二章その3
当然先程までの会話は覚えている。
目標を果たす為に俺は歩きだした。
俺とヒトラー以外の人はいわゆるnpcだとわかれば消すのになんの躊躇いもなかった。自分でさえnpcとさほど変わらないというのに彼らより上位者であるという自信があった。
そしてかつてリベルが暮らしていた城の前にたどり着いた。
今まで来たことはない筈だが何処か懐かしく感じる。もしかしたら何千回とあった実験の中で来たことがあったのかもしれないなどと考えているとヒトラー親衛隊達が集まってきて攻撃を開始した。まるでバケモノとでも戦っているかの如く親衛隊員達は怯えながら集中砲火を浴びせてくる。だが俺はそれを縮地の魔法を駆使し避けて一人一人近づいてナイフで消していった。ライフルはヒトラー相手に使いたいから使わなかった。
そして親衛隊を蹴散らしながら城に入っていった。
これで邪魔をする者はいなくなった。
王の間に着いた時そこは静かだった。
透視魔法を使って確認するとどうやら中には一人しかいないようだ。
何も恐れる事はない。そう心の中で唱えドアを開ける。
部屋を見渡すとかつて王座があった所にはテーブルがありヒトラーがいた。
「君も私と同じ西暦の人間か?」
「そうだ。貴方の死後60年後の世界からやってきた」
ヒトラーはそれを聞き安堵したように見える。
「そうか。君も私も犠牲者ということか」
俺は彼と話せそうだと感じた。
だからこの世界に関して知っていることヒトラーに関して知っている事を全て話した。
彼はただ黙々とそれを聞いていた。
「やはり私はいくら時が経とうと偉大な人物にはなれないのだな」
そう言うとヒトラーは立ち上がった。
「だが、私を信じる者がいる限り私は立ち上がらなければならない。それが人々の期待を背負ったものがやり遂げねばならない事だ。かつての戦争では私はそれが出来なかった。だからここではやって見せよう」
そしてヒトラーは銃を構え攻撃してきた。
俺も銃を構え応戦する。いつの間に覚えたのかヒトラーは魔法を使いこちらの弾を避ける。
だがこちらも魔法で避ける。だから互いの弾は当たらない。そして両者の球がつきた。その瞬間俺は銃を捨てナイフで斬りかかった。ヒトラーは銃を捨てナイフで斬りかかった。そして決着が着いた。
「やはり、私は負ける運命か」
「そうだ」
「だがこの方が世界ひいてはドイツにとってもいいのかもしれないな」
彼は苦笑した。
「この世界を終わらせるのだろう?原子力爆弾の保管庫はこの奥にある。後は君次第だ」
そう言って彼は二度目の死を遂げた。
俺は奥の部屋に入った。起爆方法はなんとなくわかっていた。一つ一つの爆弾に手を加える内に心苦しくなっていた。この爆弾を作動させれば自分は完全にこの世からいなくなる。相手は生きた人間じゃなかったが交わした約束があった。無念が頭をよぎっていく。気がつくと泣いていた。怖かった。寂しかった。でももう後戻りは出来ない。もしも本当に異世界があるのならもっと真っ当な幕引きを三度目は納得できる死を遂げたい。気がつくと最後まで爆破工作は完了していた。あと残っている作業は俺自身の気持ちの整理を終わらせる事だけだ。俺は紙とペンを取り出し、おもむろに遺書を書き始める。今から自分が居る世界も破壊してしまうのだから意味はないかもしれない。ただそれでも何かを残しておきたかった。遺書は書き終わったあと紙飛行機にして投げた。紙飛行機が誰か俺を知っている人に届いたらいいな。そう思いながら起爆する。
視界が真っ白に染まり処理の重さからか何も考えれなくなり消えた。