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一章その2

目覚めた時、最初に見えたのは天井だった。

蛍光灯も火災報知器も無いそんな天井はひどく殺風景で可笑しいと思うと同時に自分がそんな可笑しい場所で生きていかないといけないと思い知らせてくる。

この世界に来てから一週間。ずっとこの世界の病院的な場所にいる。そしてわかったことがいくつかある。一つはこの世界には魔法が存在するという事。俺の大怪我も一瞬で治ったし、そんなんだからかこの施設には手術道具は一つも見当たらずあるのは観葉植物などのメンタルに良さそうなものだけだ。でも、魔法は貴重らしい。なんせ使うと何かを忘れていき最終的には呼吸の仕方さえ忘れて死に至るらしい。

二つ目に俺が出会った少女リベルはここの王族らしい。だから俺のような得体の知れないよそ者でも魔法による治療を受けることができた。あんなのでも王族かと思っていたが、人前ではそれなりにしっかりしてやがる。

改めて思い返してみると今までの俺は運が良かったのだろう。しかし、これからはわからない。見ず知らずの場所で生きていくには何も持ってないし、職もない。

「失礼します。お兄さん大丈夫ですか?」

リベルがやってきた。自分を庇って俺が大怪我したことを気に病んでるのか毎日病室に来てくれている。そこにつけこんで職をくれるよう頼もうかと考えたが、流石に大の大人が少女に職を求めて泣きつくのは情けない。やはり職は自分で探すべきだろう。

「あぁ、おかげでだいぶ元気になったよ、それこそ君に会う前よりも。」

そう言うとリベルは微笑んだ。実際田舎生まれだからか都会で暮らしてた時よりも体調はいい。

「お兄さん、私心配なんです。」

「えっ?」

一瞬ドキッとする。俺はお悩み相談は苦手な方だ。

「もしかして行くあてがないんじゃないかって。」

予想外の言葉に胸を刺された。やはりバレていたのだ。無職だと子供相手でも格好がつかない。

かと言って嘘をついてもどうにもならないだろう。そう考えて困っているとリベルは続けて言った。

「せっかく働きに来てくれたのに、私のせいで職にまだつけてないんですよね。だったらいい所があるよ〜。」

「それは一体?」

「今はヒミツです!」

「えっ?」

「おたのしみってことでね。」

嫌な予感がするが取り敢えず観る分はただだろうし損はないはず。

「ありがとう。君の言う通り行くあてもないし、せっかくだから見学くらいさせてもらえないかな?」

「わかりました。では、夕方にこの地図の☆印のついてる場所に来てね。待ってるよ。」

「あぁ!」

それから格好を整え、地図の見方を間違えて迷ったりしたのち例の場所に着いた。空はギリギリ陽が見えている。時間は多分大丈夫だろう。少し不安だけど。

しかし、それよりも自分を不安にさせるものが目の前にあった。

目の前に広がる施設は今まで自分が見た事があるもので例えるならば軍隊の基地だった。

唖然としているとリベルが門から出てきた。

「やっと来ましたね。ハジメさん。」

その後ろから銃を持った兵士が出てくる。

「まさか、君は俺に兵士になれと言うのか?」

「嫌ならやらなくてもいいですよ。」

他にできる事があるなら。そう続けたように聞こえる。これは一種の脅しだろう。お前の様な部外者は恩に報いる為に戦え、お前の命は私の手の上だと。

「分かった。入隊させてくれないか。」

そういうしか無かった。ただただ俺は目の前の少女に恐怖した。

 こうして無理矢理軍に入らされたわけだが、意外にも軍の居心地はいい。

 しっかりと訓練さえしていれば死ぬ筈がない。

別に人間を殺す訳ではない。相手は意志の通じない魔物。そういった現実がここの兵士達の心にゆとりを与えているのは間違いないだろう。しかし、俺からすると魔物は怖い。やはり、一度殺されかけた相手だと余計恐ろしく見えるものである。でも、彼らといるとそんなこと忘れて朝まで飲んだりしてしまう。

 そんなことを考えていると朝のラッパがなった。今日も軍隊の1日がはじまる。

朝から10km程を走り、それが終わったら腕立て伏せを20回30セットその後は昼まで休憩し、昼からは射撃訓練。その後格闘訓練。こうして夜になる。初めはとても辛く倒れたりもしたが、今は辛いだけにはなった。意外と休みもあったりして体を休めさせながら鍛えられたのが良かったのかもしれない。一応自分が配属になったのは町と漁港を繋ぐ道を行く馬車の護衛で、直属の上司はリベルだ。

しかし、軍に入らされてからはあまりリベルと会話していない。少し会うのが怖い。

でも会わないと行けない時が来るのは早そうだ。

俺の机の上に、明日から護衛任務に出る様に書かれた紙が置いてあった。

1週間に一回くらいの頻度で投稿していきます。

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