君は産み出す人になるか。ただ見ているだけの人になるか。
俺は不良大学生だった。
講義にも出ず
創作のサークルの連中や
美術学科の連中とつるみ
夜は繁華街に飲みに行く日々だった。
毎朝二日酔いで講義には出ない。
典型的な不良学生の自分。
ある時、
学内の掲示板に貼ってあった
とある美術学科のポスターの
一文を目にする。
『君は産み出す人になるか
ただ見ているだけの人になるか』
その挑発的な文のポスターを見た時
何か自分の脳髄に電撃が
走ったような衝撃を覺えた。
その時から
俺は本格的な文学研究や漫画研究に
のめり込み始める。
それから小説の研究室に入り浸ったり
古本屋に通い詰めた。
結局真面目な大学生になれず
不良大学生のままであった。
『君は産み出す人になるか
ただ見ているだけの人になるか』
卒業して10年を越えた今。
あれから10年を超えても
その挑発的な文が
電撃が走った焦げ跡の様に
俺の心の奥に焼き付いている。
(了)