第13話「大魔道士ガルディオスの遺体回収」
まさかあのガルディオスと再会するとは・・・。
再会と言っても、以前のガルディオスは遺体の状態だった。
だから生きてる彼と会うのは今回が初めて。
再会とは少し語弊があったかもしれない。
『大魔道士ガルディオスの遺体回収』
それはぺルティア領地にあるギルドで受け取った依頼だった。
魔族が関わった依頼は基本的にPTプレイが望ましい。
なぜならソロプレイでクリアするには、効率と報酬が見合わないからだ。
まさに労多くして報われないパターンだ。
当時『大魔道士ガルディオスの遺体回収』の依頼主は不明だった。
この場合、依頼主自らが秘匿性を求めているのか。
あるいは秘匿性によって存在を隠す必要がある依頼主なのかに大別される。
ギルド本部は基本的に魔族からの依頼は引き受けない。
そう考えると、当時の依頼主は後者に当てはまる魔族だったかもしれない。
依頼の内容は至って簡単。
ダークエルフの王国を人間族とゴーレム族の侵攻から守り抜いた英雄「ガルディオス」。
その遺体を回収するだけだった。
何十年も前の遺体を回収するという、少し風変わりな依頼。
だが、どこか面白そうなネタの匂いがしたので、迷うことなく受諾した。
最初は死んだダークエルフの遺体を持ち帰るだけ。
楽勝だと思っていた。
軽い足取りで表示された位置に辿り着いた。
しかし、そこには大勢の魔道士たちとゴーレム族の兵士たちが待ち構えていた。
遺体を中心に陣形まで組んでいたのだ。
まるで外部からの接触を警戒しているかのように。
中央の遺体はとてもきれいな状態だった。
そう、数十年経ったとは思えないほど。
まず、周辺の村で調査を行った。
もう死んでしまった身体に、なぜそこまで警戒しているのか。
それが理解できなかったからだ。
「なるほど・・・」
村のNPC達から、当時のことを聞き出すことができた。
魔力を使い果たし、ダークエルフの王国を守り抜いたガルディオス。
彼は最後に魔力を出し切って自らの身体を封印したそうだ。
その封印には高度なダークエルフの術式が掛かったため、
優れた人間の魔道士達さえも、
ゴーレム族の魔力分解を使ってでも、
封印を砕くことができなかったようだ。
封印が解け、突然再び動き出す。
その可能性を恐れた彼らは、ここまで物々しい態勢を整えていたのだ。
丁寧に遺体の回収の許可を求めてみたが、無下に断れた。
なら力づくで回収するしかない。
何事も効率よく、合理的に。
そこからは激しい戦闘が始まった。
ゴーレム族と魔道士たちの組み合わせは厄介だった。
ゴーレム族の生まれ持った高い魔法抵抗性は、魔法によるダメージを大幅に減少させることができる。
魔道士達はそんな彼らを盾にし、後方から魔力をぶちかましていた。
NPCのくせに頭がよく回っていた。
さすがイレクシア・オンラインが誇る人工知能だ。
生半可な魔力じゃ高い魔法抵抗性に塞がれる。
出した結論は、それを上回る火力の魔法。
俺は確実に相手を葬られる量の魔力で魔法を展開した。
それで前方に立ちはだかっていたゴーレムの兵士達と後方の魔道士達を一気に清掃したが・・・。
魔力の繊細なコントロールを誤ったのか。
それとも使用した魔法の熟練度が上がって威力が増したのか。
攻撃範囲は想定した範囲より広く・・・、
つい遺体まで巻き込んでしまった。
まさに労多くして功ゼロ。
今までの働きが無駄になりかねないと思い、
ソワソワしながら魔法が大気中に散らばるのを待つと、
何もかも消えたフィールドの上には、遺体のみが優雅に立っていた。
近寄って遺体の状態を確認してみる。
何事も起こってないかのような、つるっとした小麦色の肌。
風に靡く灰青色の髪。
焦げた痕跡など、どこにも見当たらなかった。
遺体を動かそうとすると、強烈なスパークが発生した。
例の術式による魔法防壁だった。
封印を解く必要があった俺は、カノンちゃんにその仕組みの分析を頼んだ。
思ったより時間がかかり、封印を解除しようとした瞬間、
「ん・・・?」
ガルディオスの遺体が薄青い光に包み込まれた。
次第に分解され、魔元素の量子になったそれは、徐々に消え去っていった。
遺体が跡形もなく消滅し、地面に落ちてくる一枚の封筒。
多分、遺体の懐から落ちてきたようだ。
遺体が最初からこの封筒を守っていたかのように、
手紙はしわ一つなく、
まるで書かれたばかりのような完璧な状態だった。
触ってみると中には手紙が入っていた。
他人の手紙を読んではいけない。
もちろんそれが常識である。
しかし、ダークエルフの英雄とも呼ばれた男。
そんな彼が自分の命を捧げてまで、伝えたかった内容がどうしても気になった。
また、これは小説のいいネタになるかもしれない。
その考えに、誘惑に負けてしまったのだ。
せっかく常識に反する行動を取ったが、それはただのラブレターだった。
そこには好きな人への気持ちがありありと書かれていた。
『あなたの美しいラベンダー色の髪を見ると、寒ささえ忘れられて私の心は春近しでございます』
読んで鳥肌が立った。
まぁ、でも恋する人って。
大体こんな感じで頭が少しズレるようになるのは知っていた。
恋愛をする理由も、意味も判らないが・・・。
手紙を書いた人は、この女の人の太ももが好みだったようだ。
何気なくさらっと太ももを褒めてるけど・・・。
これって言われて喜ぶポイントなのか?
手紙の最初と最後の行に宛名と差出人が書いてあった。
宛名:リヴィアナ・クァルネス 様
差出人:ガルディオス・フォルセリアン
差出人にはしっかりガルディオスと書いてあった。
俺はペルディア領地のギルド本部にそれを持ち込んだ。
最初の依頼内容だったガルディオスの遺体の回収。
それに失敗したせいで、もうクリアはできないと思っていた。
だが、依頼主は手紙を受け取り、それで依頼が完了したと見なしてくれた。
依頼主は結局、最後まで不明だった。
依頼を受諾したことも。
報酬を受け取った事も。
全部ギルド本部のNPCを通して行われた。
ただ、報酬に依頼主からのメモが挟まれていた。
『愛するお方の最後の言葉を頂けて心から感謝します』
当時は何とも思わなかった。
でも、今それを振り返ってみると、やや複雑な気分になる。
結衣からの最後の言葉。
『素敵な恋をしてほしい』
俺もいつかは一緒に歩みたい。
そう思える人を探さなければならない・・・。
とりあえず、今は他の魔道士に当たってみるしかない。
そのためにも情報収集は必須だ。
そして、情報が自然と飛び交う場所と言えば・・・酒場だ。
未来のガルディオスは、アストレリア王国の魔道士達とゴーレム族の侵攻から
ダークエルフの王国を守り抜き、英雄として称えられます。
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