二章プロローグ
クラーケンとの戦いから一月、何とか港を再建し本国からの船団も再開された。
しかし、時が経つにつれ分かったのは良いことだけじゃ無かった。クラーケンの起こした津波により軍民合わせて約2530人。つまりこの国の4分の1が死んだ。更に農場と穀物創庫も被害を受け、この先食糧不足になる事は明白。これらだけでも大変なのだが、更に致命的な出来事がある。
それは、軍が壊滅した事だ。今残っている軍人は150名でその内任務可能な人数となると50人にも満たない。とにかく徴兵を行なってはいるがどこも復興で忙しくそれどころではない上、本国から来た謎の連中が軍の一部を取り込み幅をきかせてる始末だ。連中の名は『SS』。不謹慎な名前だと思うがこの世界では多分問題ない名前なんだろう。それにしてもこの町を救ったのは俺たちだと言うのに変な黒い軍服を着た連中がチヤホヤされているのは面白くないし変だ。
なので奴らが演説している所に乗り込んで粗探しをしてやろうと考えた。上手くいけば国家反逆罪などで処分する事もできるだろう。
丁度今日、奴らのリーダーが演説をやるらしい。
今がチャンスだ。
そう思い民衆に紛れ演説会場に行く。
会場に着くと既に人混みが出来ていた。そのせいでリーダーは中々見えない。しかしこれだけの人が仕事をサボり演説を聴きに来ているというのはかなりショックだ。
「このミュベンという国は少しずつ崩壊への道を歩みつつある。この国を壊したのは災害だけではない。権力者もミュベンを破壊した!」
リーダーの演説が聞こえて来るが、その姿はまだ見えない。仕方ないので人を押し分けながら前に進む。そして10m程進んだ時その顔が見えた。
「この120年間彼らは国家が脅威に晒されているというのに何も対策をしなかった。彼らにはこの国をよくしようという気持ちなどなかった。
よって今我々は彼らを破壊し、新たに民族共同体を作る。」
だが、その顔に俺は見覚えがあった。初対面だが、よく知っている。その恐るべき姿を。
「その努力により、誇り高き自由な国を作ることがいつの日か必ずできるはずだ。そんな未来の実現のために懸命に働こうではないか!」
「「「ハイル、ヒトラー!!!」」」
そうヒトラー......アドルフ・ヒトラーと彼に煽動された群衆がそこにはいたのだ。
次回より第二章スケアリーサンライズが始まります。