一章その4
結局その後俺たちは失意の中、市街に戻った。
道中道ゆく人々が空のままの馬車の列が過ぎていくのを不安そうな眼差しで眺めていたのが辛かった。
「なぁ、この後どうなると思う。」
俺はなんとなくリベルに尋ねてみるがまともな返答はなくぶつぶつと呟いているだけだ。
その内容から察するにリベルの家族もさっきの船団のように船旅中に襲われ、帰ってこなかったようだ。それを見ていたのは見送りに行き、船が遠くまでいっても灯台の上から双眼鏡で見ていた彼女だけ。そして彼女は今までその記憶を封じ自然災害にやられたという事にしていた。それもそのはずで誰も今まで海の中にも魔物がいるなんて思っていなかったしそれ以降現れることもなかったらしいから。だから誰も信じてくれなかったし自分でもその記憶を信じられなかったのだろう。だからついさっきの光景は彼女から家族が生きているかもしれないという、自分の記憶が間違いだという希望を取り除くには十分すぎるものだったのも確かだ。
だがこうしている訳にも行かない。あの怪物に海上封鎖されてしまったままだと補給が受け取れずこの国はすぐに魔物に滅ぼされてしまうだろう。
そう考えていると軍からの招集のサイレンが鳴った。とりあえず駄目そうなリベルを無理矢理引っ張り基地に向かう。基地についた後リベルを医務室に預け、他の軍人達が集まっている部屋に入った。俺が着いてから1時間程たった頃ようやく全ての軍人が集まり、軍の総司令官のレオンがやってきた。彼はその場にいた隊員達に向かって話し出した。
「諸君。先日の本国からの船団が魔物に沈められた件については知っているな。」
その場にいる全員が頷く。
「そしてそのおかげで本国は安全が確認できるまで取引を停止すると発表した。本国からの物資が無ければ我々は二ヶ月程で干上がる事になるだろう。そこで『第七十五号作戦』を行う。本作戦では例の超大型魔物、仮称クラーケンを討伐する事を目標とする。作戦の詳しい内容は彼女に任せよう。」
レオンがそう言うと一人の女性が入ってきた。
「リベル⁈」
入ってきたのはリベルだった。しかも先程までと打って変わりその態度は軍人然としていた。
そしてリベルは俺を無視して喋り出した。
「本作戦指揮官のリベル・エレクトリッシュ・ウォルトです。本作戦では当初砲撃だけでの討伐を予定していましたが、本国からの補給を受けらなかったことで砲弾が足りずそれだけでは討伐が困難な事が判明しました。よってまず、砲撃を行い魔物が生き残っていた場合諸君に水上歩行魔法を使った近接戦を行ってもらいます。作戦は明日の早朝から開始します。国の危機です。危険は承知で挑んでもらいます。」
「「「了解!!」」」
会議が終わると俺はすぐにリベルの元に向かった。
「おい、お前大丈夫か?」
リベルが冷たい眼差しを向けながら答える。
「えぇ、ようやく見つけた仇です。今しっかりしなければいつするのですか。あと、上官に対する態度くらいしっかりしてください。」
そう言ったリベルからは狂気にも似たモノが見えて俺には少し寂しかった。
「了解っ」
「でも、あまり無茶しないでね。」
「えっ?」
「では作戦の準備に取り掛かってください。」
こうして俺が入隊して初の大規模作戦が始まる事になった。
夜に港に着くと既にこの作戦にかからるほぼ全ての戦力が集結していた。大砲24門と兵士400名。
砲兵達は砲撃陣地の組み立てに勤しんでいた。
俺は入隊してから日が浅く、水上歩行魔法もあまり使った事がなかったので第ニ波歩兵攻撃用の戦力となった。見立てでは第一波で終わるそうなので少し気楽だ。
時間がありそうなので少し仮眠を取る事にした。
〜〜〜
???:やぁ、調子はどうだい?
hajime:お前は魔物に殺されかけた時のやつか、
まぁ悪くはないよ。
???:よかった。
hajime:それでなんの用?
???:想定外の事が起きてね。君にもう少し教えなきゃいけなくなったんだ。
???:生きる為の力の使い方をね。
〜〜〜
「うっ、はっ!」
体に衝撃を感じ目を覚ますと仲間達は既に攻撃開始を待っていた。
「そろそろ作戦が始まるぞ。ほぼ予備戦力といえどしっかりしとけ。」
「了解」
そう言い俺も銃を手に取る。
その瞬間海が揺れ、中から巨大な何かが水を突き破り現れる。
そしてそこに容赦なく大砲が叩き込まれた。
そうクラーケン討伐作戦が始まったのだ。
全然投稿しなくてすみませんでした。
一章は次回で終わる予定です。出来るだけ早く投稿しますので今後ともよろしくお願いします。