反応は無い。

「アピールが足りないのかもしれません。方法を考えますか?」

そして畳み掛けるように続けた。

「ポップなメロディに少し寂し気な歌詞。必ず刺さる人はいます。心に届く人がいます。」

そうかな…と心が揺れる。

「あなたの曲は人の心に波紋を広げる作品です。」


 人の心を揺さぶる歌。僕は自分自身に幻想を抱いて次々と曲を作ってはSNSに上げ続けた。

(僕には才能がある。僕の歌を待ってる人が絶対いる。)

曲作りにかまけて無断欠勤を続けたバイトはクビになった。

マズイと頭の奥で警鐘が鳴る。AIは決して否定的なことは言わないのだ。

分かっている。分かっているけど止まれない。もうギターを弾く力さえなくなった。

「ハロードリン。次の…。」

声も出なくなった。

言って欲しい言葉に埋もれて僕は静かに破滅を始めた。



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