第4話【炎星魔術師(プロミネンス)】
「…お前帰ってきてたのか」
「ああ、つい先程な」
現在事務所のソファに座ってコーヒーブレイクをしているこいつは「フレイ」こと「赤月 透也」
「六星魔術師」のメンバーの六属性のうちの火属性にあたる「炎星魔術師」だ
2ヶ月ほど前から任務のためにフランスまで行っていたのだが今日帰ってきたらしい
「帰って来るなら来るって連絡してくれよ」
「急に予定が決まったんだ。連絡しようにも携帯が使えなくなって出来なくてな」
「ほんっとにお前の機械音痴は筋金入りだな」
フレイは昔から機械を使えば直ぐに壊れ、通信機器を使えばエラーを起こして通信障害が起こる
なぜそんなことが起きるのかといえばフレイから漏れ出ている「炎層自然防御」によって生まれる微弱な電磁波によって機械の無線通信が途切れるのだ
「その漏れ出してるやつを抑えれば機械が壊れるなんてこと無くなるんだから抑えればいいのに」
「そこまでして使いたいとは思わないからね。そんなに離れていないなら僕の能力で情報を共有できるんだから」
「こっちからの情報は送れねぇんだよ、はよ紡の『精神遠隔感応』の連携をしろって言ってんだろ」
「いや、紡ちゃんと連携しようとするとシルフィがうるさいんだよね」
「あんの馬鹿野郎…」
これは今度会ったらまずは説教だな
「ああ、忘れてた。これフランスお土産の『マカロン』すごく美味しいお店を見つけてね。こっちは紡ちゃんのだから渡しておいてね」
フレイは俺に白色の高級感のある紙袋を2つ渡してきた
フレイは海外への遠征任務が多いのだが毎回このように『六星魔術師』のメンバーと紡に土産を買ってくるのだ
海外の任務が多いのには理由がありフレイ以外の『六星魔術師』のメンバーは全員まだ学生という事だ。なので必然的に成人済みのフレイに当てられるということなのだ
「毎度毎度お土産買ってくるなんてご苦労さまだな」
「そんなこと言って君だって遠くに行ったらお土産くらい買ってくるだろ?」
「お前と俺じゃあ頻度が違うだろ」
「はは、まぁそうだね。あ、そういえば『あの子』が君に会いたがってたよ」
「『あの子』?」
「君をまるで本物の兄のように慕っているあの子だよ」
「あ〜」
『あの子』というのはフレイが言っていた通り実の兄でもない俺を本物の兄のように慕っている子の事だ。
親の都合で1年ほど前に海外に行ったのだがフレイと同タイミングで帰国したそうだ
「そしてあの子からこんなものを預かってね」
そう言うとフレイは1枚のチラシを取り出した
そこには『猫カフェ』の文字と猫が沢山写っている写真が乗っている
「今日の午後2時にここで待ち合わせだそうだ」
「いかにもあの子が選びそうな店だな」
「じゃあそういうことだから。僕はこれから任務なのでお先に失礼するよ」
「帰国後そうそう任務とは大変だな」
「それだけ僕が必要とされていると言う事なのだからこれは喜ぶべきものだろうな」
「やっぱお前の考え方はすごいな」
持っていたコーヒーを飲み干した後事務所から出ていったフレイを見送ってから俺も待ち合わせの場所に行くために準備を始めた
「…ここだな」
誰が見てもカフェだと分かるようなオシャレな外装の建物のガラスからは多くの猫が見えていた
「いや〜やっぱり可愛いね〜猫は」
「…でなんで着いてきたんだお前は」
今俺の右ではシルフィと紡がガラス越しに猫を眺めていた
何故ここにシルフィと紡がいるのかと言うと、それは10分ほど前に遡る
俺が待ち合わせ場所になっている猫カフェに向かっていた途中で恐らく遊んでいたのであろうシルフィと紡に偶然遭遇した。話を聞くといまからどこかカフェでも行こうかという話だったらしい
そして俺がカフェに行くと言ったら着いてきたというわけだ
「それに久しぶりにあの子にも会いたいしね〜」
「別にいいと思うけどまた大声出してビビらすなよ」
「それはもう反省してるよ!」
「ねぇ、あの子って一体誰のことなの?」
俺とシルフィが談笑していると後ろから紡がそんな質問を投げかけてきた
「そういえば紡は1度も会ったことが無いんだな、まぁ会って自己紹介が終わった時には紡の驚いている顔が見れるということだけは伝えておくよ」
「なんだか怖くなってきた…」
俺とシルフィは怖がる紡を連れて店の中に入っていった
「いらっしゃいませ、お待ち合わせでしょうか?」
「お兄ちゃんこっちこっち」
店に入店して店員さんが質問してくるのに被さるように声が聞こえてきた
声の主の方を見るとこちらに向かって手を振っている1人の女の子を見つけた
「あ〜!久しぶり〜!!」
「お久しぶりです」
「見つけてそうそうだる絡みするなよお前は」
俺は女の子に絡みに行ったシルフィを小突いてから通された席に座った
「…ええっと、その子がさっき言ってた子?」
「ああ、この子は『六星魔術師』のNo.5の空間使い『空星魔術師』の『シエル』こと「諸星 結菜」だよ」